著者
中島 正二
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.58-67, 2003

近世とは、版本というメディアと写本というメディアが共存した唯一の時代である。その時代に物語たち(平安期物語と中世擬古物語)はどのように生きたのであろうか。物語たちは、結局、物語として自立することはできず、歌書の一部分でしかなかった。『伊勢物語』『源氏物語』はあたかも聖なるテクストのごとく、歌書として、特権的な地位を手に入れ、「古典」たりえたが、多くの物語たちはそれに失敗した。