著者
平田 幸夫 阿部 智 村田 ゆかり 上條 和子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.295-301, 2006-07-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
12
被引用文献数
4

「健康日本21」の「歯の健康」に関する目標値の一つに,「学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤使用者の割合を90%以上にする」が掲げられ,学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤(以下,F歯磨剤と略す)の使用が推奨されている.そのため,学齢期(小学生・中学生)におけるF歯磨剤の使用状況の把握を目的に,質問票調査を実施した.全国から協力の得られた小学校25校の児童12,700名と中学校21校の生徒10,580名を対象に,本学会フッ化物応用委員会の調査票を改変した調査票を用い,小学生の場合には保護者に,中学生の場合には生徒自身に無記名で回答をお願いした.そして,回収できた調査票から有効な17,237名(小学校9,810名,中学校7,427名)分を集計に用いた.その結果,F歯磨剤使用者の割合は歯磨剤の未使用者も総数に含めると88.1%(小学生:88.2%,中学生:87.8%)で,性別では男子が86.5%,女子が89.7%であり,また,歯磨剤使用者のなかでは93.1%(小学生:95.0%,中学生:90.7%)であった.さらに,F歯磨剤を使用している小学生(保護者回答)では,その約49%の者がフッ化物配合であるということを認識して使用していることが示唆された.以上から,学齢期(小学生・中学生)におけるF歯磨剤の使用状況は「健康日本21」の「歯の健康」目標値に接近していることが示された.この要因の一つとして,企業によるF歯磨剤の市場占有率の拡大が考えられたが,今後も学齢期におけるF歯磨剤の使用状況について定期的なモニタリングが必要であると思われた.