著者
松吉 隆仁 井上 重隆 野口 彰子 西山 憲一 江﨑 泰斗 永井 英司 中房 祐司
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.550-556, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
36

症例は腹痛,粘血便が主訴の17歳,女性.直腸に全周性隆起性病変があり,生検で粘液癌と診断した.腸閉塞に対し人工肛門を造設した際,腫瘍の近傍の腹膜に播種結節を1カ所認めたため,術前化学療法の方針とした.CAPOX療法3コース施行後,腫瘍マーカーは著増し,腹腔鏡補助下低位前方切除術を行った.診断はpT4aN2bM1c1 Stage IV,R0,CurBであった.病理診断は印環細胞癌様分化を伴う粘液癌であった.改訂ベセスダガイドラインを満たしMSI-highであったためLynch症候群を疑ったが,生殖細胞系の検査は未施行である.化学療法を継続したが,腹膜播種再発を認めたためpembrolizumabの投与を開始し播種巣は縮小し,初回手術から2年3カ月経過し,縮小を維持している.若年者大腸癌は稀で,困難な早期診断,高い悪性度,少ない治療知見,遺伝性大腸癌の可能性,精神的サポートなどの多くの問題点がある.
著者
大塚 隆生 中川内 章 下西 智徳 古賀 清和 岡崎 幸生 中房 祐司 宮崎 耕治
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.8, pp.1520-1524, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は69歳の男性で, 間歇性腹痛と新鮮血下血を来し, 近医で行った腹部CTで上腸間膜動脈閉塞症と診断され, 当科を紹介された. 心電図上心房細動を認めた. 血液検査で白血球とLDHの上昇, 血液ガス分析でアシドーシスを認め, 腸管壊死が疑われたため開腹手術を行った. 小腸は広範囲にわたり色調が変化し, 辺縁動脈の拍動も減弱していたが, 壊死所見はなかった. そこで, 術中血管造影検査を行ったところ, 上腸間膜動脈に空腸第1枝より末梢レベルでの閉塞を認めたため, 動脈壁を切開し, 血栓除去術を行った. その後, 小腸の色調は速やかに回復し, 辺縁動脈の拍動も良好となった. 造影CTでも上腸間膜動脈の血流は良好であった. 上腸間膜動脈閉塞症による腸管壊死の診断で開腹したが, 可逆的腸管虚血を疑い, 術中血管造影検査が部位診断と治療方針の決定に有用であった1例を経験したので, 文献的考察を含めて報告する.