著者
市橋 透 斎藤 邦男 川村 和章 山崎 朝子 平田 幸夫 荒川 浩久 飯塚 喜一
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.419-427, 1995-07-30 (Released:2017-10-06)
参考文献数
24
被引用文献数
5

市販ミネラルウォーター類(25銘柄)および缶入りお茶類(21銘柄)を購入し,これら製品中のフッ素濃度などについて情報を得る目的で分析を行い,以下の結果を得た。1.国産品ミネラルウォーター類のフッ素濃度は,17銘柄中13銘柄が0.1ppm未満で,最も高い値を示した製品は0.76ppmであった。輸入品では8銘柄中4銘柄が0.1ppm未満で,最も高い値を示した製品は0.70ppmであった。2.国産品ミネラルウォーター類のCa量,Mg量はそれぞれ1.14〜58.81mg/l,0.70〜7.93mg/lであった。輸入品のCa量,Mg量はそれぞれ8.13〜88.78mg/l. 1.07〜25.86mg/lであった。3.お茶類のフッ素濃度は,緑茶飲料では番茶が1.29ppmで最も高く,緑茶は0.53ppm〜0.90ppm,ウーロン茶では0.75ppm〜l.50ppm,紅茶では0.47ppm〜2.19ppm,杜仲茶や麦茶(正確な意味でのお茶類ではない)では0. 1ppm未満であった。以上の結果から,ミネラルウォーター類や緑茶飲料などに存在するフッ素やミネラル含量などは銘柄間で異なっていることが明らかとなった。そのため,これらの飲料中の成分の情報をさらに明らかにしていくことは,フッ素やミネラルの供給源として,これら製品を有効に活用することに結び付くものと考えられた。
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.513-523, 2008-10-30
被引用文献数
1

本研究の目的は,発展途上にあって多宗教,多民族国家の一つであるスリランカにおける社会経済的要因と糖分摂取,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤および定期的歯科受診の4つの歯科保健行動との関連を分析することである.対象の西プロビンスは同国の9省(プロビンス)のうち管内の市町村間で最も社会経済的多様性がある.スリランカ国のうち最も都市化した西省の21小学校の12歳児男女949名が無作為抽出され,無記名自記式質問票を担任の監督のもと各家庭に配布し回収した.性別,地域差,民族,父母学歴,職業,収入,児童数,因子分析による社会経済的6因子,歯科保健情報源,および定期的歯科受診の10分類の要因系と前述の4種類の歯科保健行動との関連を多重ロジスティック回帰分析により分析し4つの歯科保健行動の要因系の違いを比較した.その結果,オッズ比が2.0以上を示した要因はタミール族がショ糖含有食品を制限していることが最大オッズ比(exp(-B)=5.44)を示し,次いでオッズ比が大きいものは最多民族であるシンハラ族のフッ化物歯磨剤使用(2.34)および歯科保健情報源としてのテレビ(2.32),生活必需品充足度(因子分析第1因子)と食間でのショ糖添加(2.16),シンハラ族の定期的歯科受診(2.11)であった.高有意性(p<0.001)を示す関係は6つあり,女性の歯磨き励行,生活必需品充足度と食間でのショ糖添加,ショ糖添加紅茶飲用およびフッ化物歯磨剤使用,定期的歯科受診と食事時・食間のショ糖追加摂取および歯磨き励行との関係であった.また2つ以上の歯科保健行動にかかわる指標は,民族,父親の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の4つであった.以上,本研究により性差,民族,父の学歴,生活必需品充足度および定期的歯科受診の5つが歯科保健計画策定,キャンペーンや活動に際して注目すべき要因であることが示された.
著者
山本 龍生 阿部 智 大田 順子 安藤 雄一 相田 潤 平田 幸夫 新井 誠四郎
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.410-417, 2012-07-30 (Released:2018-04-06)
参考文献数
12

「健康日本21」の歯の健康に関する目標値「学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤(F歯磨剤)使用者の割合を90%以上にする」の達成状況を調査した.  2005年実施のF歯磨剤使用状況調査対象校のうち,協力の得られた18小学校(対象者:8,490 名)と17中学校(対象者:8,214名)に対して,調査票を2010年に送付し,小学生の保護者と中学生自身に無記名で回答を依頼した.回収できた調査票から回答が有効な12,963名(小学生:6,789名,中学生:6,174名)分を集計に用いた. F歯磨剤の使用者割合は89.1%(95%信頼区間:88.6〜89.7%)(小学生:90.0%,中学生:88.1%,男子:88.0%,女子:90.2%)であった.歯磨剤使用者に限るとF歯磨剤使用者割合は92.6%(小学生:94.9%,中学生:90.2%)であった.F歯磨剤使用者の中で,歯磨剤選択理由にフッ化物を挙げた小学生(保護者),中学生は,それぞれ47.9%,15.8%であった.歯磨剤を使わない者の約3〜4割は味が悪いことを使わない理由に挙げていた. 以上の結果から,学齢期におけるF歯磨剤の使用状況は,2005年(88.1%)からほとんど変化がなく,「健康日本21」の目標値達成には至らなかった.今後はF歯磨剤の市場占有率の向上,歯磨剤を使わない者への対応等,F歯磨剤使用者の割合を増加させる取り組みが求められる.
著者
平田 幸夫 阿部 智 村田 ゆかり 上條 和子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.295-301, 2006-07-30 (Released:2018-03-23)
参考文献数
12
被引用文献数
4

「健康日本21」の「歯の健康」に関する目標値の一つに,「学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤使用者の割合を90%以上にする」が掲げられ,学齢期におけるフッ化物配合歯磨剤(以下,F歯磨剤と略す)の使用が推奨されている.そのため,学齢期(小学生・中学生)におけるF歯磨剤の使用状況の把握を目的に,質問票調査を実施した.全国から協力の得られた小学校25校の児童12,700名と中学校21校の生徒10,580名を対象に,本学会フッ化物応用委員会の調査票を改変した調査票を用い,小学生の場合には保護者に,中学生の場合には生徒自身に無記名で回答をお願いした.そして,回収できた調査票から有効な17,237名(小学校9,810名,中学校7,427名)分を集計に用いた.その結果,F歯磨剤使用者の割合は歯磨剤の未使用者も総数に含めると88.1%(小学生:88.2%,中学生:87.8%)で,性別では男子が86.5%,女子が89.7%であり,また,歯磨剤使用者のなかでは93.1%(小学生:95.0%,中学生:90.7%)であった.さらに,F歯磨剤を使用している小学生(保護者回答)では,その約49%の者がフッ化物配合であるということを認識して使用していることが示唆された.以上から,学齢期(小学生・中学生)におけるF歯磨剤の使用状況は「健康日本21」の「歯の健康」目標値に接近していることが示された.この要因の一つとして,企業によるF歯磨剤の市場占有率の拡大が考えられたが,今後も学齢期におけるF歯磨剤の使用状況について定期的なモニタリングが必要であると思われた.
著者
瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ ギニゲ サミタ 宮原 勇治 平田 幸夫 深井 穫博
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.524-533, 2008-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
2

本研究の目的はスリランカの12歳児DMFTの多寡に有意な歯科保健行動要因と社会経済的要因を確定し,重要な少数の予測要因に絞ることである.データはスリランカ国の西プロビンスの949名の学童からなる.3名の歯科医師がWHOの基準によって歯科健康診査を行った.DMFTを0と1以上の2区分にした指標を多重ロジスティック回帰分析(MLRA)の従属変数として用いた.MLRAの独立変数は4種類の歯科保健行動(4-DHBs),すなわちショ糖含有の食品もしくは飲料,歯磨き習慣,フッ化物歯磨剤使用,定期的歯科医療機関受診等,10種類の社会経済的要因からなっている.その結果,変数減少法によるMLRAで最終モデルと各変数のオッズ比が得られた.DMFTの分布は指数関数的な減少傾向を示した.男女間および3民族間のDMFTの違いは有意でなかった.フッ化物歯磨剤がDMFTに関連した最も影響力の強い保健行動であり,一方,最も重要な社会経済的要因は民族の違いであった.4-DHBsの組合せの違いは伝統的な宗教的な慣習や嗜好に由来するように思われ,う蝕に対して時に相加的効果,時に相殺的効果を及ぼすと考えられる.対象プロビンスとスリランカ全体の経済的発展に伴って将来のう蝕が増加する可能性は関連データの不足のため否定できない.それゆえ,今回明らかになったう蝕の要因をモニタリングし,西プロビンスの非常に低いDMFTの原因を解明するための疫学的研究が必要である.
著者
平田 幸夫 瀧口 徹 カンダウダヘワ ギターニ 深井 穫博 山本 龍生
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.152-162, 2010-04-30

スリランカでは内戦が終わり,飛躍的な経済的発展が期待されている.しかし,この発展は歯科疾患を含む生活習慣病をもたらすかもしれない.それゆえ,ハザードの兆候をとらえ,避けるために歯科保健行動に関連した社会経済的研究が不可欠である.本研究の目的は学童の歯科保健行動の決定因子になりやすい社会経済状態および地域発展の両方を評価する単純な指標を見いだすことである.スリランカにおいて949名の12歳児学童が対象者として無作為に選ばれた.人種,父母の学歴,職業,月収が社会経済状態の指標として調査された.地域開発の指標として,主として耐久消費材からなる24項目の家庭関連項目の所持率も合わせて調査された.これらの指標と甘味食/飲料,歯磨き習慣,フッ化物含有歯磨剤,定期的歯科医療機関受診の4つの歯科保健行動指標との関係が調査された.社会経済状態と家庭関連項目は複雑に歯科保健行動に影響している.家庭関連項目は「贅沢品」,「生活必需品」,および「使用人」の3つの因子に集約された.これら3つの因子は社会経済状態と4つの歯科保健行動の指標に異なった関わりがあることが明らかになった.さらに,3つの因子の因子負荷量の2値反応の単純合計が各因子の代用指標に使うことができることが判明した.これら3つの代用指標は調査項目を限定しなければならない条件下で月収,学歴のような関連項目に対する回答拒否率が高い場合に有用と考えられる.