- 著者
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中垣 紀子
豊田 恭徳
- 出版者
- 日本赤十字豊田看護大学
- 雑誌
- 日本赤十字豊田看護大学紀要 (ISSN:13499556)
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.5-11, 2005-03
本研究は、わが国における神経芽腫マススクリーニングにより、受診者は健康上の利益を得る可能性があるか、さらに得られる利益が損失を上回っているか、利益は費用を正当化できるかの医療経済的評価をすることを目的とした。1990年4月から1999年4月までに神経芽腫マススクリーニングを受診し、その後、首都圏のA小児専門病院を受診し生存している神経芽腫の小児67名とその両親を対象とした。医療費に関連するデータから、直接費、間接費などのパラメータを導入した分析を用い、個々および病期別に医療費を算出した。予後不良とされてはいるが神経芽腫マススクリーニングによって早期発見され治療を受けることにより、生存率が高いとみなされた進行例III期の場合の1人当たりの医療費(III期の小児を1人救命するための医療費)を推計した。この神経芽腫マススクリーニングの費用便益分析は、III期症例が神経芽腫マススクリーニングを受けることによって生存し得られる収入をシミュレーション結果によるサラリーマンの生涯収入合計3.1億円と仮定して分析をした。その結果、III期症例が神経芽腫マススクリーニングを受けることによって生存し得られる便益は、1人当たり1.6億円であった。しかし、この便益は、神経芽腫マススクリーニングをしなかった場合の節減される医療費34億円の経済的損失の上に成立しているとみなされた。