著者
並河 良一
出版者
日本食品工学会
雑誌
日本食品工学会誌 (ISSN:13457942)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.137-146, 2011
被引用文献数
1

高い経済成長を続けるイスラム圏の巨大な食品市場が,日本・欧米の企業の注目を集めている.しかし,イスラム圏の食品市場に参入するためには,イスラム教を基礎とする「ハラル制度」をクリアする必要がある.ハラル制度とは,イスラム教の禁ずる豚肉やアルコールなどの食材を含まない,衛生的で安全な食品の規準を定めて,不適合品の生産,流通,輸入などを制限する制度である.ハラル制度は,宗教を基礎とするため,非イスラム国の企業が違和感を抱く箇所,実施が困難な箇所がある.このため日本の食品企業はイスラム市場に十分に参入できないでいた.しかし,ハラル制度の体系・内容・運用を注意深く観察すると,同制度は,工業規格の性格を帯びており,食品工場等の技術者による理解が可能で,工場の現場マニュアルの作成の基礎となるように技術的に記載されている.したがって,技術力を有する日本企業は同制度を容易にクリアできると考えられる.
著者
並河 良一
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.8, pp.794-802, 2009-08
被引用文献数
1

農産物・食品の輸出促進が日本の重要な政策となっている。そのターゲットとして、イスラム市場が注目を浴びつつある。国際金融都市化するドバイに代表される中東産油国などのイスラム諸国の経済成長は著しく、その購買力が急上昇し、高級食品・食材への二一ズが高まっているからである。イスラム市場開拓の最大のハードルは「ハラル(Halal)制度」である。ハラル制度はイスラム教を基礎とする制度であり、宗教の素養がないと理解できないと考えられているからである。現実に、日本・欧米諸国の企業や団体が、ハラル制度に関するトラブルを経験しており、同制度を非関税障壁のように感じてきた。しかし近年、貿易や投資の促進のため、ハラル制度を非イスラム世界にもわかりやすい技術制度として構築する国が現われてきた。その一つがマレーシアである。同国のハラル制度については、これを利用すればイスラム市場の開拓が容易になるため、日本・欧米諸国の企業は関心を示している。本稿では、ハラル制度の概要、その問題点を示し、日本企業はハラル制度にいかに対応すべきかを、マレーシアのハラル政策に焦点を当てて検討する。