著者
小濱 啓次
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.271-281, 2010-06-15 (Released:2010-08-13)
参考文献数
32
被引用文献数
2 1

医師の搭乗したヘリコプター(ドクターヘリ)の歴史は古いが,国の救急医療体制の一翼として活動が開始されたのは,1968年ドイツが最初で,その歴史は新しい。わが国では1982(昭和57)年,川崎医科大学で1日だけの試験飛行が行われたのが最初で,ドクターヘリが国の救急医療体制の一環として正式に運航を開始したのは2001(平成13)年4月1日からである。現在,19道府県23ヶ所で救命救急センターを基地としてドクターヘリが運航されており,多くの傷病者の救命に活躍している。2007(平成19)年6月27日「救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法」ができたこともあり,全国の道府県がドクターヘリの導入を検討しており,今後4~5年以内に,都道府県の救命救急センターに1ヶ所はドクターへりが配備される時代が来るであろう。今後は都市部にドクターカーを配備し,傷病者発生時,必要に応じてドクターカーにするのか,ドクターヘリにするのかを決め,一人でも多くの傷病者が救命される時代が来ることを期待している。
著者
上野 雅巳 福田 充宏 山根 一和 熊田 恵介 小濱 啓次
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.384-388, 2001-06-20 (Released:2017-06-02)
参考文献数
32
被引用文献数
4 6

頭蓋内解離性動脈瘤の報告は増加しているが, 前大脳動脈領域は稀である.今回クモ膜下出血で発症した右前大脳動脈水平部の解離性動脈瘤を経験したので報告する.術中所見ではA1部は紡錘状に拡張して暗赤色を呈しており, 同部をtrappingした.報告されている前大脳動脈解離性動脈瘤32例のうち22例は男性であった.incidentalにみつかった1例を除くとA1部に発生した11例は全例クモ膜下出血にて発症し, 末梢部に発生した20例中16例は脳梗塞で発症した.女性10例中8例はA1部に発生した.本稿では前大脳動脈解離性動脈瘤の特徴について考察する.
著者
坪内 逸美 小濱 啓次 櫻井 瑛大 服部 未来 松田 幸恵 吉岡 美貴
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.13, no.4, pp.487-492, 2010-08-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
12

目的:大都市東京都と小さな地方都市鳥取県の救急医療体制の現状を比較検討し,両都県における救急医療体制の今後のあり方を考えようとした。方法:東京都と鳥取県の救急医療に関する資料(救急医療機関数,医師数,救急隊員数,救急車数,救急出場件数,転送率等)を集め,比較検討した。結果:東京都は救急医療機関数,救急隊員数等において鳥取県を大きく凌駕していたが,人口10万人あたりでその実態をみると,東京都は鳥取県より小さい数値を示し,傷病者が119番通報から医療機関に収容されるまでの時間も鳥取県の方が早かった。一方,都民の救急車の要請件数は鳥取県の1.5倍であった。結論:東京都においては,救急医療機関と救急隊の不足,救急車の過度の要請があり, これを改善するためには大学病院の救急診療への積極的な参加とドクターカーの運用,民間救急の導入,救急車の適切な利用を促すための普及啓発が必要であると思われた。また鳥取県においては,転送件数が多く,鳥取県中部地区における救命救急センターの整備と地域連携,医療機関の役割分担が重要であると考えられた。
著者
福田 充宏 熊田 恵介 山根 一和 青木 光広 小濱 啓次 竹ノ内 陽子 市原 清志
出版者
日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.29-33, 2002-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
8

脳障害患者427例を対象に来院時の3種の病態パラメータ(バイタルサイン,緊急血液検査値,年齢・性別)から多変量解析で生死の判別(生命予後の予測)を行い,それにどのパラメータが関連しているか,その判別度がAPACHE IIスコアやGCSに比べてどうか,緊急血液検査値がどの程度有用かについて検討した。その結果,全脳障害患者を対象とした場合は,GCS,血中の尿素窒素(BUN),カリウム(K),白血球数(WBC),動脈血ガス分析によるPaCO2,BEが生死の判別に有意に関連していた。また,3種のパラメータによる生死判別度が最も鋭敏であったが,緊急血液検査値のみでもAPACHE IIスコアやGCSと同程度の判別精度が得られた。脳血管障害患者を対象にした場合には,緊急血液検査値のみによる判別度がGCSより良好であり,頭部外傷患者を対象にした場合には,GCSによる生死の判別度が最も優れていた。各患者群の同一患者においては,ICU収容時と比べて第7ICU病日のデータを用いたほうが生死の判別度が良かった。これらの統計学的手法によって,脳血管障害患者群と頭部外傷患者群において,生死の予測に対するGCSや緊急血液検査値の寄与度が異なることが明らかとなった。