- 著者
-
上田 麻紀
立石 貴久
重藤 寛史
山崎 亮
大八木 保政
吉良 潤一
- 出版者
- 日本神経学会
- 雑誌
- 臨床神経学 (ISSN:0009918X)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.7, pp.461-466, 2010 (Released:2010-07-29)
- 参考文献数
- 16
- 被引用文献数
-
3
12
4
症例は31歳女性である.クローン病に対してインフリキシマブ投与開始11カ月後に無菌性髄膜炎を発症し一時軽快したが,その後に体幹失調や球麻痺が出現した.髄液検査では単核球優位の細胞数増多,ミエリン塩基性蛋白とIgG indexが上昇しており血清のEpstein-Barrウイルス(EBV)抗体は既感染パターンを示し,髄液・血液PCRにてEBV-DNAを検出した.MRIにて脳幹,大脳皮質下白質,頸髄に散在性にT2高信号病変をみとめ急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と診断した.各種免疫治療に抵抗性であったが,ステロイドパルス療法を反復し症状は改善した.抗TNF-α抗体製剤の副作用による脱髄が報告されているが,本症例は抗TNF-α抗体製剤投与中のEBV再活性化によって惹起されたADEMと考えられた.