- 著者
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日野 直樹
露口 勝
中川 靖士
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本呼吸器外科学会
- 雑誌
- 日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.5, pp.691-695, 2007-07-15 (Released:2008-11-18)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
2
巨大な胸腔内低悪性限局性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor(Low-grade malignancy):SFT)の経過観察中に低血糖発作を発症し手術で改善した一例を経験したので報告する.症例は82才の女性.2003年2月に右胸腔内に10cm大の充実性腫瘤を認め,針生検にてSFTと診断した.患者の希望にて経過を診ていたが,同年6月に低血糖発作が出現した.血中と尿中のC-peptide(CPR),血中インスリン(IRI)の低下を認めた.副腎皮質機能検査と下垂体機能検査は正常であった.以上より腫瘍による低血糖と考え摘出術を行った.術後第2病日に一度低血糖発作を起こしたが,以後は発生せず内因性インスリンも正常化した.術前血中に高分子insulin-like growth factor(IGF)-IIを認めたが,術後は消失しており,胸腔内SFTが産生した高分子IGF-IIによる低血糖発作と考えられた.術後3年目の現在再発や低血糖発作を認めていない.