著者
中島 一夫 一之瀬 正彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.273-277, 1996-04-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
8
被引用文献数
3 4

目的: 65歳以降発症の発作性心房細動例 (E. PAf) の虚血性脳血管障害 (iCVD) 発症率を65歳以前発症の発作性心房細動例 (Y-PAf) 及び65歳以降発症の慢性心房細動例 (E-CAf) の発症率と比較し, その特徴を検討した.対象及び方法: 対象は, 弁膜症を有さず, 予防的抗凝固療法未施行のE-PAf 95例 (男54, 女41, 73.6±5.5歳) で, Y-PAf 79例 (男59, 女20, 52.4±11.6歳) 及びE-CAf 95例 (男54, 女41, 73.6±6.5歳)を対照として, 後向き調査にてiCVD全体及び成因別 (脳血栓症, 脳塞栓症) の発症率を算出した.結果: E-PAf は平均観察期間45.0カ月で, iCVD発症率は年間4.8% (塞栓2.7%, 血栓2.1%), Y-PAfは48.0カ月で年間2.5% (塞栓1.3%, 血栓0.6%, 分類不能な梗塞0.6%), E-CAfは59.8カ月で年間8.3%(塞栓5.1%, 血栓1.9%, 分類不能な梗塞1.3%) であった. iCVD全体の発症率で, E-PAf はE-CAf より有意に低率 (p<0.01), Y-PAfより有意に高率 (p<0.01), 脳塞栓症発症率でも, E-PAfはE-CAfより有意に低率 (p<0.01), Y-PAfより有意に高率 (p<0.01), 脳血栓症発症率では, E-PAfはY-PAfより有意に高率 (p<0.01) であった.E-PAf中, 1回のみのAf発作57例と複数回発作38例間で, iCVD発症率 (年間3.3% v.s. 6.0%) 及び脳塞栓症発症率 (年間0.8% v.s. 4.6%) は複数回例で有意に高率 (p<0.005), 一方, 脳血栓症発症率 (年間2.5% v.s. 1.4%) は有意差なし.E-PAf中21例 (22%) が慢性に移行し, 移行後, iCVD全体で5例 (年間発症率8.6%), その中, 脳塞栓症は3例 (年間発症率5.2%) に生じた.結語: 老年発症発作性心房細動群の虚血性脳血管障害及び脳塞栓症発症率は, 老年発症慢性心房細動群と若年発症発作性心房細動群の中間に位置し, 複数回の心房細動発作及び心房細動の慢性化が発症率をさらに上昇させる因子になると考えられた.
著者
中島 一夫 樋口 陽 後藤 暁子 後藤 昌三
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.111-116, 2015 (Released:2015-03-26)
参考文献数
17
被引用文献数
1

要旨:心原性脳塞栓症発症急性期の経食道心エコー検査にて左房内血栓を認め,dabigatran etexilate(DE)投与後に血栓消失を確認した非弁膜症性心房細動5 例を呈示する.発症時年齢は平均83 歳,女性が3 例,左房内血栓の最大径は平均13 mm であった.未分画ヘパリン投与後のDE への切り換え例が3 例,発症前よりのワルファリン投与からDE への切り換え例が1 例,発症前よりワルファリンが投与され発症後に未分画ヘパリンへの変更を経てのDE への切り換え例が1 例であった.発症各3 日,5 日,5 日,7 日,18 日後からの平均18 日(6~39 日)間のDE(4 例で110 mg×2/日,1 例で150 mg×2/日)投与により全例で症候性再発を認めることなく左房内血栓消失が確認された.心原性脳塞栓症急性期に心内血栓が検出された非弁膜症性心房細動患者におけるDE 投与が,再発予防を目的とした急性期抗凝固療法の一方法になりうることが期待される.