著者
中川 国利 桃野 哲
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.51, no.12, pp.2708-2711, 1990-12-25 (Released:2009-04-21)
参考文献数
8

成人の腸重積症は稀であるが,われわれは腸重積症を来した回腸悪性リンパ腫の1切除例を経験したので報告する. 症例は26歳の男性で,5ヵ月前より心窩部痛があった.来院時嘔気もあり,腹部単純X線写真にて小腸にガス像を認めた.また右側腹部に小児手拳大の腫瘤を触知した.腫瘤はCT検査や超音波検査では同心円状の所見を呈し,注腸造影や大腸内視鏡検査では回腸腫瘍を先進部とした腸重積を認めた.開腹術を施行したところ,Bauhin弁より22cm口側の回腸に3.0×3.0×2.5cmの腫瘍を認め,それを先進部とした回腸回腸,さらに回腸結腸の二重性腸重積を来していた.また周囲リンパ節に転移を認めたため結腸右半切除を行い,さらに化学療法を術後に行った.組織学的にはdiffuse, large cell型の悪性リンパ腫で,術後4年8ヵ月を経た現在再発は認めていない.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.11, 2018-01-20

忘年会や新年会などで,酒を飲む機会が多い季節を迎えた.飲酒運転に対する社会の目は厳しく,今や犯罪として処罰される.では診療上における飲酒は如何であろうか. 運送業界や航空業界では,就労12時間前からの禁酒が規定されている.さらに就労時には,呼気におけるアルコール濃度測定を義務付けている会社も多い.したがって午前8時半から仕事に従事する場合には,前日の午後8時半からはソフトドリンクしか飲めないことになる.
著者
小林 照忠 中川 国利 月館 久勝 遠藤 公人 鈴木 幸正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-202, 2013-04-30
参考文献数
11

目的:腹腔鏡下虫垂切除術(Laparoscopic appen-dectomy:以下,LA)の有用性について検証した.方法:当科で手術を施行したLA 154例,開腹虫垂切除術(Open appendectomy:以下,OA)86例を,病理組織学的所見による炎症程度に基づいてカタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類し,臨床的事項について比較検討した.結果:LAとOAでは手術時間に差はなかったが,術後合併症,特に創感染はLAがOAに比べて有意に低率であった.特に壊疽性では,その傾向が顕著であり,術後の絶食期間や在院期間もLAで有意に短縮していた.結語:LAはOAに対して,壊疽性のような高度炎症例においても術後合併症が有意に少なく,急性虫垂炎に対するLAの有用性が示唆された.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.825, 2019-07-20

尿意を感じればトイレに行くのが自然であり,我慢にも限界がある.では長時間に及ぶ手術中にトイレに行きたくなったら,外科医はどうしているのだろうか. かつての名物外科教授の中には,手術中に尿意を催し,「婦長,尿瓶」と宣った強者がいたそうだ.そして手慣れた婦長は「失礼します」と語って教授の排尿を手伝い,教授は手を休めることなく手術を続け,「ご苦労様」と語ったと伝えられている.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1049, 2020-09-20

同じ施設で長らく仕事をしていると,他施設への異動話が持ち込まれることがある.その時はどう対応したらよいであろうか.私のささやかな経験を交えて対応策をお伝えする. 現在の職場で思い通りに仕事ができ,将来の展望もあるなら,異動話は即断る.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.185, 2020-02-20

急性胆囊炎例に対して即手術をすべきか否か,外科医によって治療方針は異なる. 初期研修時代のボスは痛いと訴えている患者には,「即しかも根治手術をしてあげるのが外科医の責務である」との信念を持っていた.そこで急性虫垂炎例を始め,急性胆囊炎例に対しても手術を即施行した.そこで初期研修後に入局した母校医局で「急性胆囊炎例でも即手術をすべきです」と発言したら大いにしらけ,教授からも非難を受けた.当時の医局は,急性胆囊炎例に対しては保存的治療を行うことが掟であった.
著者
中川 国利
出版者
医学書院
雑誌
臨床外科 (ISSN:03869857)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.1019, 2008-07-20

生を受けた人間は必ず死を迎える.人は死を悟ったとき,大いに落胆し歎き悲しむのがつねである.しかし,死を従容として受け入れ,身近な人々との別れを惜しみながら死に逝く人も稀ながら存在する. 80歳代後半のSさんは7年前に大腸癌の手術を受けた.進行癌ではあったが術後の経過は良好で,好きなゴルフを夫婦で楽しんでいた.久しぶりに来院したので胸部X線写真を撮ると,肺に腫瘍を認めた.そこで,呼吸器内科に紹介した.しかし,肺癌はすでに転移し,また高齢のため,単に対症療法が行われることになった.