著者
中山 英治
出版者
大阪産業大学
雑誌
大阪産業大学論集. 人文・社会科学編 (ISSN:18825966)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.75-91, 2016-10

タイの日本語教育機関で日本人日本語教師がタイ人日本語教師と協働するとき,何を経験し,課題があればどのようにそれを克服しているのかを質的分析法で調査した。その結果,タイの日本語教育機関における協働には,次の(a)から(c)があることが明らかになった。(a)日本人日本語教師は,日本式の強固な仕事観や指導観を協働現場に持ちこむ。(b)日本人日本語教師は,協働の可能性を見出し,教師間協働に適応していく。(c)日本人日本語教師は,3 年目から充実した協働に入っていける可能性がある。タイの教師間協働に関する研究については,協働の現実や教師の実態を把握するための質的な研究が多かった。しかし,複数の質的な研究で明らかにされた概念や協働の実態についての関連性は曖昧なままであった。本研究では,先行研究で指摘された概念や協働の実態を丁寧に引き継ぎ,繰り返し実施したインタビューのデータから抽出された概念を加えながら,新しい協働体験の仮説モデルを再構築した。