著者
上野 奨太 髙屋 成利 増田 知子 吉尾 雅春
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
pp.12246, (Released:2022-10-05)
参考文献数
42

【目的】脳卒中患者の歩行練習において,長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する入院時因子を探索的に調べること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)で長下肢装具を使用して歩行練習を行った片側大脳半球損傷の脳卒中患者200名。長下肢装具を使用した練習日数を目的変数,入院時の各種評価項目を説明変数とする重回帰分析を行って関連する因子を探索した。【結果】下肢Brunnstrom Recovery Stage, Scale for Contraversive Pushing合計点,Functional Independence Measure運動項目および年齢が関連因子として検出された。【結論】回復期病棟入院時の下肢運動麻痺の回復ステージが低く,Pushingの程度が強く,機能的自立度の運動項目が低く,年齢が高いほど,長下肢装具を使用する練習期間が長期に及びやすいことが分かった。
著者
上野 奨太 中島 駿平 岡田 洋平 中村 潤二 喜多 頼広 庄本 康治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100660, 2013 (Released:2013-06-20)
被引用文献数
1

【はじめに、目的】 直流前庭電気刺激(Galvanic vestibular stimulation: GVS)は耳後部から経皮的に前庭系を直流電気刺激する神経生理学的手法である。GVSの電極配置を両側乳様突起とし,直流電流を通電することにより陽極側への身体傾斜が誘発される。近年,GVSは治療手段としても利用され,両側乳様突起間でのGVSにより,パーキンソン病の体幹側屈や脳卒中後の半側空間無視の軽減効果についての報告も散見される。またパーキンソン病の前屈姿勢異常に対しGVSを実施し,立位時の体幹屈曲角度が改善したとする報告では,両側乳様突起と隆椎棘突起両外側間を刺激している。健常人を対象に両側乳様突起間へのGVSが立位姿勢制御に与える影響についての報告は数多く存在するが,両側乳様突起と隆椎両外側間へのGVSが立位姿勢制御に与える影響についてはほとんど検討されていない。本研究の目的は両側乳様突起と隆椎両外側間でのGVSを健常人に対して実施し,GVSの極性と刺激強度が前後方向の立位姿勢制御に与える影響について検討することとした。【方法】 対象は内耳疾患,てんかんの既往歴および体内に金属を有する者を除外した健常若年者10名(男性6名,女性4名,22.1±0.3歳)とした。対象者の肢位は重心動揺計(G-6100,アニマ)上における閉眼閉脚立位とした。電極を両側乳様突起と隆椎両外側に左右二対貼付し,重心動揺計と同期した電気刺激装置(SEN-8203,日本光電)により7秒間の矩形波を用いて電気刺激を行った。刺激条件は2種の極性(乳様突起陽極,乳様突起陰極)と3種の刺激強度(1.0,1.5,2.0mA)を組み合わせた計6条件とし,各条件は被験者ごとにランダムな順序で別日に実施した。測定項目は7秒間のGVS時の足圧中心(center of pressure:COP)の偏位方向および最大偏位距離とした。各条件において6試行実施し,COPの最大偏位距離は6試行の平均値を代表値とした。統計解析は同一極性による刺激強度間でのCOPの最大偏位距離の差をFriedman検定の後,Wilcoxon符号付順位和検定を用いて検討した。 Friedman検定の有意水準は5%,Wilcoxon符号付順位和検定の有意水準は1.6%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は畿央大学研究倫理委員会の許可を得た上で実施した。全対象者に実施前に本研究の趣旨と目的を十分説明し,自署による同意を得た。なお,本研究はヘルシンキ宣言に基づき,被験者の保護には十分留意して実施した。【結果】 乳様突起陽極では全ての刺激強度において10名全員のCOPは刺激中に後方へ偏位し,乳様突起陰極では1.0mAで10名中9名,1.5mA,2.0mAで10名中8名のCOPが前方へ偏位した。乳様突起陽極条件では,刺激強度間でCOPの最大偏位距離に有意差を認め,2.0mAは1.0mAと比較してCOPの最大偏位距離が有意に大きかった(P=0.0069)。乳様突起陰極条件では刺激強度間のCOP最大偏位距離に有意差は認められなかった。また,めまいや嘔気,強い痛み等の副作用を訴える者はいなかった。【考察】 GVSの極性を乳様突起陽極,隆椎外側陰極にすることによりCOPの後方偏位を,乳様突起陰極,隆椎外側陽極にすることによりCOPの前方偏位を誘発可能であり,乳様突起陽極のGVS時のみ刺激強度依存的にCOPの後方偏位が増加した。両側乳様突起間のみでのGVSは刺激強度に依存して陽極方向へ身体傾斜も強まると報告されており,これはGVSが耳石器を刺激して左右方向への加速度感覚が発生したためと考えられている。今回の乳様突起と隆椎外側間のGVSにより耳石器への刺激方向が変化し,COPの偏位は前後方向への加速度感覚が生じたことによると考察する。さらに極性変更により相反する方向への加速度感覚が発生し,刺激後のCOPの偏位が逆方向になったと考えられる。GVSによる刺激強度依存的なCOPの後方偏位の増加は,刺激強度増加に伴い耳石器における活動電位が強くなったためと考察する。GVS後のCOPの前方偏位に刺激強度依存性がなかった原因は,前足部のメカノレセプターの分布密度が踵部より高く,立位前方傾斜時には前庭感覚よりも体性感覚依存度が高い可能性がある。今後乳様突起,隆椎両外側へのGVSを臨床適用していくには,刺激時の筋活動,肢位による反応の差異,長時間介入による持続効果について検討する必要がある。【理学療法学研究としての意義】 両側乳様突起と隆椎両外側へのGVSでは,極性を変化させることにより前方あるいは後方への姿勢誘導が可能であり,後方誘導には刺激強度依存性があることが明らかになった。パーキンソン病の前屈姿勢異常などに対してGVSを治療手段として利用する際の刺激方法を考慮する一助となると考えられる。
著者
上野 奨太 髙屋 成利 増田 知子 吉尾 雅春
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.361-366, 2022-10-20 (Released:2022-10-20)
参考文献数
42

【目的】脳卒中患者の歩行練習において,長下肢装具から短下肢装具への移行に要する日数に関連する入院時因子を探索的に調べること。【方法】対象は回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)で長下肢装具を使用して歩行練習を行った片側大脳半球損傷の脳卒中患者200名。長下肢装具を使用した練習日数を目的変数,入院時の各種評価項目を説明変数とする重回帰分析を行って関連する因子を探索した。【結果】下肢Brunnstrom Recovery Stage, Scale for Contraversive Pushing合計点,Functional Independence Measure運動項目および年齢が関連因子として検出された。【結論】回復期病棟入院時の下肢運動麻痺の回復ステージが低く,Pushingの程度が強く,機能的自立度の運動項目が低く,年齢が高いほど,長下肢装具を使用する練習期間が長期に及びやすいことが分かった。