著者
谷中 かおる 東泉 裕子 松本 輝樹 竹林 純 卓 興鋼 山田 和彦 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.234-241, 2010 (Released:2010-10-05)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

大豆中のイソフラボンは構造的にエストロゲンと類似しており,弱いエストロゲン様作用を発揮する.2006年に,内閣府食品安全員会は特定保健用食品から摂取する大豆イソフラボンの上限量を,通常の食事に上乗せして30mg/日と設定した.しかしながら,大豆イソフラボンや大豆たんぱく質が含まれている,いわゆる健康食品には イソフラボンの許容上限量が設定されなかった.そこで我々は,大豆が原料となっている加工食品,特定保健用食品を5品目含む健康食品10品目について,大豆たんぱく質と大豆イソフラボン含有量をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)と高速液体クロマトグラフ(HPLC)法で測定した。8品目における大豆たんぱく質量は表示の90-118%が確認され,ジュニア選手用のプロテインパウダー2品目においては表示の約半分量が定量された.大豆たんぱく質を含む特定保健用食品中には表示の90-122%の大豆イソフラボンが検出された。一方,表示のない大豆たんぱく質強化食品2品目には一回摂取目安量当たり30mgを超える大豆イソフラボンが検出された。このような食品をジュニア選手が過剰に摂取しないよう注意する必要があると考えられた。(オンラインのみ掲載)
著者
近藤 位旨 石見 佳子 東泉 裕子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.311-319, 2021-10-01 (Released:2021-11-24)
参考文献数
21
被引用文献数
2

【目的】食品衛生法の改正により,「特別の注意を必要とする成分等を含む食品による健康被害情報の収集」が定められた。また,健康食品が原因とされる重篤な健康被害として肝機能指標の悪化が最も多いことが報告されている。これらのことから,肝臓への影響に焦点を当てた健康食品の安全性研究が急務であると考えられる。そこで,本研究は,肝臓を介した健康被害が予測される健康食品成分の探索を目的とした。【方法】健康食品素材に関するデータベース,「機能性食品素材便覧」(書籍),「「健康食品」の安全性・有効性情報データベース」(web;2004年~2019年7月の情報を利用),「健康食品・サプリメント[成分]のすべて2017」(書籍)を用いて,肝機能指標および肝臓薬物代謝への影響が示された食品素材および成分を抽出した。【結果】1,313素材の健康食品素材情報が得られ,これらのうち211素材では肝臓への影響に関する情報が含まれていた。これら211素材の含有成分として,上位はタンニン(26件),フラボノイド(20件),サポニン(11件)等が認められた。211素材のうち,57素材がポリフェノール類を含む素材であった。【結論】ポリフェノール類などを含む健康食品素材において肝臓への影響が示唆された。肝臓への影響と健康食品成分との因果関係を推定するために,今後,細胞および動物試験における検討が必要と考えられた。
著者
石見 佳子
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.63-69, 2019 (Released:2019-11-01)
参考文献数
13

The current status and issues of Japanese dietary habits from the results of the National Health and Nutrition Survey Japan would be discussed. Total energy intake and protein intake of Japanese in the past 45 years showed a decreasing trend. On the other hand, fat intake increased, but carbohydrate intake decreased. According to the physical condition survey of the 2017 National Health and Nutrition Survey, the proportion of obese individual (BMI≧25 kg/m2) was higher for men in their 20s to 60s compared with the goal for Healthy Japan 21 (secondary), and the proportion for thinness (BMI<18.5 kg/m2) was higher for women in their 20s. In older people, physical working hours, protein intake and oral function were associated with trend in malnutrition. Salt intake has been decreasing during a decade, however further improvement should be needed. At present, prevention of lifestyle-related diseases in men in their 20s to 60s, prevention of young women’s thinness and elderly people’s frailty might be issues. In order to resolve these issues, utilization of a Japanese Food Guide, Smart-meal system and nutrient labeling on foods, maintenance of appropriate body weight, Shokuiku throughout individual’s life, utilization of Exercise and Active Guides, maintenance for oral health, etc. might be effective. These strategies might lead to the extension of the healthy life expectancy.
著者
山田 和彦 田中 弘之 石見 佳子 梅垣 敬三 井出 留美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.91-99, 2017 (Released:2017-06-23)
参考文献数
20
被引用文献数
2

食品の機能性に関する表示は, 消費者が食品を選択する際の一つの有効な手段となる。保健機能食品は, 食品表示法に基づく食品表示基準に規定されており, 特定保健用食品, 機能性表示食品および栄養機能食品からなる。特定保健用食品は, 健康増進法においても規定されており, 特定の保健の用途に適する旨を表示するもので, 販売に当たり国の許可が必要である。機能性表示食品は, 2015年に新しく創設された制度であり, 事業者の責任において体の構造と機能に関する機能性表示をすることができる。販売前に機能性と安全性に関する科学的根拠資料を国に届出る。栄養機能食品は, 規格基準型の食品で, 国の許可を受けることなく栄養素の機能表示をすることができる。2015年の特定保健用食品の市場規模は約6,400億円, 栄養機能食品といわゆる健康食品を合わせて1兆5千億円と試算されている。これらの食品の機能性に関する表示は消費者に正しく理解される必要があり, 普及・啓発が重要である。これにより, 人びとの健康の維持・増進が期待される。
著者
内山 成人 木村 弘之 上野 友美 鈴木 淑水 只野 健太郎 石見 佳子
出版者
JAPAN BIFIDUS FOUNDATION
雑誌
腸内細菌学雑誌 = Journal of intestinal microbiology (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.221-225, 2007-07-01
被引用文献数
3

我々がエクオール産生乳酸菌としてヒト腸内より単離したラクトコッカス20-92株は,<i>Lactococcus garvieae</i>(以下<i>Lc. garvieae</i>)と同定された.ラクトコッカス20-92株の安全性評価のために,<i>Lc. garvieae</i>の食歴およびヒト腸内常在性について検討した.イタリアの伝統的チーズおよび日本人の健常人女性より採取した糞便からの<i>Lc. garvieae</i>検出は,<i>Lc. garvieae</i>に特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR法あるいはリアルタイムPCR法により行った.イタリアおよび日本で入手したイタリア産の伝統的なチーズ7種類(トーマ・ピエモンテーゼ,ラスケーラ,ブラ・ドゥーロ,ブラ・テネーロ,ムラッツアーノ,カステルマーニョ,ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ),21検体に<i>Lc. garvieae</i>が検出された.また,ヒト糞便サンプル135検体中,49検体に<i>Lc. garvieae</i>が検出された(検出率36.3%).本研究結果より,<i>Lc. garvieae</i>が伝統的に食されてきたチーズ中に存在していることが確認できたことから,その食歴を明らかにすることができた.さらに,健常人の腸内に常在していることも明らかとなり,<i>Lc. garvieae</i>の安全性は高いものと考えられた.したがって,ヒト腸内由来のラクトコッカス20-92株も,同様に安全性の高い菌株であることが示唆され,今後,食品としての利用が可能と考えられた.<?FM: DEBUG [] ELEMEND 0><br><?FM: DEBUG [] ELEMEND 0>
著者
横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 竹林 純 瀧本 秀美 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.162-173, 2021-06-01 (Released:2021-07-09)
参考文献数
48
被引用文献数
1

【目的】食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品を区分またはランク付けする「栄養プロファイルモデル(以下,NPモデル)」が諸外国の栄養政策で活用されている。本研究では,諸外国のNPモデルを調査し,日本版NPモデル策定のための基礎資料の作成および課題整理を行うことを目的とした。【方法】第41回コーデックス委員会栄養・特殊用途食品部会の議題「NPモデル策定のための一般ガイドライン」で共有された既存のNPモデル(97件)の一覧表を用い,対象モデルを抽出した。【結果】採択条件に該当しないモデル(計75件)を除き,調査対象のモデル22件の開発国の内訳は,中南米(1件),北米(5件),欧州(5件),中東(1件),大洋州(2件),アジア(6件),国際機関(WHOの地域事務所)(2件)であった。食品の包装前面の表示(11件),ヘルスクレーム付与に対する制限(5件)を目的としたモデルは一般集団が対象であり,広告規制を目的としたモデル(6件)は子供が対象であった。モデルタイプは閾値モデルが16件,スコアリングモデルが5件,混合モデルが1件で,多くのモデルで摂取を制限すべき栄養素等として,熱量,脂質,飽和脂肪酸,トランス脂肪酸,糖類,ナトリウムを設定していた。【結論】日本版NPモデルの策定にむけた検討課題として,対象栄養素,食品のカテゴリー分類,モデルタイプの設定等が示された。
著者
竹林 純 高坂 典子 鈴木 一平 中阪 聡亮 平林 尚之 石見 佳子 梅垣 敬三 千葉 剛 渡辺 卓穂
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.63-71, 2020-04-25 (Released:2020-04-27)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本研究では,2017および2018年に実施した食品の栄養成分検査の技能試験について報告する.2017および2018年調査では,それぞれ65および73機関の参加が得られ,参加機関の70%以上は栄養成分表示に関する収去試験を担当しうる公的機関であった.調査試料の食品形態は畜肉ソーセージであり,調査項目はタンパク質,脂質,灰分,水分,炭水化物,熱量,ナトリウム,食塩相当量,カルシウム(2018年のみ),鉄(2018年のみ)であった.義務表示項目である熱量,タンパク質,脂質,炭水化物,食塩相当量の1つ以上について報告結果が不適正と考えられた機関は,2017年調査では全機関の11%および公的機関の9%であり,2018年調査では全機関の15%および公的機関の13%であった.機関間の報告値のばらつきを示す指標であるRSDrは,タンパク質=2%,脂質=3%,灰分=2%,水分=0.5%,炭水化物=9%,熱量=1%,ナトリウム(食塩相当量)=4%,カルシウム=7%,鉄=7%程度であった.特に,炭水化物のRSDrが大きく,炭水化物の表示値が数g/100 g以下の食品の収去試験においては,無視できない機関間差が生じる可能性を考慮する必要がある.
著者
石見 佳子 笠岡(坪山) 宜代
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.39-46, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【目的】栄養表示は食品を選択する上で重要な情報であり,食による健康の保持・増進の拠り所となる情報である。栄養参照量は栄養表示をする際の基準となる値であるが,その策定方法は国によって異なる。本報告では,食のグローバル化を見据え,コーデックス委員会及び各国の栄養参照量を調査し,日本の値と比較することを目的とした。【方法】コーデックス,米国,カナダ,EU,オーストラリア・ニュージーランド,中国,韓国,日本の栄養参照量またはこれに相当する基準値について,各国の栄養表示を管轄する政府機関のウエブサイト及び担当官への聞き取り調査により調査した。【結果】コーデックス及び各国とも,ビタミン・ミネラルの栄養参照量については,食事摂取基準の推奨量に当たる値を基準に策定していた。ナトリウムについてはWHOの推奨値(2,000 mg)を採用している国が多かったが,カリウムについては必要量または非感染性疾患のリスク低減を目的とした量の両方が策定されていた。日本においては,両者とも生活習慣病の予防を目的とした目標量を採用している。各国の栄養参照量は,基本的にはコーデックス委員会の策定基準を採用しているが,細部においては独自の算定方法を採用していた。【結論】表示を目的とした栄養参照量の設定には,国際的な考え方との整合性のみならず,各国の栄養素摂取状況などの公衆栄養上の特徴を考慮することも重要であると考えられた。
著者
石見 佳子
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.103, no.12, pp.927-933, 2008-12-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

大豆に含まれるイソフラボン (ダイゼイン, ゲニステイン, グリシテイン) はエストロゲンに類似した構造をもつため, イソフラボンの摂取量が多いほど骨粗懸症, 更年期障害や乳がんに対する予防効果があると言われている。更に, ダイゼインの代謝産物であるエクオールは乳がん, 前立腺がんの発症率を抑えるほか, 骨量減少抑制効果についての報告もある。最近, イソフラボンはサプリメントとして市販されているが, 必ずしも大量摂取すればよいと言うわけではない。厚生労働省はサプリメントによるイソフラボンの過剰な摂取に対して注意を呼びかけている。著者らの研究によると, 閉経後の女性に対しては大豆イソフラボン投与と適度な運動の併用が大腿骨骨密度の維持に効果があった。またエクオールを産生する腸内乳酸菌にはラクトコッカスのほか数種類が関与していることが判明したが, 今後はこれらを含む乳製品の開発が期待される。本稿では著者らのデータを含め, 大豆イソフラボンに関する最新情報を解説していただいた。
著者
石見 佳子 竹林 純 横山 友里 吉﨑 貴大 多田 由紀 岡田 恵美子 瀧本 秀美
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.80, no.2, pp.79-95, 2022-04-01 (Released:2022-05-24)
参考文献数
49

【目的】人びとが健康な食生活を営むためには,適切な食品の選択が求められる。諸外国では消費者が食品の栄養価を総合的に判断できるよう,特定の栄養素等の含有量で食品をランク付けする「栄養プロファイルモデル」が活用されているが,我が国においては策定されていない。そこで本研究では,加工食品について,日本版栄養プロファイルモデル試案を作成することを目的とした。【方法】WHO Technical meeting 2010報告書,WHO健康な食生活のための食品の包装前面表示ガイドライン及び諸外国のモデルを参考とし,国民健康・栄養調査,日本人の食事摂取基準(2020年版),日本食品標準成分表2015年版(七訂),日経POSデータ等を根拠資料として用いて,加工食品の日本版栄養プロファイルモデル試案を作成し,妥当性を検討した。【結果】①日本の公衆栄養の観点から,対象を18歳以上,対象項目を脂質,飽和脂肪酸,ナトリウム(食塩相当量)及び熱量とした。②日本版栄養プロファイルモデルとしてカテゴリー特異的モデルを選択した。対象食品を調理済み加工食品を含む加工食品とし,一般加工食品は国民健康・栄養調査食品群別表の中分類を基に15カテゴリーに分類した。③対象項目の閾値基準を設定し,各食品カテゴリーについて閾値を設定した。【結論】日本の公衆栄養の状況に応じた日本版栄養プロファイルモデル試案を作成した。
著者
内山 成人 木村 弘之 上野 友美 鈴木 淑水 只野 健太郎 石見 佳子
出版者
公益財団法人 腸内細菌学会
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.221-225, 2007 (Released:2007-08-17)
参考文献数
13
被引用文献数
1

我々がエクオール産生乳酸菌としてヒト腸内より単離したラクトコッカス20-92株は,Lactococcus garvieae(以下Lc. garvieae)と同定された.ラクトコッカス20-92株の安全性評価のために,Lc. garvieaeの食歴およびヒト腸内常在性について検討した.イタリアの伝統的チーズおよび日本人の健常人女性より採取した糞便からのLc. garvieae検出は,Lc. garvieaeに特異的なPCRプライマーを用いたRT-PCR法あるいはリアルタイムPCR法により行った.イタリアおよび日本で入手したイタリア産の伝統的なチーズ7種類(トーマ・ピエモンテーゼ,ラスケーラ,ブラ・ドゥーロ,ブラ・テネーロ,ムラッツアーノ,カステルマーニョ,ロビオラ・ディ・ロッカヴェラーノ),21検体にLc. garvieaeが検出された.また,ヒト糞便サンプル135検体中,49検体にLc. garvieaeが検出された(検出率36.3%).本研究結果より,Lc. garvieaeが伝統的に食されてきたチーズ中に存在していることが確認できたことから,その食歴を明らかにすることができた.さらに,健常人の腸内に常在していることも明らかとなり,Lc. garvieaeの安全性は高いものと考えられた.したがって,ヒト腸内由来のラクトコッカス20-92株も,同様に安全性の高い菌株であることが示唆され,今後,食品としての利用が可能と考えられた.
著者
山田 和彦 田中 弘之 石見 佳子 梅垣 敬三 井出 留美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.91-99, 2017
被引用文献数
2

<p>食品の機能性に関する表示は, 消費者が食品を選択する際の一つの有効な手段となる。保健機能食品は, 食品表示法に基づく食品表示基準に規定されており, 特定保健用食品, 機能性表示食品および栄養機能食品からなる。特定保健用食品は, 健康増進法においても規定されており, 特定の保健の用途に適する旨を表示するもので, 販売に当たり国の許可が必要である。機能性表示食品は, 2015年に新しく創設された制度であり, 事業者の責任において体の構造と機能に関する機能性表示をすることができる。販売前に機能性と安全性に関する科学的根拠資料を国に届出る。栄養機能食品は, 規格基準型の食品で, 国の許可を受けることなく栄養素の機能表示をすることができる。2015年の特定保健用食品の市場規模は約6,400億円, 栄養機能食品といわゆる健康食品を合わせて1兆5千億円と試算されている。これらの食品の機能性に関する表示は消費者に正しく理解される必要があり, 普及・啓発が重要である。これにより, 人びとの健康の維持・増進が期待される。</p>
著者
谷中 かおる 東泉 裕子 松本 輝樹 竹林 純 卓 興鋼 山田 和彦 石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
榮養學雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.234-241, 2010-06-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

大豆中のイソフラボンは構造的にエストロゲンと類似しており,弱いエストロゲン様作用を発揮する.2006年に,内閣府食品安全員会は特定保健用食品から摂取する大豆イソフラボンの上限量を,通常の食事に上乗せして30mg/日と設定した.しかしながら,大豆イソフラボンや大豆たんぱく質が含まれている,いわゆる健康食品には イソフラボンの許容上限量が設定されなかった.そこで我々は,大豆が原料となっている加工食品,特定保健用食品を5品目含む健康食品10品目について,大豆たんぱく質と大豆イソフラボン含有量をそれぞれ酵素免疫測定法(ELISA)と高速液体クロマトグラフ(HPLC)法で測定した。8品目における大豆たんぱく質量は表示の90-118%が確認され,ジュニア選手用のプロテインパウダー2品目においては表示の約半分量が定量された.大豆たんぱく質を含む特定保健用食品中には表示の90-122%の大豆イソフラボンが検出された。一方,表示のない大豆たんぱく質強化食品2品目には一回摂取目安量当たり30mgを超える大豆イソフラボンが検出された。このような食品をジュニア選手が過剰に摂取しないよう注意する必要があると考えられた。<br>(オンラインのみ掲載)
著者
石見 佳子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.71-77, 2019 (Released:2019-04-23)
参考文献数
28

我が国においては, 健康寿命の延伸を目的として, 種々の健康施策が遂行されている。中でも骨の健康を維持するための食事と運動は, 健康寿命の延伸のための重要な因子である。著者らは, これまでに, 骨の健康維持を目的とした生活習慣について科学的根拠を蓄積してきた。まず, 骨芽細胞並びに破骨細胞形成系を用いて食品成分のスクリーニングを行い, ビタミンA及びビタミンK誘導体, 大豆イソフラボン等が有用である可能性を示した。次に, 弱いエストロゲン様作用を示す大豆イソフラボンに着目し, 骨粗鬆症モデル動物を用いて安全性及び骨代謝における有効性評価を行うとともに, 走運動との併用効果を示した。また, 健常閉経後女性を対象に同様の介入試験を実施し, 両者の併用効果を明らかにした。他方, 大豆イソフラボンの腸内代謝産物であるエクオールの産生を高める食品成分を探索し, 難消化性糖質の有用性を明らかにして骨の健康維持に役立つ食事メニューを提案した。これらの研究成果が, 高齢者を対象とした健康施策の一助となれば幸いである。
著者
石見 佳子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.145-150, 2016 (Released:2016-08-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1 3

日本人の食事摂取基準は, 国民の健康の保持・増進を図る上で摂取することが望ましいエネルギー及び栄養素の量の基準を厚生労働大臣が定めるもので, 国民の健康の維持に欠かせない基準である。一方, 食品の栄養表示は, 消費者が食品を選択する際の重要な情報であるとともに, 人びとの健康に密接に関連している。そのため, 栄養表示に係る基準は, 国の健康・栄養施策と整合性を図るとともに, 食品の国際的な規格を策定するコーデックス委員会を通じて, WHOの食事と運動と健康に関する世界戦略等の世界的な健康政策との整合性も図られている。栄養表示の基準となるのが「栄養素等表示基準値」であり, 平成27年4月, 食品表示法に基づく食品表示基準の施行に伴い, 日本人の食事摂取基準 (2015年版) の基準値を基に改定された。本稿では, 食事摂取基準と栄養素等表示基準値との関係について解説する。
著者
石見 佳子
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.74, no.5, pp.117-127, 2016 (Released:2016-11-16)
参考文献数
22

【目的】健康食品は人びとの日常生活で利用されてきているが,その有効性と安全性について科学的根拠に乏しいものも市場に出回っている。筆者らは,食の安全確保を目的として,特に骨及び関節に関連する健康食品素材について,有効性評価及び健康影響評価を行った。【方法】健康食品素材を骨粗鬆症または関節症モデル動物に混餌により摂取させ,28日間反復投与試験を実施した。一部の素材については,国立健康・栄養研究所倫理委員会の承認を得て,閉経後女性を対象に無作為割付比較試験を実施した。【結果】大豆イソフラボンについては,動物試験において骨に対する作用と生殖器官に対する作用で用量依存性が異なること,ヒトを対象とした介入試験において,骨に対する作用の一部はその代謝産物であるエクオールの産生に依存することが明らかになった。一方,ビタミンKについては,健常な閉経後女性において,骨の健康維持の観点からは不足している可能性があること,さらにメナキノン—4 の摂取により,骨代謝が改善される可能性が示唆された。コラーゲンペプチド,メチルスルホニルメタン,スピルリナ,レスベラトロールについては,過剰摂取は避けるべきであることが示された。【結論】今般,新たな機能性表示食品制度が創設されたことを踏まえると,健康食品の有効性評価及び健康影響評価は,レギュラトリーサイエンスの領域の中で引き続き重要な課題であると考えられた。これらの研究は,消費者の食の安全確保につながるものである。