著者
中井 康雄
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化學雜誌 (ISSN:03695387)
巻号頁・発行日
vol.82, no.12, pp.1629-1633, 1961-12-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
23
被引用文献数
7

xR2O(100-x):B2O3[R=Na,K,Li]モル組成のアルカリ-ホウ酸ガラスを,γ 線照射すると,欠陥中心が生じる。この欠陥中心の性質を調べるため,常磁性共鳴吸収を測定した。測定器 Varzan 型 V 4550 分光器で, 9000Mc/sec の周波数帯を用いて,常温で測定した。試料は粉体で,真空中にアンプルしたものであり,全照射量は約 5×106r である。溶融ホウ酸およびアルカリ-ホウ酸ガラスとも, g=2.0 で A=13.6gauss の等間隔の 4 本の微細構造をもつ ESR を得た。この吸収帯はアル力りの種類にはよらない。したがってこの微細構造はスピン 1=3/2をもつ 11B の原子核と不対電子の相互作用によって生じるものと思われ,その欠陥中心のモデルを推定した。アルカリ-ホウ酸ガラスでは,これ以外に,アルカリに関係すると思われる吸収が存在する。ガラス中の水は ESR の形状に関係があり,ガラス内部の水および吸着水は,γ 線照射によって生ずる磁気的中心の生成を阻止する作用をもつ。また吸着水はホウ酸ガラスの表面を侵し,内部に浸透して,ガラス表面層に密に存在する磁気的中心と,OH-あるいはH2Oの形で反応し,退色を促進する。