著者
中川 恵正
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.38-47, 1980-03-30

本研究は3コの実験からなっている。実験Iでは,併行弁別訓練事態において過剰訓練によって手掛り結合が形成されるか否かが,実験IIでは,手掛り結合に基づいて2コの弁別課題遂行間に相互作用が生じるか否かが,実験IIIでは,3コの弁別課題が併行して訓練される事態においても過剰訓練によって手掛り結合が形成され,そして相互作用が生起するか否かが検討された。 実験Iでは,32名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け,そして過剰訓練(24試行または0試行)を受けた後,テストを受けた。テスト条件: 群Iは2コの弁別刺激対の負刺激が互に入れ替る条件であり,群IIIは2コの弁別刺激対とともに原学習時の正刺激が残存し,負刺激がともに新しい刺激に替る条件であり,群IVは2コの弁別刺激対ともに原学習時の負刺激が残存し,正刺激がともに新しい刺激に替る条件であり,群IIは群Iと同じ条件だが,過剰訓練を受けない条件である。主要な結果は次の通りである。1,群I,IIIおよびIVの弁別遂行間に差がみられなかった。しかもこれら3群のテストでの弁別遂行は過剰訓練期間中の弁別遂行に比べてそこなうことがなかった。 2,群IIは他の3群に比べて弁別遂行が劣っていた。 実験IIでは,64名の幼児は2コの弁別課題を用いた併行弁別訓練を受け,過剰訓練(20試行または10試行と0試行)を受けた後,逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件: 全体逆転群は2コの弁別課題ともに同時に逆転された。部分逆転群は1コの弁別課題のみが逆転され,もう1コの弁別課題は逆転されなかった。分離逆転群は1コの弁別課題のみが逆転され,もう1コの弁別課題は除去された。統制群は原学習,逆転学習ともに1コの弁別課題の訓練を受けた。主要な結果は次の通りである。1,過剰訓練を受けたとき,全体逆転群は他の3群より早く,また分離逆転群と統制群は部分逆転群に比べて早く逆転学習を完成した。2,全体逆転群の逆転学習は過剰訓練によって促進され,分離逆転群および統制群の逆転学習も促進される傾向がみられたが,部分逆転群の逆転学習は遅延された。 実験IIIでは,60名の幼児は3コの弁別課題を用いて併行訓練を受け,過剰訓練(30試行と0試行)を受けた後,逆転学習の訓練を受けた。逆転学習条件:全体逆転群は3コの弁別課題ともに逆転された。部分逆転-I群は1コの弁別課題のみ逆転され,残りの2コの弁別課題は逆転されなかった。部分逆転-II群は2コの弁別課題がともに逆転され,もう1コの弁別課題は逆転されなかった。主要な結果は次の通りである。1,標準訓練条件下と過剰訓練条件下とにおいて,全体逆転群の学習の速度と部分逆転群(IおよびII群ともに)のそれとが逆関係になった。2,部分逆転群(IおよびII群ともに)の逆転されない弁別課題における誤反応は過剰訓練によって増大した。
著者
中川 恵正 新谷 敬介
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.23-33, 1996-03-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
13

The present study investigated which factors facilitated solving arithmetic word problems in fifth graders by comparing five training techniques: (1) Self controlinterpretation training(SCI) that was to acquire both the self regulated uses of solving skill and strategy and the self control ability of evaluating one's own solving process, correcting it and interpretating it to others; (2) Blind training(BT) expected to enhance the awareness of solving skill and strategy; (3) Error finding training (EF) that was to monitor the other's solving process; (4) Ordinary teaching training(C) used in a public elementary school, and (5) 30-SCI training(30-SCI) that children had been given the SCI training for 30 hours before the basic learning had begun. In Experiment 1, fifth graders were trained under a given condition for three hours and then given four posttests. Group 30-SCI did better performance on each posttest than the 4 other groups. Group SCI also did better performance on posttests 1, 2, and 3 than Group BT. Experiment 2 using four training techniques confirmed the superiority of the SCI technique to the others found in Experiment 1 in third graders.
著者
中川 恵正
出版者
日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.114-123, 1980-06-30

本研究は,2個の弁別課題を併行して訓練する併行弁別事態において,後述学習における先行学習の適切次元の有無を変数として,過剰訓練の効果を検討した。 5×2の要因計画が用いられ,第1の要因は移行の型であり,全体逆転移行(W),部分逆転移行(P),半次元外移行-I (HEDS-I), 半次元外移行-II (HEDS-II)か次元外移行(EDS)であった。第2の要因は過剰訓練の有無であり,過剰訓練0試行か過剰訓練24試行かであった。被験者60名(平均年齢4歳1か月; 平均知能115.3)の幼児で,6名ずつ下位群に分けられた。先行学習の規準(5回連続正反応)到達後,あるいは所定の過剰訓練後,ただちに5個の移行条件(W, P, HEDS-I, HEDS-II, EDS)のいずれかを行った。移行学習規準は5回連続正反応であった。正反応に対する強化は"あたり"という言語強化と,ブザー音と黄色ランプの点灯の非言語強化とであった。 主要な結果は次の通りであった。 (1),全体逆転移行群の学習は過剰訓練によって促進される傾向がみられた。また半次元外移行-II群の逆転群の逆転課題の学習は過剰訓練によって促進された。しかし過剰訓練は部分逆転移行群の学習を遅延した。 (2),過剰訓練は半次元外移行-II群の次元外移行課題の学習を促進したが,次元外移行群の学習を促進も遅延もしなかった。 (3),全体逆転移行群と部分逆転移行群の後続学習課程は,標準訓練条件下では異ならないが,過剰訓練条件下では互に異なっていた。 (4),次元外移行課題における学習行程は,半次元外移行-I群,半次元外移行-II群および次元外移行群の3群間に差がみられなかった。 本研究の結果は,後続学習における先行学習の適切次元の有無が過剰訓練の効果を規定する重要な要因であることを示している。さらに先行学習の適切次元が後続学習に存在する場合には,過剰訓練は次元外移行学習をも促進することを明らかにしている。