著者
江原 遥 田中 久美子
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.15, no.5, pp.151-167, 2008-10-10 (Released:2011-03-01)
参考文献数
14

近年, 国際化に伴い, 多くの言語を頻繁に切り替えて入力する機会が増えている.既存のテキスト入力システムにおいては, 言語が切り替わるたびに, ユーザーが手動で, テキスト入力ソフトウェア (IME) を切り替えなければならない点が, ユーザーにとって負担になっていた.この問題を解決するために, 本論文では, 多言語を入力する際にユーザーの負担を軽減するシステム, TypeAnyを提案する.TypeAnyは, ユーザーが行うキー入力からユーザーが入力しようとしている言語を判別して, IMEの切り替えを自動で行う.これによって, ユーザーがIMEを切り替える操作量が減るため, 複数の言語をスムーズに切り替えながら入力することが可能になる.本研究では, 隠れマルコフモデルを用いて言語の判別をモデル化し, モデルにおける確率をPPM法を用いて推定することでTypeAnyを実装し, その有用性を評価した.その結果, 人工的なコーパスにおける3言語間の判別において, 96.7%の判別精度を得た.また, 実際に多言語を含む文書を用いて実験したところ, 切り替えに必要な操作の数が, 既存の手法に比べて93%減少した.
著者
田中 久美子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.1_127-1_137, 2015-04-20 (Released:2016-01-07)
参考文献数
31

本研究は,日本の専門看護師(certified nurse specialist:CNS)が役割を獲得するまでの内面的成長プロセスを明らかにすることを目的に行った。研究協力を得られた11名のCNSを対象に半構造化面接を行い,その内容を質的に分析した。 その結果,対象者のCNSとしての内面的成長プロセスは,時間軸に沿って,①コンフリクトの時期,②精製の時期,③創出の時期,④発展の時期の4段階に分類することができた。対象者は,当初曖昧な役割認識のなかで悩み,周囲に支えられながら,自分自身のCNSとしてのあり方を深くかえりみる作業を繰り返し,やがて役割獲得の感覚を得ていた。そこまでにおおむね3年の月日を要していた。その後も経験と努力を積み重ね,6~10年という時間をかけて,自分なりの確固としたCNSの役割を獲得していた。 この成長プロセスを通して,CNSの大学院教育のあり方の検討,初任者のCNSに対するサポートの必要性,組織とCNSの関係の構築の必要性に関して看護の示唆を得た。
著者
田中 久徳
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.305-314, 2016-08-01 (Released:2016-08-01)
参考文献数
22

国立国会図書館は果たすべき使命と5年間にわたって取り組む6つの中期目標を2012年に公表したが,そのうちの一つとして「情報アクセス(の向上)」がある。本稿では,情報アクセスの改善に向けた国立国会図書館の最近の取り組み状況について概観し,併せて,資料デジタル化,視覚障害者へのテキストデータの提供,次世代検索手段としての統合オンラインサービス,国立国会図書館サーチと国のアーカイブ利活用促進策について,課題と方向性を説明する。
著者
木村 大翼 田中 久美子
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.119-137, 2011 (Released:2011-09-28)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

本稿では,文書量に不変な定数を考える.このような定数には,言語や文書の複雑さや冗長性を定量化して捉える計算言語学上の意義がある.これらの指標は既存研究でさまざまなものが提案されてきたが,ほとんどの場合英語を中心とする小規模な文書を対象としてきた.本研究では英語以外のさまざまな言語や,大規模な文書も対象として扱い,主に先行研究において値が文長に依らないとされる 3 つの指標 K, Z, VM と本研究で新たに試みた指標である H と r の 5 つの指標に対し,値が一定となるかどうかの実験を行った.結果,値が言語の種類や文長に依らずに一定となる指標は K と VM の 2 つの指標であった.なおかつこの 2 つの指標の値には自然言語とプログラミング言語の間で有意な差が見られ,言語の複雑さや冗長性をある観点で表した指標となっていると考えることができる.
著者
田中 久美子 犬塚 祐介 武市 正人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.3087-3096, 2002-10-15
参考文献数
12
被引用文献数
10

本稿では,携帯電話のための子音漢字変換による日本語入力方式を議論する.子音漢字変換では,ユーザが子音列を入力し,これを子音漢字変換ソフトウエアが漢字混じりの日本語に直接変換する.従来のかなを入力する方式では1かなあたり複数回キー入力を行う必要があるのに対し,子音入力を用いると,1かなあたり1回だけの入力で済む.一方で,子音漢字変換を行うと,かな漢字変換の7倍にものぼる候補を扱わざるをえない.そこで,本研究においては,隠れマルコフモデルを用いた言語モデルにPPM(Prediction by Partial Match)を融合させた動的な言語モデルを用いてユーザの語彙選択の傾向を学習させることにより,入力効率を追求した.その結果,現行のかな入力方式に対して打鍵数を半減させることができた.ユーザ実験を行った結果でも,現行の方式よりも短時間で入力を行うことができることが分かった.We discuss a Japanese text entry method for mobile phones. Differentfrom the current methods based on kana kanji conversion, our systemasks user only to enter the sequence of consonants that requiressingle stroke per kana character. Our consonant-kanji conversionsystem then converts the sequence directly into the final kanji form.Although such consonant-kanji system should handle seven times morecandidates than kana-kanji conversion system, we found that user mayenter the same text with half number of keystrokes within shortertime. The key to realize such consonant kanji conversion system liesin our dynamic language model based on Hidden Markov Model and Predictionby Partial Match (PPM) method.
著者
田中 久夫 長谷川 正 木村 澄枝 岡本 郁栄 坂井 陽一
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.207-218, 1996-07-31 (Released:2009-08-21)
参考文献数
11
被引用文献数
7 10

新潟砂丘は10列の砂丘列からなり,その形成年代を遺跡をもとに,新砂丘I・新砂丘II・新砂丘IIIに区分できることを新潟古砂丘グループ(1974)は報告した.その後,砂丘地域の開発にともなって,多くの遺跡発掘調査が行われ,それに関連した調査・分析も行われてきた.また,砂丘およびその周辺で発見された遺物・遺跡については,新たな遺跡が発見されるごとに作成される新潟県教育委員会の市町村別遺跡カードおよび遺跡分布図をもとに,遺跡分布図を作成した.それらの結果,大略次の点を明らかにできた.1.新砂丘I-1より縄文時代前期初頭の遺物が,新砂丘IIより縄文時代後期の遺物が出土した.その結果,これらの砂丘形成は,新潟古砂丘グループ(1974)が述べたよりも古い時代であることが明らかになった.2.緒立,六地山の各遺跡の発掘で,沖積面下に埋没していた砂丘が確認された.それらの砂丘は,新砂丘IIに対比されるもので,これによって砂丘列のつながりが確かめられた.3.新砂丘I-4と新砂丘IIの砂丘砂には,自形をした角閃石,シソ輝石が多く含まれており,このことから砂丘砂の供給と沼沢火山の活動との関係が推定できた.
著者
木村 勉 神田 和幸 田中 久弥
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. WIT, 福祉情報工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.61, pp.79-82, 2007-05-17

画像認識型の弱点である情報の爆発を押さえ,手話入力装置として情報の爆発を抑えるモールディングによる手話の動作認識ができる装置の開発を提案する.まず,手話の動作学的解析から始め,手話の音韻表記辞書から動きをパターン化,基本パターンを持つ語彙を選択し,それらの語彙の入力・出力の予備実験を行う.
著者
田中 久夫
出版者
千葉大学教育学部
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.p231-243, 1978-12
著者
藤井 晶子 丸山 広達 柴 珠実 田中 久美子 小岡 亜希子 中村 五月 梶田 賢 江口 依里 友岡 清秀 谷川 武 斉藤 功 川村 良一 髙田 康徳 大澤 春彦 陶山 啓子
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.300-307, 2020-07-25 (Released:2020-09-04)
参考文献数
27
被引用文献数
1

目的:飲酒と認知症に関する海外の研究のメタ分析では,飲酒量が少量の場合には発症リスクが低く,大量の場合には高い結果が示されている.しかし,アルコール代謝や飲酒文化が異なるわが国のエビデンスは限定的である.そこで本研究では,平均飲酒量と認知症前段階の軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment,以下MCIと略)との関連について検討した.方法:2014~2017年に愛媛県東温市の地域住民に実施した疫学研究「東温スタディ」に参加した60~84歳の男性421名,女性700名を本研究の対象とした.質問調査によって飲酒頻度,酒の種類別飲酒量を把握し,1日あたりの平均飲酒量を推定した.またJapanese version of Montreal Cognitive Assessmentを実施し,26点未満をMCIと定義した.男女別に現在飲まない群に対する平均飲酒量について男性3群,女性2群に分け各群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)をロジスティック回帰モデルにて算出した.さらに,ビール,日本酒,焼酎(原液),ワインについては,日本酒1合相当あたりの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を算出した.結果:男性212名(50.4%),女性220名(31.4%)がMCIに判定された.男性では,現在飲まない群に比べて,1日平均2合以上の群のMCIの多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は1.78(0.93~3.40,傾向性p=0.045)であったが,女性では有意な関連は認められなかった(「1合以上」群の多変量調整オッズ比:95%信頼区間=0.96:0.39~2.38,傾向性p=0.92).この関連は,高血圧者において明確に認められた.また酒の種類別の解析では,男性において焼酎(原液)については多変量調整オッズ比(95%信頼区間)が1.57(1.18~2.07)と有意に高かった.結論:男性において平均飲酒量が多いほどMCIのリスクが高い可能性が示された.この関連は高血圧者においてより明確であった.
著者
山中 すみへ 田中 界治 田中 久雄 西村 正雄
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.307-313, 1977 (Released:2010-03-02)
参考文献数
31

歯科診療においてアマルガムは重要な充填材料であるが, アマルガム使用による水銀の環境汚染が新たな問題となってきた。とくに最近, 河川や魚介類の水銀汚染が社会問題になり, 排水基準も5ppb以下に規制されるようになった。そこで, 歯科診療における各ステップの排水や排水口のスラッジ, 周辺の土壌などの水銀濃度を分析して, 歯科診療による水銀の排出, 環境への汚染の実態を調べた。バキューム管で吸引され。汚物水, うがい水, ユニット直下の排水, そして歯科診療所の最終排水と大量の流水に希釈されるに従って排水中水銀濃度が減少しているが, 排水を通じての水銀の放出は決して少なくはないことが明らかとなった。とくに最終排水中水銀濃度は平均値で11.3ppbであり, ほとんどの歯科診療所は現在の排水基準値の5ppbを上まわっていた。また歯科診療所周辺の土壌中にも比較的高い水銀濃度を認め, さらに排水口のスラッジでは10600ppmと非常に高く排水中の水銀を濃縮していることを示した。以上のことから歯科診療から排出された無機水銀は, メチル水銀に変換する危険性が余りないとはいえ, 排水を通じて環境への水銀汚染は, 土壌やスラッジヘの蓄積によりかなり高濃度となっていることが明らかとなったので, 対策の必要性を改めて確認した。