著者
澤井 秀次郎 松田 聖路
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.1-10, 2002 (Released:2002-10-23)
参考文献数
5

宇宙科学研究所の観測ロケットS-520の姿勢制御への適用を前提に,適応型ノッチフィルターを利用した制御器を提案した.著者らは,動翼モジュールと呼ばれる円筒部を実際に試作し,ハードウェア試験を含む各種検証を実施している.本稿では主に,この動翼モジュールに実装された適応型ノッチフィルターを利用した制御器について論じた. ロケットの動特性は本質的に時変系であるため,たとえば構造1次振動モードも時間とともに変化する.これを従来の時不変の線形制御器を用いて制御すると,振動モードの不確定性に対して十分な安定マージンを確保するためには応答性能を犠牲にせざるをえないケースがあった.それに対して,本稿では,励起された振動モードに自動的に適応していくノッチフィルターを定式化し,これと従来型の時不変制御器を組み合わせることを提案した.数値シミュレーションなどの結果,本提案の有用性が確認された. 著者らは提案した制御器を実フライトに供することができる試作品に実装済みである.本稿では,試作品を用いて実施した試験についても,一部論じた.
著者
澤井 秀次郎 坂井 真一郎 坂東 信尚 丸 祐介 永田 晴紀 後藤 健 小林 弘明 吉光 徹雄
出版者
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-05-31

空気吸込式エンジンを用いるスペースプレーンの実現に向けて,飛行実証を通して基盤となる技術を獲得するために,気球による高高度からの落下と小型ロケットブースターによる加速を組み合わせた高速飛行実証システムの構築を目指した.飛行軌道検討を主としたシステム概念検討を行った.その結果を踏まえ,飛行実験機の試作研究を行った.試作研究を通して,システム統合および飛行制御系技術の実践研究を行った.さらに,スペースプレーンに必要な技術として,空力設計技術の研究を行った.実験オペレーションまで想定した実験計画を検討し,本システムのメリットに加え,課題も整理した.
著者
川口 淳一郎 森田 泰弘 澤井 秀次郎
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.82, pp.1-180, 1995-09

本書は, 文部省宇宙科学研究所が平成7年1月15日に打ち上げたM-3SII型ロケット第8号機の第2段飛翔中に発生した姿勢異常について行った技術検討結果を報告するものである。本書は, M-3SII-8号機調査特別委員会の報告書ではなく, 内容は, 技術検討結果のみを報告するものである。過去, 今号機において行われた飛翔前試験の実施状況や, 体制を含めた不具合発生との関連, 再発防止などについては, 同調査特別委員会の最終報告書にゆずる。内容は, 何回かの調査特別委員会にて検討に供された技術資料を, 順次章ごとにたどる形式が採られている。本書では, 以下の同委員会報告内容の主たる点を, この冒頭で記述するにとどめる。「姿勢異常の原因は, 制御系を介した構造振動モードの励振に端を発した姿勢制御用噴射体の枯渇にあったことが明らかとなった。制御系が自励的に構造振動を発振せしめた原因は, 今第8号機におけるペイロード重量増により, 姿勢検出部における構造振動モードが不安定側に大きく転じていたことと, 同じ理由により構造振動に対する制御利得が著しく大きな値となっていたためである。M-3SII型ロケットの開発にあたっては, その初号機の飛翔前においては, 構造振動モード解析ならびにそれら柔軟性を考慮した制御系解析が行われたのであるが, 1)初号機においては剛体性が極めて高いことが数値指標で確認されていたこと, 2)姿勢検出部は初号機においては第1次構造振動モードの腹の位置にあり少なくとも線形性の成立する範囲ではペイロード重量の構造振動モードの制御安定性におよぼす感度は十分小さいと判断されていたこと, 3)今号機の飛翔以前の7回の飛翔を通じて第1次構造振動モードは励振はもちろん検出されたことがなかったことから, 今第8号機の飛翔前においては, 依然として剛体性近似が適用できると判断し, 構造振動モード解析および柔軟性を考慮した制御系検討は行われなかった。これが今回の不具合を事前に発見するにいたらなかった理由である。」
著者
澤井 秀次郎 福田 盛介 坂井 真一郎 櫛木 賢一 荒川 哲人 佐藤 英一 冨木 淳史 道上 啓亮 河野 太郎 岡崎 峻 久木田 明夫 宮澤 優 植田 聡史 戸部 裕史 丸 祐介 下地 治彦 清水 康弘 芝崎 裕介 島田 貞則 横井 貴弘 藪下 剛 佐藤 賢一郎 中村 和行 久原 隆博 高見 剛史 田中 伸彦 古川 克己
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.35-43, 2018 (Released:2018-03-02)
参考文献数
35
被引用文献数
8 7

SLIM (Smart Lander for Investigating Moon) is the Lunar Landing Demonstrator which is under development at ISAS/JAXA. SLIM demonstrates not only so-called Pin-Point Landing Technique to the lunar surface, but also demonstrates the design to make the explorer small and lightweight. Realizing the compact explorer is one of the key points to achieve the frequent lunar and planetary explorations. This paper summarizes the preliminary system design of SLIM, especially the way to reduce the size.
著者
澤井 秀次郎 福田 盛介 坂井 真一郎 櫛木 賢一 荒川 哲人 佐藤 英一 冨木 淳史 道上 啓亮 河野 太郎 岡崎 峻 久木田 明夫 宮澤 優 植田 聡史 戸部 裕史 丸 祐介 下地 治彦 清水 康弘 芝崎 裕介 島田 貞則 横井 貴弘 藪下 剛 佐藤 賢一郎 中村 和行 久原 隆博 高見 剛史 田中 伸彦 古川 克己
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
pp.JSASS-D-16-00050, (Released:2017-08-03)
被引用文献数
8 7

SLIM (Smart Lander for Investigating Moon) is the Lunar Landing Demonstrator which is under development at ISAS/JAXA. SLIM demonstrates not only so-called Pin-Point Landing Technique to the lunar surface, but also demonstrates the design to make the explorer small and lightweight. Realizing the compact explorer is one of the key points to achieve the frequent lunar and planetary explorations. This paper summarizes the preliminary system design of SLIM, especially the way to reduce the size.
著者
森 治 櫛木 賢一 成尾 芳博 澤井 秀次郎 志田 真樹 丸 祐介 道上 啓亮 中塚 潤一 高見 剛史 浦町 光
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
航空宇宙技術 (ISSN:18840477)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.29-35, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

The chemical propulsion system of Hayabusa-2 consists of 12 bipropellant thrusters whose thrust is 20N. The communication with Hayabusa was lost due to the fuel leakage just after touchdown in 2005. Akatsuki failed to enter orbit around Venus in 2010. The chemical propulsion system of Hayabusa-2 took measure to prevent these accidents. It satisfied the requirements of continuous injection for SCI (Small Carry-on Impactor) operation. The short injection impulse was estimated using flight data. It was changed by the thruster temperature and the frequency of use. The approximation of the long injection impulse was improved using TCM (Trajectory Correction Maneuver) data and VIC (Velocity Increment Cut) test data. This paper presents development and outward operation of the chemical propulsion system of Hayabusa-2.
著者
橋本 樹明 澤井 秀次郎 斎藤 芳隆 稲富 裕光 石川 毅彦 小林 弘明 坂井 真一郎 山川 宏 吉光 徹雄 斎藤 芳隆 石川 毅彦 稲富 裕光 澤井 秀次郎 坂井 真一郎 吉光 徹雄 小林 弘明 藤田 和央 坂東 信尚 山川 宏
出版者
独立行政法人宇宙航空研究開発機構
雑誌
学術創成研究費
巻号頁・発行日
2004

数十秒間の微小重力環境を中程度のコストで実現する手段として、高高度気球から微小重力実験装置を落下させ、自由落下中に微小重力実験を実施するシステムを開発した。飛翔実験にて10^<-4>G以下の微小重力環境を約35秒間実現し、今後の定常的運用に目処を立てた。
著者
福田 盛介 澤井 秀次郎 坂井 真一郎 齋藤 宏文 遠間 孝之 高橋 純子 鳥海 強 北出 賢二
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.1-7, 2009 (Released:2009-02-11)
参考文献数
15
被引用文献数
1 1

In this paper, a new standard bus system for a series of small scientific satellites in the Institute of Space and Astronautical Science, Japan Aerospace Exploration Agency (ISAS/JAXA) is described. Since each mission proposed for the series has a wide variety of requirements, a lot of efforts are needed to enhance flexibility of the standard bus. Some concepts from different viewpoints are proposed. First, standardization layers concerning satellite configuration, instruments, interfaces, and design methods are defined respectively. Methods of product platform engineering, which classify specifications of the bus system into a core platform, alternative variants, and selectable variants, are also investigated in order to realize a semi-custom-made bus. Furthermore, a tradeoff between integration and modularization architecture is fully considered.
著者
小島 孝之 佐藤 哲也 澤井 秀次郎 棚次 亘弘
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.33-40, 2002 (Released:2002-12-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

将来の宇宙往還機用エンジン用空気吸い込み式エンジンの制御特性を調べ,制御手法を確立することを目的として,軸対称エアインテークとターボジェットエンジンより構成される超音速エアブリージングエンジンモデルの再始動制御実験を宇宙科学研究所超音速風洞(マッハ3)において行った.制御実験は,極超音速飛行を行うインテークの特徴である不始動現象に着目して行った.制御シーケンスは,飛行中にインテークが不始動になり,さらに不始動による衝撃により燃焼室の火炎が失火することによってエンジンが推力を失った状態を想定して作成した.よって,風洞通風開始直後にインテーク不始動状態でエンジンを始動し,インテークを再始動した後,インテークのスパイク位置および終端衝撃波位置を制御しインテーク全圧回復率を目標値まで回復する一連の自動制御を行った.制御実験は良好に行われ,飛行中にインテークが不始動に陥った後,30~40secでインテーク再始動およびエンジンの推力回復が可能であることを示した.さらに,コアエンジンにターボジェットエンジンを用いる場合,不始動直後に燃焼室の火炎が急激に上昇する現象を示し,この現象に対処する新たな制御ロジックを提案した.また,インテーク不始動時にはバズの回避が不可欠であることを示し,バズを回避するための制御量としてバズマージンという値を提案した.
著者
山川 宏 小川 博之 藤田 和央 野中 聡 澤井 秀次郎 國中 均 船木 一幸 大津 広敬 中山 宜典
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.52, no.603, pp.148-152, 2004 (Released:2004-05-31)
参考文献数
4
被引用文献数
5 6

A magneto-plasma sail produces the propulsive force due to the interaction between the artificial magnetic field around a spacecraft inflated by the plasma and the solar wind erupted from the Sun. The inflation of the magnetic field by the plasma was proposed by a group of the University of Washington and the basic research has just started. This paper summarizes the characteristics of the magneto plasma sail by comparing with the other low-thrust propulsion systems, and investigates its potential application to near future planetary missions. Finally, an engineering satellite to demonstrate the magneto-plasma sail is proposed as a first step.
著者
二宮 敬虔 久保田 孝 橋本 樹明 川口 淳一郎 丸家 誠 澤井 秀次郎
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1998

月や惑星などへの探査機の自律的着陸誘導法について,安全・確実に着陸するために必要なセンサ情報処理,カメラ画像に基づく地形認識,それらの情報に基づいた探査機誘導制御則に関する検討を行った.また,計算機上に天体の表面地形モデル(太陽光の反射特性も含む)と探査機モデル(ダイナミクス・制御則,センサモデルなどを含む)を構築し,探査機の自律着陸を計算機上で模擬できるグラフィカル着陸シミュレータを開発した.以下に得られた知見をまとめる.1.グローバルマッピング移動ステレオ法と輪郭・影情報を用いる手法により,3次元構造を復元する手法を確立した.2.惑星モデルの構築惑星形状や表面のクレータなどのモデル化を行い,さまざま惑星モデルを生成可能にした.また,太陽光の反射特性を考慮し,任意の位置から撮像した画像を生成する機能を実現した.3.着陸誘導制御アルゴリズム複雑な表面地形に対しても特徴点抽出が可能な手法を構築した.また,距離センサおよび画像情報を用いて,探査機の相対位置姿勢検出などがロバストに行われるアルゴリズムを考案した.4.地形認識画像情報から定性的な地形認識を行う手法を確立し,障害物回避,目標地点への高精度誘導着陸手法を構築した.本研究により,ロバストで高精度な自律着陸航法誘導システムが構築可能となり,今後の惑星科学の発展に大きく貢献できることが期待される.