著者
松村 千鶴 中島 真紀 横山 潤 鷲谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 = Japanese journal of conservation ecology (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.93-101, 2004-06-30
参考文献数
25
被引用文献数
10

北海道勇払郡鵡川町・厚真町と沙流郡門別町のほぼ7.75km^2の範囲にある水田や畑地,河川敷,山林において,2003年6月から9月の間にマルハナバチ類(Bombus spp.)の巣を探索し,地中のネズミ類の廃巣に作られたセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris L.)の自然巣8つを含む27の巣を発見した.そのうち9巣を採集して分解し,卵,幼虫,マユ,成虫の数をできるだけ雌雄とカースト(働きバチか女王バチか)を区別して計数するとともに,蜜の保存や排泄場所の有無などの営巣特性についての情報を収集した.新女王バチの生産に至った巣の比率には,外来と在来のマルハナバチ間で有意差はなかったが,セイヨウオオマルハナバチの1巣あたりの新女王バチ生産数は在来マルハナバチ類と比較して4.4倍の平均110頭であり,当該地域の野外でのセイヨウオオマルハナバチの増殖率の高さが示唆された.
著者
中島 真紀 松村 千鶴 横山 潤 鷺谷 いづみ
出版者
日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.57-63, 2004-06-30
被引用文献数
7

温室栽培トマトの授粉用に導入されたセイヨウオオマルハナバチの野生化の状況を把握するために,2003年5月下旬から8月下旬にかけて北海道勇払郡厚真町および鵡川町において踏査による営巣場所探索の調査を行った.のべ18人日の調査により,8つのセイヨウオオマルハナバチの野生化巣と11の在来マルハナバチの巣が発見された.巣の発見場所は,主に水田の畦や畑地の用水路の土手であり,特にセイヨウオオマルハナバチとエゾオオマルハナバチ,エゾトラマルハナバチは営巣場所の選択において類似性が高いことが示された.さらに在来種であるエゾオオマルハナバチの1つの巣から,セイヨウオオマルハナバチの働き蜂が出入りしていることが確認された.在来マルハナバチ類とセイヨウオオマルハナバチが同じ巣を利用することにより,寄生生物の異種間感染をもたらす可能性が示唆された.