著者
都筑 俊介 三木 淳 森武 潤 木村 章嗣 下村 達也 木村 高弘 岸本 幸一 頴川 晋
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.106, no.2, pp.71-78, 2015-04-20 (Released:2016-04-23)
参考文献数
24
被引用文献数
1 1

(目的) 東京慈恵会医科大学附属病院および柏病院におけるT1 high grade膀胱癌の臨床的特徴を検討した. (対象と方法) 2006年1月から2012年12月までにT1 high grade膀胱癌と診断された134例を対象とした.治療経過,再発・進展,再発・進展予測因子,生存率について解析を行った. (結果) 観察期間中央値は31.5カ月.2nd TURは,57例に施行し,2nd TURでの残存は33例,upstagingは4例に認められた.再発率は41.5%,再発に寄与する因子は,初回TURで筋層を含まない,非2nd TURおよび非BCG注入療法の3因子であった.進展率は10.5%,進展に関しては,有意な因子を認めなかった.経過中に膀胱全摘を施行した症例は31例(21.8%)であり,全摘病理T stage別の癌特異生存曲線で非upstaging群(pT2未満)とupstaging群(pT2以上)を比較すると,非upstaging群で有意に生存率が高かった(p=0.0027). (結論) T1 high grade膀胱癌の再発に関して,初回TURで筋層なし,非2nd TUR,非BCG注入療法が重要な予後因子であった.多岐にわたる臨床経過を示すT1 high grade膀胱癌の治療成績向上のためには,再発,進展の予防,適切な膀胱全摘の選択など,今後さらなる検討が必要である.