著者
中尾 照逸 大尾 充剛 内田 寿博 塚本 義貴 佐伯 裕司
出版者
近畿大学
雑誌
近畿大学医学雑誌 (ISSN:03858367)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.17-19, 2004-04-25
被引用文献数
2

症例は26歳, 男性. 夕食にコンニャクを食べ, 翌日の正午から腹痛が出現. 翌々日の早朝から嘔気, 嘔吐を繰り返したため当科を受診した. 腹部所見では腸雑音は減弱しており, 腹部単純レントゲン検査で小腸ガス像を認め, 腹部CT所見でも腸液が充満, 拡張した小腸を認めたがイレウスの原因は確定できなかった. 内ヘルニアによる絞扼性イレウスも否定できないため, 同日開腹術を施行した. 回腸末端より70cm口側に Meckel 憩室を認め, 約4cm大のコンニャクが憩室内に1個とその口側の回腸内に長径2.5cmから4cm大のコンニャク片が10個充満していた. Meckel 憩室を楔状切除し, この切開部より全てのコンニャク片を除去した. イレウス状態の患者の診察にあたっては, 手術歴を確認する以外に食餌性イレウスの可能性も考慮し, 食事内容やそしゃく状況に関する丁寧な問診が重要であると考えられた.
著者
中尾 照逸 塚本 義貴
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.100-104, 2006-02-28

症例は69歳, 男性。平成8年2月から胸のつかえ感と背部痛をおぼえだした。平成9年1月に胸部食道癌の診断で手術を勧めたが, 手術を忌避した。平成10年6月22日朝, 吐血のため緊急入院。同日午後に死亡したため, 遺族らの希望に従いカルテの複写を手渡した。遺族の感想としてカルテの開示を求めた理由は, 急な経過で亡くなった理由を詳しく知りたかったことと家族に見せなかった本人の姿をカルテに求めたかったことである。カルテの記載方法に関しては, 走り書きや英語で書かれた部分が理解しにくかったことと, POMRのS (主観的情報) とO (客観的情報) が参考になった。カルテを読むことで, 本人の病院での様子が良く分かり, 気持ちの整理に役立ち満足した。以上より, 日本語を用いPOMRによる情報の整理されたカルテならば, 患者本人の気持ちや容態などを経時的に追体験しやすく, 遺族の心のケアに役立つものと思われた。