著者
巷岡 祐子 河野 達夫 近藤 睦子 野崎 太希 榎園 美香子 槙殿 文香理 下島 直樹 下高原 昭廣
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.147-155, 2021 (Released:2021-10-29)
参考文献数
26

乳幼児の乳び胸は,その多岐にわたる病態・病因の把握が容易ではなく,治療に難渋する症例が少なからずある.しかし近年,画像技術の向上により中枢リンパ管の評価が可能となり,これまで未知であった病態も一部解明されつつある.また,治療技術もめざましく進歩しており,乳び胸の背景に存在する病態を評価することの重要性は増している.病態と画像診断を中心に,乳幼児における乳び胸について述べる.
著者
藤村 匠 内田 豪気 春松 敏夫 加藤 源俊 石岡 茂樹 小森 広嗣 下島 直樹 佐藤 裕之 廣部 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.310-314, 2017-04-20 (Released:2017-04-20)
参考文献数
17

今回,我々は膣欠損を合併した直腸膣前庭瘻に鎖肛根治術と同時に小腸グラフトを用いた膣形成を施行した1 例を経験したので報告する.症例は9 か月の女児.出生時に肛門を認めず,日齢2 に人工肛門造設された後に当院紹介となった.直腸膣前庭瘻に対する術前造影で腟欠損に気づき,腹腔鏡による内性器精査で遠位膣欠損と左右に分かれた子宮,正常の卵巣を認め,染色体核型は46XX で,Mayer-Rokitansky-Küster-Hauser 症候群と診断された.本例は体重増加を待って1 歳11 か月時にanterior sagittal anorectoplasty(ASARP)と同時に小腸グラフトを利用した膣形成が行われた.女児鎖肛・前庭瘻症例は婦人科系臓器の形成異常をしばしば伴う.会陰部所見のみでそれらを把握することは困難で,術前造影時に膣造影で診断し,同時に肛門形成・膣形成を行うことは治療戦略として有用である.
著者
加藤 源俊 下島 直樹 富田 紘史 廣部 誠一
出版者
日本小児放射線学会
雑誌
日本小児放射線学会雑誌 (ISSN:09188487)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.72-77, 2019 (Released:2019-11-22)
参考文献数
15

急性虫垂炎は小児の急性腹症をきたすcommon diseaseである.急性虫垂炎と診断された場合,標準治療は手術による虫垂の切除だが,複雑性虫垂炎に対してはinterval appendectomy(以下,IA)を選択することもある.軽症の場合,手術や抗菌薬投与を行わずとも症状の軽快が得られるspontaneously resolving appendicitis(以下,SRA)の報告もある.東京都立小児総合医療センター(以下,当施設)では,急性虫垂炎が疑われる場合は小児外科医が超音波検査を施行,急性虫垂炎の確定診断及び当施設独自のGrade分類を行い,治療方針を決定している.虫垂壁の構造が保たれている,または不整であっても血流が亢進している場合は,補液のみで経過観察を行う.壁構造の不整かつ血流の低下,もしくは壁構造の消失がみられる場合は準緊急的な手術,もしくはIAの方針としている.腫瘤形成性虫垂炎に対しては,抗生剤加療を先行し,膿瘍消失後3か月以降にIAを行っている.超音波による虫垂の形態評価,血流評価は,急性虫垂炎の診断のみならず,治療方針を決める上で有用であると考えられた.
著者
狩野 元宏 小森 広嗣 下島 直樹 山本 裕輝 緒方 さつき 広部 誠一
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.1015-1019, 2016-08-20 (Released:2016-08-20)
参考文献数
16

【目的】待機的虫垂切除術(以下IA と略す)は,周術期リスクを低減することができ有用であるとの報告が散見され,特に膿瘍形成性虫垂炎に対するIA は広く受け入れられているが,それ以外の症例群に対する適応は未だ議論がつきない.今回我々は,当院で蜂窩織炎性または壊疽性虫垂炎と診断された症例のうちIA の適応とした症例を緊急手術症例と比較し,その安全性,妥当性を検討したので報告する.【方法】当院では発症から48 時間以上経過した蜂窩織炎性または壊疽性虫垂炎と診断された症例に対し,2012 年は緊急手術(以下E 群)を,2013 年はIA(IA 群)をそれぞれ選択し治療した.2012 年1 月1 日から2013 年12 月31 日に当院で治療した上記虫垂炎2 症例群について,年齢,性別,疼痛コントロール,血液データ所見,手術時間,出血量,入院期間や合併症の有無を後方視的に検討した.【結果】対象は20 例で,IA 群,E 群ともに10 例であった.手術時間はIA 群58.6 分,E 群96.7 分で,IA 群はE 群に比べ有意に短かった.手術合併症はE 群で2 例あり,IA 群では0 例であった.IA 群の保存的加療期間は8.8 日で,退院後待機中に症状の再燃は認めなかった.総入院日数はIA 群12.8 日,E 群10.2 日で有意差はなかった.【結論】発症から48 時間を経過した症例に対するIA により,周術期リスクの高い症例を緊急手術に劣らぬ総入院日数で,安全に治療し得た.発症から一定の時間が経過した症例に対してもIA を適応拡大しうることが示唆された.