著者
宇野 豊三 中川 照真 松本 幹生
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.1245-1249, 1971 (Released:2010-02-16)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

ガスクロマトグラフ試料室中におけるクエン酸の熱分解反応を検討し,その分解生成物に,よるクエン酸の定量法を考案した.180~360℃における熱分解生成物は,無水イタコン酸,無水シトラコン酸およびアセトンであることが標品との同定により確認された.これら生成物のうち無水イタコン酸と無水シトラコン酸について分解の温度依存性などの基礎的検討により得られた知見に基づいて,分析条件を設定した.すなわち,試料室温度(分解温度)250℃,カラム充てん剤20% PEG 20MクロモゾルブW(60~80メッシュ),カラム温度175℃,カラム長さ1.5m,キャリヤーガス窒素45ml/min,検出器水素炎イオン化型であった.本法をミグレニン製剤中のクエン酸の定量に応用し,満足すべき結果を得た.
著者
田中 久 千熊 正彦 渋川 明正 中川 照真
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

セレンは栄養学的に必須元素であることが認められていると同時に, 微量でも生体に有害な作用を及ぼす元素で, その必須量と有害量との差が小さい点で特異な元素である. その生体への取りこみ, 代謝に関してはまだ不明な点が多くその解明が待たれているが, 現在までにその代謝の有意義なモデル反応が知られていないためにその研究がおくれていた. 我々はセレンが生体内に入ってから代謝される過程で重要な反応と考えられている生体関連チオール類とのセレノトリスルフィドの生成及び分解反応を適当なモデル反応を用いて追究すること, 及びセレンの簡易な微量定量法を確立することがまず必要と考え, 数種のチオール類とセレン(IV)との反応を検討した. その結果ペニシラミンとの反応で生成するセレノトリスルフィドが極めて安定であることを見出し, それを単離し, 高速液体クロマトグラフィー, 各種分光学的方法によるキャラクタリゼーションを行い, かつグルタチオン, システインなどとのセレノトリスフィド生成反応をを解析し, チオール交換反応がセレノトリスルフィドの生成に伴いおこることを見出し, これらの反応はセレンの代謝過程のモデル反応として有意義なものであることを認めた. 一方従来より知られているセレンの分析法より簡便でかつ生体試料, 環境試料の分析に適する方法の確立を目的として上記のペニシラミンとのセレノトリスルフィド生成反応を利用することを考え, セレノトリスルフィド生成反応と発蛍光体への誘導反応とを組み合わせて高速液体クロマトグラフィーによる分析法を開発し, その方法が生体試料, 環境試料に適用できることをたしかめた. 今後この分析法を用いてさらに詳しく生体関連チオール類とセレンとの反応を解析し, かつ現在までにまだほとんど検討していないセレノトルスルフィドの分解反応についても検討し, その研究成果を基にしてセレンの生物活性に関する化学的研究の推進に寄与したい.