著者
上野 雅巳 福田 充宏 山根 一和 熊田 恵介 小濱 啓次
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.384-388, 2001-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32
被引用文献数
4 6

頭蓋内解離性動脈瘤の報告は増加しているが, 前大脳動脈領域は稀である.今回クモ膜下出血で発症した右前大脳動脈水平部の解離性動脈瘤を経験したので報告する.術中所見ではA1部は紡錘状に拡張して暗赤色を呈しており, 同部をtrappingした.報告されている前大脳動脈解離性動脈瘤32例のうち22例は男性であった.incidentalにみつかった1例を除くとA1部に発生した11例は全例クモ膜下出血にて発症し, 末梢部に発生した20例中16例は脳梗塞で発症した.女性10例中8例はA1部に発生した.本稿では前大脳動脈解離性動脈瘤の特徴について考察する.
著者
熊谷 美香 北野 尚美 小松 枝里香 道場 浩幸 上野 雅巳
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.116-124, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
19

目的 救急搬送所要時間に悪影響を及ぼす要因のうち,介入可能な要因の1つに,搬送先医療機関の選定に要する時間がある。そこで,本研究では,病院選定が困難だった救急搬送症例について,覚知時刻と覚知場所,救急隊判断程度の特徴を明らかとした。方法 研究期間は2014年1月1日から12月31日の1年間で,和歌山県内で救急車搬送された,小児疾患を除く41,574件を研究対象とした。本研究では,照会回数に欠損値があった129件を除いた41,445件を解析した。照会回数4回以上を病院選定困難として,覚知時刻と覚知場所,救急隊判断程度について,調整オッズ比(OR)と95%信頼区間(CI)を二項ロジスティック回帰分析によって計算した。全体と主要診断群分類(Major Diagnostic Category,MDC)で層別化して,外傷・熱傷・中毒,神経系疾患,消化器系疾患・肝臓・胆道・膵臓疾患,呼吸器系疾患,循環器系疾患について解析結果を示した。結果 照会回数の分布は1~12回で,全体の79.6%は1回であり,4回以上は3.5%であった。全体の解析では,照会回数4回以上について,覚知時刻は,平日日勤を基準とした場合に,その他いずれの時間帯も有意に照会回数4回以上で,土日祝深夜の調整OR(95%CI)は4.0(3.2-5.0)と最も高かった。また,中等症以下を基準とした場合に,重症以上の調整OR(95%CI)は0.8(0.7-0.9)で,照会回数が有意に3回以下であった。ただし,MDC分類で層別化した解析の結果,外傷・熱傷・中毒の疾患群では,救急隊判断程度が重症以上の調整OR(95%CI)は1.4(1.0-1.8)で照会回数が有意に4回以上であった。結論 和歌山県全域において1年間に救急車搬送された成人全例を対象とした解析で,覚知時刻が土日祝深夜であったことと,救急隊判断程度が中等症以下であったことは,搬送先病院選定の照会回数が4回以上のリスク因子であった。ただし,MDC分類で層別化した解析によって,外傷・熱傷・中毒の疾患群では,救急隊判断程度が重症以上の調整OR(95%CI)が1.4(1.0-1.8)で照会回数が有意に4回以上であった。