著者
高瀬 敬一郎 重藤 寛史 鎌田 崇嗣
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

胎生18日目、胎児頭蓋に冷却プローブで傷害を加え局所皮質異形性モデルを作製した。皮質異形成モデルは両側前頭葉にそれぞれ2カ所 (group A)、両側前頭葉にそれぞれ1カ所 (group B) を作成した。出生後28日齢 (P28) に皮質と海馬に電極を設置し、P35からP77まで脳波・ビデオ同時期記録を行ったところ、group Aの68.8%から自発てんかん発作を生じ、皮質ないし海馬からてんかん発作波を認めた。組織学的には、group A に皮質異形成が認められ、さらに免疫染色ではNMDA受容体、グルタミン酸トランスポーターが上昇しており、皮質異形性でのてんかん性興奮の増大が示唆された。
著者
横山 淳 山口 浩雄 重藤 寛史 内海 健 村井 弘之 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-000834, (Released:2016-03-08)
参考文献数
10
被引用文献数
4 8

症例は24歳の男性.夜間飲酒した翌朝に痙攣を認め当院救急部に搬送された.到着後に痙攣重積を呈して人工呼吸器管理となった.脳幹反射の異常や病的反射,髄膜刺激徴候は認めなかった.頭部MRIの拡散強調画像で異常信号はなく,左後頭葉に陳旧性梗塞様の所見を認めた.入院直後より横紋筋融解症による高CK血症と急性腎不全を呈し持続血液透析濾過法を開始した.髄液中L/P比の著明な増加よりミトコンドリア病を疑い,末梢血にてミトコンドリアDNAのA3243G変異(ヘテロプラスミー20%)が判明しmitochondrial myopathy, encephalopathy, lactic acidosis, and stroke-like episodes(MELAS)と診断した.本症例はMELASとしては非典型的な経過を辿ったため貴重な症例と考えられた.
著者
重藤 寛史
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.107, no.6, pp.1108-1114, 2018-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
7

2016年,AMPA(α-amino-3-hydroxy-5-methylisoxazole-4-propionic acid)型グルタミン酸受容体拮抗作用をもつペランパネル(perampanel),ナトリウム・チャネルの緩徐な阻害作用をもつラコサミド(lacosamide)が本邦で発売開始となった.それ以前にも,本邦では2006年以降,ガバペンチン(gabapentin),トピラマート(topiramate),ラモトリギン(lamotrigine),レベチラセタム(levetiracetam)の4つの抗てんかん薬が発売となっている.ラモトリギン,レベチラセタムは催奇形性が少なく,ラモトリギンは部分発作,強直間代発作に対して,レベチラセタムは部分発作に対して単剤使用できるため,この2剤は第一選択薬として使用される頻度が高くなっている.ラコサミドはカルバマゼピンと同等の発作抑制作用を持ち,薬疹及び相互作用が少なく,単剤投与可能のため,今後,部分発作の第一選択薬として選択される機会が増えてくると思われる.ガバペンチン,トピラマート,ペランパネルは難治性てんかんの併用薬としての有効性が期待される.
著者
河野 祐治 重藤 寛史 白石 祥理 大八木 保政 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.265-267, 2010 (Released:2010-05-06)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

症例は30歳男性である.嚥下障害,複視,ふらつきにて発症し,吃逆も出現.軽度意識混濁,左側優位の眼瞼下垂,左注視方向性眼振,両側眼輪筋と口輪筋の軽度脱力,体幹失調をみとめた.嚥下反射は著明に亢進し,嚥下困難を呈していた.脳波は間欠性に全般性に高振幅徐波が出現し,脳幹脳炎と考えられた.しかし血算,血液生化学,髄液検査,頭部MRIに異常をみとめなかった.副腎皮質ステロイド剤は吃逆,複視,眼瞼下垂を改善したが,その他の症状に無効.免疫グロブリン療法も無効であった.その後,抗ボレリア抗体陽性が判明し,抗生剤投与にてすみやかに改善した.通常の免疫療法への反応に乏しい脳幹脳炎ではボレリア感染も考慮すべきである.
著者
上田 麻紀 立石 貴久 重藤 寛史 山崎 亮 大八木 保政 吉良 潤一
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.7, pp.461-466, 2010 (Released:2010-07-29)
参考文献数
16
被引用文献数
3 12 4

症例は31歳女性である.クローン病に対してインフリキシマブ投与開始11カ月後に無菌性髄膜炎を発症し一時軽快したが,その後に体幹失調や球麻痺が出現した.髄液検査では単核球優位の細胞数増多,ミエリン塩基性蛋白とIgG indexが上昇しており血清のEpstein-Barrウイルス(EBV)抗体は既感染パターンを示し,髄液・血液PCRにてEBV-DNAを検出した.MRIにて脳幹,大脳皮質下白質,頸髄に散在性にT2高信号病変をみとめ急性散在性脳脊髄炎(ADEM)と診断した.各種免疫治療に抵抗性であったが,ステロイドパルス療法を反復し症状は改善した.抗TNF-α抗体製剤の副作用による脱髄が報告されているが,本症例は抗TNF-α抗体製剤投与中のEBV再活性化によって惹起されたADEMと考えられた.
著者
重藤 寛史 谷脇 考恭 菊池 仁志
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

目的:難治性てんかんの焦点切除術以外の方法として,頸部を冷却することによりてんかん閾値を上げる方法をラットで試みた.方法:1.電位に依存して温度が低下するペルチェ素子を用い,電圧をコントロールして素子の表面温度を計測. 2.ペルチェ素子を用いず直接凍結エチレングリコールを頚部に接触循環させ冷却開始15分後の脳深部温度を計測(6匹).3.刺激・記録電極を設置し,非麻酔下覚醒状態で頚部冷却群と非冷却群でてんかん性放電(afterdischarges:ADs)誘発刺激閾値,ADs持続時間を比較(7匹).4.追加実験として冷却による皮質イオン分布に着目し,両側海馬周囲皮質外側硬膜下に5mm×5mmの銅板設置.非麻酔覚醒下で左海馬周囲皮質に2mA,3秒の陰性,続いて1mA,6秒の陽性直流電流を通電.陰極刺激時と非刺激時で海馬内電極によるADs誘発刺激閾値を計測(10試行).結果:1.冷却面と反対側の放熱面の温度上昇がペルチェ素子全体の温度を招き冷却効果を得られなかった. 2.非冷却側30.3±0.7℃,冷却側29.0±0.7℃で有意差を認めなかったものの冷却側で1℃の温度低下が観察できた.3.ADs誘発刺激閾値は冷却群2.0±0.7mA,非冷却群1.9±0.4mA. ADs持続時間は冷却群10.3±6.3秒、非冷却群9.2±3.7秒で有意差を認めなかった. 4.計10対記録.直流下3.7±2.7mA,非直流下2.3±1.2mAで,直流下で誘発閾値が有意に高かった.(P=0.0149)結論・考察:頚部冷却で15〜20度の脳温低下を得ることは困難であった.冷凍エチレングリコールで頚部冷却しても誘発4閾値に有意差は得られなかった.追加として行った直流電流を皮質に面分布させた電極に流すとてんかん性後放電の誘発閾値が上昇した.今後はこの方法が非侵襲的な難治性てんかんの治療方開発の礎になると期待している.