著者
上西 幸治
出版者
広島大学外国語教育研究センター
雑誌
広島外国語教育研究 (ISSN:13470892)
巻号頁・発行日
no.19, pp.65-81, 2016

本研究は,日本人大学生の英語学習に対する内的動機づけを調査したものである。その中には,学習者の情意的側面である英語学習への有用感や楽しさなどを含んでいる。内的動機づけは学習者が英語学習に興味を持ち,英語話者とコミュニケーションを取りたいということに大きくかかわるものである。Hamada (2011) は,学習者の学習意欲を高める効果的な方法としていくつか紹介している。その方法の一つに,教師の独自性というものが挙げられている。それは教師の独自の考えで学習者に題材を提示するもの,例えば海外体験談や世界ニュースのクイズなどである。筆者は教師の独自性に着目し,自ら作成したテキストを使用し,それを基に学習者の動機づけを高める試みを行った。とりわけ,英語を専攻としない学生が教師独自の教材をどの程度好ましく受け入れられるのか,また学生の動機づけと独自教材導入の関連性はあるのかなどに焦点を当ててみた。まず,英語非専攻の学生に関して,セメスター開始時と終了時に学習者の情意面に関わるアンケートデータを収集し,それらを比較・検討した。その結果,英語非専攻の学生は「英語力の向上」「授業内容の理解」「教材内容」の点で,事前と事後で統計的な有意差があった。とりわけ,最後の「教材内容」に関しては,海外旅行体験談に強く興味を持ち,もっと読みたいと思う意識の向上が見られた。また,教材内容と英語学習意識の関連性に関して検討してみると,「英語力向上に対する意識」「授業内容の理解」「将来へ向けた英語学習意識」「英語でのやり取り」に関して,「教材内容」との間にはかなりの相関があった。