著者
本田 宏
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.8, pp.105-119, 2002-10-31

本稿では,ドイツの原子力政治過程の諸段階を再構成し,運動の挑戦と脱原子力政策とを結ぶ政治過程の軌跡と力学を検討する。主な分析枠組みとなるのは,特定政策領域を長期的な時間枠で包括的に再構成し,そこでの政策転換の契機を捉えるのに有効な,アドヴォカシー連合論である。結論として,ドイツでは1975年のヴィール原発予定地占拠を機に反原発の社会的連合の全国的形成が始まった。その過程で開放的な政治制度の効果が表面化し,また当時の連邦政府与党,社会民主党(SPD)の一部が原子力批判派に加わり,原発発注を凍結に導いた。しかし第二次石油危機後,原子力推進派は巻き返しに転じ,一時的な原発認可再開に成功した。これに対し,脱原子力の連合は対案形成活動,緑の党の結成,さらに緑の党とSPDの連合政治を通じて対抗力を養った。加えて,活発な抗議運動の存在や,原発事故のような促進的事件の頻発により,保守政権下でも原子力推進政策はむしろ緩慢な縮小過程をたどったと言える。
著者
森江 善之 南里 豪志 安島 雄一郎 本田 宏明 曽我 武史 小林 泰三 住元 真司
雑誌
研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2015-HPC-148, no.33, pp.1-6, 2015-02-23

ACE (Advanced Communication for Exa) プロジェクトでは,省メモリかつ低遅延な低レベル通信ライブラリ ACP (Advanced Communication Primitives) の開発を実施している.今回は,HPC 分野で幅広く利用される InfiniBand を用いて,ACP 基本層を実装した.InfiniBand での ACP 基本層の実装方法の報告を行う.また,実装した ACP 基本層のメモリ使用量と通信性能の評価を行った.今回の評価では, InfiniBand の接続資源がメモリ使用量の多く占めることがわかった.また,初期実装の段階で中メッセージサイズ以上で Open MPI と同等の通信性能を示し,最大 20%の性能向上を示した.また,小メッセージサイズでの通信性能の問題を確認することが出来た.
著者
本田 宏 HONDA Hiroshi
出版者
北海学園大学開発研究所
雑誌
開発論集 (ISSN:0288089X)
巻号頁・発行日
no.98, pp.11-34, 2016-09
著者
本田 宏
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.195-215, 2014-01

(旧西)ドイツでの原子力をめぐる政治過程の中で再三設定されてきた,原子力推進・反対両派の討議の場を保障する「政策対話」の主要事例を概観する。(1)反原発運動の拡大に当惑するSPD(社会民主党)とFDP(自由民主党)の連立政権が試みた「原子力市民対話」(1975~78年)。(2)紛糾する再処理工場計画の検討を専門家に委ねるため,CDU(キリスト教民主同盟)の州首相が設置したゴアレーベン国際評価会議(1978~79年)。高速増殖炉をめぐる連邦与党内および州政府との対立を契機に連邦議会が設置した「将来の原子力政策」(3)第一次および(4)第二次特別調査委員会(1979~82年)。(5)チェルノブイリ原発事故後の再処理工場や高速増殖炉の建設の放棄という情勢を踏まえた利害関係者による交渉としてのエネルギー・コンセンサス会議(1993年)。この延長線上にSPDと緑の党の連立政権と電力業界との脱原子力合意(2000年)がある。(6)福島原発事故後,キリスト教民主・社会同盟とFDPの連立政権が脱原子力への政策転換を正統化するため設置した「安全な電力供給に関する倫理委員会」(2011年)。以上である。
著者
中村 研一 本田 宏 清水 敏行 佐々木 隆生 遠藤 乾 松浦 正孝 川島 真 宮脇 淳
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

本研究は、地球市民社会に関する共同研究である。研究の実施過程で、ロンドン大、ケンブリッジ大、ダッカ大、韓国高麗大など各国研究者と研究打合せを実施し、地球市民社会に関する理論枠組をテーマとした研究会を行った。また、地球市民社会研究の基本資料として、市民社会、地球市民社会の二次文献を体系的に収集した。近代史を顧みると、政治的意志を持ち、それを表現する市民/個人、およびそのネットワークと運動体は、国家や地域、そしてそれらの境界を超えた国際的な舞台においても、政治的変革と規範形成の役割を果たしてきた。さらに民主主義が普遍化した今日、市民/個人は、国家や自治体においてのみならず、世界においても、決定的な重要性をもつものである。なぜなら、およそ人間行動に必要とされる統一的な決定や価値配分を正統化しうる主体は、市民あるいは個人の集合としての民衆以外にはないからである。ただし、一九七〇年代頃までは、世界政治は国家政府機構を主体とし、世界経済は営利企業が支配してきた。しかるにこうした趨勢は、二〇世紀末の世界において転換を示し、非国家組織(NGO)および市民運動・社会運動が、政府組織、営利企業に対比し、「第三の力」(アン・フロリーニ)と呼ばれている。さらには、世界政治において、国家アクターからNGOへの「パワーシフトが生じている」(ジェシカ・マシューズ)という大胆な議論まで、現れるにいたった。もはや地球市民社会が無視し得ないことは明瞭である。二一世紀初頭の世界において、市民とその地球的ネットワークが、現実政治のなかでどれほど政治的役割を果たしているのか。また、どれほどの政治的役割を担うことが可能であるのか。さらにどこまで、どのような役割を演じるのが適切なのであろうか。これらの問いに答えることが、本研究の課題となった。また本研究では、韓国、台湾、バングラデシュ、日本など、アジアにおける市民とNGOの考察が、重要な一本の柱となっている。市民という概念が生まれ、また地球市民社会が最初に興隆した西欧と対比して、アジアの政治経済風土においては、市民や個人、そしてNGOの果たす役割は、どこまで類似し、どのように異なっているのであろうか。このような課題に取り組んだ成果の一部である論文と収集資料のリストを報告書にまとめた。
著者
林 徹生 本田 宏明 稲富雄一 井上 弘士 村上 和彰
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.87, pp.103-108, 2006-07-31
被引用文献数
2

今日に至るまで種々のプロセッサ・アーキテクチャが提案され,プロセッサの計算性能は著しく向上している.現在では1個のチップに複数のプロセッサコアを搭載することで性能向上を図るチップマルチプロセッサ(CMP)が数多く提案されるに至っているが,高い計算性能を誇るCellプロセッサもその一つである.また,CMPチップの用途として主にメディア処理が想定されているが,その高い計算能力を生かすことで分子軌道法計算等の科学技術計算にも利用可能と考えられる.そこで本研究ではCellプロセッサに分子軌道法計算の主たる計算部分である二電子積分計算を実装し,その性能を評価する.また,分子軌道法計算のような科学技術計算へ対する今後のCMPチップの利用可能性を考察する.As various architectures of processor are proposed until today, the processor performance improves remarkably. Now many chip multiprocessors that planed to improve performance by implementing some processor cores on a chip are proposed, and processor ``Cell'' is one of them. Though the media processing is mainly assumed as a usage of the chip, we think that we can apply their high performance to Science and Technology calculation like Molecular Orbital(MO) calculation. In this paper, we implement Two Electron Integral calculation that is core of MO calculation on Cell processor, and evaluate performance. And we consider the use possibility of chip multiprocessor for Science and Technology calculation like MO calculation.