- 著者
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中山 宜典
- 出版者
- 一般社団法人 日本航空宇宙学会
- 雑誌
- 宇宙技術 (ISSN:13473832)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, pp.1-7, 2003 (Released:2003-02-07)
- 参考文献数
- 3
- 被引用文献数
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近年の宇宙における活動範囲の広大化に応えることができる高比推力イオン推進機を実験的に開発してきたが,従来のイオン推進機とは異なった抽出イオンビームであり,設計パラメータの多さゆえに,試行錯誤による高比推力イオン推進機用グリッドシステムの開発(最適化)は不十分であった.そこで,従来手法を用いた計算解析による設計支援を試みることとしたが,妥当解を得ることができなかった.本研究では,新規あるいは改良手法である(1)鏡像関係を利用した3次元円筒座標系,(2)周方向速度を利用した単位時間調整,(3)PIC法とFlux-Tube法を組み合わせた電荷分配・移動,(4)粒子速度のスカラ量調整によるエネルギ補正,(5)プラズマ成立条件に着目したプレシース面決定,および(6)計算負荷の小さなコーディング方法,を採り入れた計算コードを開発した.この計算コードによる結果および実験結果を比較検討し,電流量および3次元イオンビーム形状・軌道に一致が見られ,解妥当性が認められた.また現時点における標準的パーソナルコンピュータで10分程度の低計算コストであることも認められたため,本コードは高比推力イオン推進機グリッドシステムの開発設計(特に初期,中期)に有用であると推察できる.