- 著者
-
橋本 竜作
岩田 みちる
下條 暁司
柳生 一自
室橋 春光
- 出版者
- 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
- 雑誌
- 高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.3, pp.432-439, 2016-09-30 (Released:2017-10-05)
- 参考文献数
- 30
症例は 11 歳 5ヵ月の女児。主訴は漢字の学習障害であった。本例は口頭および文字言語の習得を阻害する要因 (知的発達障害や感覚障害) はなかった。検査の結果, 音読速度は遅く, 漢字の書字困難を示した。さらに絵の叙述において困難が認められた。新しく作成した構文検査を本例に行い, 生活年齢対照群および語い年齢対照群の成績と比較した。結果, 本例は格助詞の使用に特異的な困難を示し, その他の群で困難は認められなかった。誤答から, 本例は動作主が明確な能動文では, 動作主に「ガ格」を付与し, 動作主が理解しづらい使役文や受動文では基本語順文の格配列順序 (ガ格-ニ格-ヲ格) に従って格助詞を付与していた可能性が示唆された。本例を通じて, 学習障害の背景として口頭言語の障害の存在を検討する視点の必要性と, そのための検査を提案した。