著者
石田 昭夫 上野 友美
出版者
Japanese Society of Microbial Ecology · The Japanese Society of Soil Microbiology
雑誌
Microbes and Environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-72, 1996-12-31 (Released:2009-10-05)
参考文献数
10

非好塩性細菌である大腸菌(Escherichia coli ATCC-9637)を用いて,海水環境下での菌の増殖及び耐塩性誘導とその保持について,天然海水の代わりに組成成分の明確な人工海水を使用し検討した。2.5倍濃度の人工海水に酵母エキスを加えた培地では,この大腸菌株はほとんど増殖できないが,通常濃度の人工海水であれば十分に増殖できることが分かった。さらに,通常濃度の人工海水に酵母エキス(1%)を添加した培地で,30分間前振盪処理をすることによって,無処理では増殖の観察できない2.5倍濃度の人工海水中でも菌増殖が可能となる耐塩性が誘導された。このような耐塩性の誘導には,培地の人工海水濃度が通常の1/2~1付近が最も効果的であること,さらに酵母エキスを必要とすることが分かった。このことは,淡水性の大腸菌が河口周辺または海水環境下で酵母エキスのような有機物の存在があれば,耐塩性が誘導され,より高濃度の塩分環境に適応出来ることを示唆している。誘導された耐塩性は,有機物なしでも人工海水中に低温下で菌体が保存された場合は,少なくとも2週間はほぼ完全に保持されそれ以降次第に消失することが分かった。耐塩性の保持に有効な人工海水の成分を検討したところ,浸透圧を維持するNaClとMgイオン及びCaイオンの共存が必要であることが分かった。一方,純水中で菌体を保存した場合は,耐塩性は1週間でほぼ消失したが,平板培養法で観察した生菌数はわずかの減少しか見られないことから,耐塩性の消失と菌の死滅は別個の機構によると考えられる。
著者
内山 成人 木村 弘之 上野 友美 鈴木 淑水 只野 健太郎 石見 佳子
出版者
JAPAN BIFIDUS FOUNDATION
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.221-225, 2007-07-01
被引用文献数
3

我々がエクオール産生乳酸菌としてヒト腸内より単離したラクトコッカス20-92株は,<i>Lactococcus garvieae</i>(以下<i>Lc. garvieae</i>)と同定された.ラクトコッカス20-92株の安全性評価のために,<i>Lc. garvieae</i>の食歴およびヒト腸内常在性について検討した.イタリアの伝統的チーズおよび日本人の健常人女性より採取した糞便からの<i>Lc. garvieae</i>検出は,<i>Lc. garvieae</i>に特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR法あるいはリアルタイムPCR法により行った.イタリアおよび日本で入手したイタリア産の伝統的なチーズ7種類(トーマ・ピエモンテーゼ,ラスケーラ,ブラ・ドゥーロ,ブラ・テネーロ,ムラッツアーノ,カステルマーニョ,ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ),21検体に<i>Lc. garvieae</i>が検出された.また,ヒト糞便サンプル135検体中,49検体に<i>Lc. garvieae</i>が検出された(検出率36.3%).本研究結果より,<i>Lc. garvieae</i>が伝統的に食されてきたチーズ中に存在していることが確認できたことから,その食歴を明らかにすることができた.さらに,健常人の腸内に常在していることも明らかとなり,<i>Lc. garvieae</i>の安全性は高いものと考えられた.したがって,ヒト腸内由来のラクトコッカス20-92株も,同様に安全性の高い菌株であることが示唆され,今後,食品としての利用が可能と考えられた.<?FM: DEBUG [] ELEMEND 0><br><?FM: DEBUG [] ELEMEND 0>
著者
内山 成人 上野 友美 鈴木 淑水
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.217-220, 2007 (Released:2007-08-17)
参考文献数
16
被引用文献数
6

大豆イソフラボンのエストロゲン様作用/抗エストロゲン作用による健康ベネフィットが期待されているが,最近はその代謝物であるエクオールの生理作用が注目されている.エクオールは,腸内細菌により産生される活性代謝物であるが,その生成には個人差が存在し,エクオールを産生できない非産生者がいる.エクオール非産生者では,大豆イソフラボンを摂取しても十分な効果が期待できないと考えられる.そこで,我々は,食品として利用可能なエクオール産生菌を探索することを目的として,ビフィズス菌と乳酸菌(ラクトバチラス属)についてスクリーニングを行い,さらにヒト糞便中からの単離を検討した.ビフィズス菌と乳酸菌(ラクトバチラス属)の登録株213株のエクオール産生能を評価したが,いずれの菌株にもエクオール産生能は認めなかった.健常成人の糞便よりエクオール産生菌として新たに3菌株を単離し,1菌株に乳酸生成を認めたため16S rDNAシークエンス解析により同定した.その結果,Lactococcus garvieaeと同定され,菌株名を“ラクトコッカス20-92”とした.ラクトコッカス20-92によるエクオールの生成は,増殖後の菌数が定常状態になって発現するという特徴を示した.我々は,エクオール産生菌として食品に利用可能と考える乳酸菌(ラクトコッカス20-92株)を単離することに初めて成功した.これにより,今後,ラクトコッカス20-92株の食品への応用が期待できるものと考える.
著者
内山 成人 上野 友美 鈴木 淑水
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.217-220, 2007-07-01
参考文献数
16
被引用文献数
3

大豆イソフラボンのエストロゲン様作用/抗エストロゲン作用による健康ベネフィットが期待されているが,最近はその代謝物であるエクオールの生理作用が注目されている.エクオールは,腸内細菌により産生される活性代謝物であるが,その生成には個人差が存在し,エクオールを産生できない非産生者がいる.エクオール非産生者では,大豆イソフラボンを摂取しても十分な効果が期待できないと考えられる.そこで,我々は,食品として利用可能なエクオール産生菌を探索することを目的として,ビフィズス菌と乳酸菌(ラクトバチラス属)についてスクリーニングを行い,さらにヒト糞便中からの単離を検討した.ビフィズス菌と乳酸菌(ラクトバチラス属)の登録株213株のエクオール産生能を評価したが,いずれの菌株にもエクオール産生能は認めなかった.健常成人の糞便よりエクオール産生菌として新たに3菌株を単離し,1菌株に乳酸生成を認めたため16S rDNAシークエンス解析により同定した.その結果,<i>Lactococcus garvieae</i>と同定され,菌株名を"ラクトコッカス20-92"とした.ラクトコッカス20-92によるエクオールの生成は,増殖後の菌数が定常状態になって発現するという特徴を示した.我々は,エクオール産生菌として食品に利用可能と考える乳酸菌(ラクトコッカス20-92株)を単離することに初めて成功した.これにより,今後,ラクトコッカス20-92株の食品への応用が期待できるものと考える.<br>
著者
内山 成人 木村 弘之 上野 友美 鈴木 淑水 只野 健太郎 石見 佳子
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.221-225, 2007 (Released:2007-08-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1

我々がエクオール産生乳酸菌としてヒト腸内より単離したラクトコッカス20-92株は,Lactococcus garvieae(以下Lc. garvieae)と同定された.ラクトコッカス20-92株の安全性評価のために,Lc. garvieaeの食歴およびヒト腸内常在性について検討した.イタリアの伝統的チーズおよび日本人の健常人女性より採取した糞便からのLc. garvieae検出は,Lc. garvieaeに特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR法あるいはリアルタイムPCR法により行った.イタリアおよび日本で入手したイタリア産の伝統的なチーズ7種類(トーマ・ピエモンテーゼ,ラスケーラ,ブラ・ドゥーロ,ブラ・テネーロ,ムラッツアーノ,カステルマーニョ,ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ),21検体にLc. garvieaeが検出された.また,ヒト糞便サンプル135検体中,49検体にLc. garvieaeが検出された(検出率36.3%).本研究結果より,Lc. garvieaeが伝統的に食されてきたチーズ中に存在していることが確認できたことから,その食歴を明らかにすることができた.さらに,健常人の腸内に常在していることも明らかとなり,Lc. garvieaeの安全性は高いものと考えられた.したがって,ヒト腸内由来のラクトコッカス20-92株も,同様に安全性の高い菌株であることが示唆され,今後,食品としての利用が可能と考えられた.
著者
石田 昭夫 上野 友美
出版者
日本微生物生態学会
雑誌
Microbes and environments (ISSN:13426311)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.67-72, 1996-12-31
参考文献数
10

非好塩性細菌である大腸菌(<i>Escherichia coli</i> ATCC-9637)を用いて,海水環境下での菌の増殖及び耐塩性誘導とその保持について,天然海水の代わりに組成成分の明確な人工海水を使用し検討した。<br>2.5倍濃度の人工海水に酵母エキスを加えた培地では,この大腸菌株はほとんど増殖できないが,通常濃度の人工海水であれば十分に増殖できることが分かった。さらに,通常濃度の人工海水に酵母エキス(1%)を添加した培地で,30分間前振盪処理をすることによって,無処理では増殖の観察できない2.5倍濃度の人工海水中でも菌増殖が可能となる耐塩性が誘導された。このような耐塩性の誘導には,培地の人工海水濃度が通常の1/2~1付近が最も効果的であること,さらに酵母エキスを必要とすることが分かった。このことは,淡水性の大腸菌が河口周辺または海水環境下で酵母エキスのような有機物の存在があれば,耐塩性が誘導され,より高濃度の塩分環境に適応出来ることを示唆している。<br>誘導された耐塩性は,有機物なしでも人工海水中に低温下で菌体が保存された場合は,少なくとも2週間はほぼ完全に保持されそれ以降次第に消失することが分かった。耐塩性の保持に有効な人工海水の成分を検討したところ,浸透圧を維持するNaClとMgイオン及びCaイオンの共存が必要であることが分かった。一方,純水中で菌体を保存した場合は,耐塩性は1週間でほぼ消失したが,平板培養法で観察した生菌数はわずかの減少しか見られないことから,耐塩性の消失と菌の死滅は別個の機構によると考えられる。