著者
上野 浩晶 中里 雅光
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.753-759, 2014-03-10 (Released:2015-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

日本を含めた世界中で肥満者が増加しており,その結果として2型糖尿病,脂質異常症,高血圧,脂肪肝,脳卒中,虚血性心疾患などを合併した肥満症患者が増加している.肥満症患者では3%の体重減少でも糖脂質代謝や血圧などの改善がみられるため減量が重要であるが,現実的には食事運動療法のみでは減量できない場合が多く,抗肥満薬の必要性が出てくる.現在,日本ではマジンドールのみが抗肥満薬として認可されているが,リパーゼ阻害薬であるセチリスタットが最近製造承認を受けた.欧米ではリパーゼ阻害薬のオルリスタット,中枢性食欲抑制薬であるロルカセリンやtopiramateとphentermineの合剤などが使用されおり一定の減量効果を認めている.他にも多数の抗肥満薬が開発または治験中であるが,本稿では世界での抗肥満薬の現状と開発状況について概説する.
著者
上野 浩晶 中里 雅光
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.2, pp.73-75, 2006 (Released:2006-04-01)
参考文献数
9

近年,肥満者の増加と,肥満を基礎にして発症する糖尿病,脂質代謝異常,高血圧症などの肥満症やメタボリックシンドロームを呈する患者数が増加している.しかし,その根底にある肥満の治療法は不十分なままである.最近,NPYやそのファミリー(PP,PYY)を含めてさまざまな摂食調節物質の同定や機能解析が進んでいる.NPYは中枢神経系に存在しており,強力な摂食亢進作用を有している.NPYニューロンを活性化する入力系としてグレリンやオレキシン,抑制する入力系としてレプチンやインスリンがある.入力系の中でも胃から分泌される摂食亢進ペプチドであるグレリンは迷走神経や神経線維を介してNPYニューロンにシグナルを伝達してその作用を発揮している.PPは主に膵臓に発現しており,摂食抑制作用を有する.PYYは十二指腸から結腸までの腸管で産生され,摂食抑制作用を有する.PYYは迷走神経を介して中枢の摂食抑制系ペプチドであるPOMCニューロンを活性化してその作用を発揮している.これら摂食調節ペプチドの機能解析が進んで,ペプチドそのものや受容体のアゴニスト,アンタゴニストといった新規の抗肥満薬の開発や実用化が期待される.