著者
橋本 重治 松原 達哉 中司 利一 藤田 和弘 藤田 雅子 栗原 輝雄 柳本 雄次
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.50-63, 1970-12-01 (Released:2017-07-28)

本研究は、肢体不自由児の性格・行動に関して、第1報にひき続き、次のような目的で行なった。1.肢体不自由児の性差と性格・行動との関連を調べること。2.肢体不自由児の運動障害の程度と性格・行動との関連を調べること。3.肢体不自由児にどのような性格・行動がみられるかを事例により研究すること。研究結果は、次のように要約できる。(1)脳性まひの男子に多いのは、社会性がありという性格・行動で、その中でも人なつこいという内容のものが多かった。また、関心事への固執とか、がんこさ、ふざける、はしゃぐといった傾向も多くみられた。脳性まひ児の女子に多いのは、その中でも、世話をよくするという傾向が多くみられた。また、感覚刺激に注意を奪われやすい、感情の変化が激しい、泣く、驚きやすいといった情緒的な性格・行動も多くみられた。非脳損傷肢体不自由児の男子に多い性格・行動は、忍耐力がなく意欲に乏しく、人見知りする、自信欠如などであり、女子に多いのは、一般的活動性、社会性があるという性格行動で、特に意欲的、明朗、指導性などが多くみられた。このように男子と女子とでは、その性格・行動に関して差異がみられたが、この差異は、脳性まひ児群の間でも非脳損傷肢体不自由児群の間でも異なっていた。このことは、病因ごとの性差による性格・行動のちがいを更に深く研究することを示唆している。(2)障害程度と性格・行動との関連について脳性まひ児群と非脳損傷肢体不自由児群とに共通した結果は、重度群は軽度群に比べて依存性が高いということである。このことは、病因に関係なく、障害程度と依存性という特性との間に密接な関係があることを示している。一方、両群間で相違した結果は、脳性まひ児群の場合は、重度群よりも軽度群に自己統制の欠如および攻撃性を示す者が多いことと、非脳損傷肢体不自由児群の場合は、軽度群は重度群に比べて一般的活動性が高いが劣等感を示す者が多く、重度群には抑うつ性を示す者が多いということである。両群の結果がこのように異なった結果を示したのは、脳性まひという病因による特殊性-脳損傷や知能障害など-が関係しているのではないかということが考察された。(3)事例研究では、脳性まひ児群、非脳損傷肢体不自由児群の中から代表的な4ケースを選び、各児童がいかなる性格・行動特性を有するかをみるために、我々が分類した22の大項目に照らして質的に検討した。
著者
中司 利一
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.29-42, 1988-02-20

SD法を使用して、日本と韓国の大学生が肢体不自由児に対してどのようなイメージを持っているか研究した。対象とされた言葉は「肢体不自由児」と比較のための「健常児」、「老人」、「孤児」、「精神薄弱児」、「盲児」の6概念であった。調査対象は日本は2か所の大学生317名と韓国は3か所の大学生105名である。その結果、日本では肢体不自由児はやや遅いが強く陽気な存在であるというイメージが持たれていた。しかし、昔からの誤ったイメージが他の障害児に対してまだ一部残されていることも明らかにされた。また、韓国の大学生との比較では韓国の大学生が主としてマイナスの方向の形容詞でイメージをつくっているのに対し、日本の大学生はプラスマイナス両方向の形容詞でイメージをつくっている点に違いがあった。さらに、イメージの変化を調べるために前研究と比較したところ、肢体不自由児は幾分変化しているが盲児のイメージは変化していないことがわかった。