著者
金 守良 金 秀基 小林 久人 奥田 豊一 中井 敦史 藤井 友実 早雲 孝信 佐々木 素子 狛 雄一朗 朝井 章 西川 浩樹
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.64, no.11, pp.575-582, 2023-11-01 (Released:2023-11-10)
参考文献数
18

症例は60歳代女性.X年2月乳癌の診断のもと,左乳房切除,病理所見は浸潤性小葉癌であった.同年3月に多発リンパ節,骨転移に対して薬物療法を開始したが,8月より肝障害が出現した.薬剤性肝障害を疑い,薬物治療を中止するも肝障害は増悪した.造影CT,EOB-MRIなどの画像診断で肝転移巣は認めなかったが,腫瘍マーカーCA15-3の上昇がみられた.10月に腹部超音波カラードップラー画像・ソナゾイド造影所見から類洞閉塞などによる門脈血流低下が示唆された.経頸静脈的肝生検を施行したところ,類洞内に浸潤性小葉癌転移と肝硬変様の高度線維化を認めた.
著者
鴨田 吉正 中井 敦史 宇山 紘史 大野 仁嗣
出版者
Tenri Foundation, Tenri Institute of Medical Research
雑誌
天理医学紀要 (ISSN:13441817)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.34-39, 2012-12-25 (Released:2013-03-08)
参考文献数
13

症例: 19歳男性.労作時息切れ,全身倦怠感,発熱などを自覚し近医受診,血液検査で白血球増多が認められたため,急性白血病を疑われて紹介入院となった.表在性リンパ節腫脹なし,肝脾腫なし.検査結果: 白血球27,700/μl,白血病細胞89.5 %,ヘモグロビン8.3 g/dl,血小板4.9×104/μl(前医で赤血球・血小板輸血後),LDH 1,300 IU/l. 骨髄は過形成で芽球から顆粒の豊富な前骨髄球レベルに分化した白血病細胞を65.7%認めた.ペルオキシダーゼ染色陽性,Auer小体陽性で,FAB分類ではM2に該当した.フローサイトメトリー検査では,CD13+,CD33+,CD34+,HLA-DR-/+で,リンパ球系のマーカーは陰性.染色体検査は46,XY,t(9;22)(q34;q11) [17] /46,XY [3],間期核FISHではBCR/ABL 融合シグナル22.5%陽性(minor BCRパターン),キメラmRNAはminor BCR/ABL 1×105copies/μg RNAであった.治療経過: イダマイシン+シタラビンによる寛解導入療法を行ったが白血病細胞が残存した.上記結果が判明した後, イマチニブの投与を開始したところ骨髄中の白血病細胞は増加傾向を示した.次いで,ダサチニブに変更したが白血病細胞はさらに増加した.チロシンキナーゼ阻害薬による治療は断念し,高用量シタラビンに変更したが治療に反応せず入院後4か月で死亡した.考案: 間期核FISHでt(9;22)/Ph陽性細胞は白血病細胞の一部を占めるに過ぎなかったことから,この染色体転座は二次的な異常であった可能性が高い.本例において,t(9;22)/Phとp190 BCR/ABL蛋白の発現が,AMLの発症・進行に果たした役割は限定的であったと考えられた.