著者
千葉 知史 中本 達夫 飯嶋 千裕 綿引 奈苗 伊達 久
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.288-296, 2019-10-25 (Released:2019-11-08)
参考文献数
36

超音波ガイド下神経ブロックは,神経とその周辺組織,ブロック針や注入薬液などをリアルタイムに描出できる安全確実な手技として普及しつつある.通常透視下で行われていた仙腸関節ブロックも超音波ガイド下に行われることが多くなってきた.仙腸関節ブロックとは,仙腸関節障害症例に診断的・治療的目的に行われる手技である.仙腸関節ブロックは,仙腸関節内注入と後仙腸靱帯内注入の2種類に大別できるが,それらの方法の成功率や注入時の放散痛の研究,カダバーを用いた仙腸関節知覚枝の解剖の知見などから後仙腸靱帯内注入が確実で効果が高い方法として推奨されている.仙腸関節知覚枝は,posterior sacral network(PSN)という神経叢から分枝するが,PSNはS1,S2,S3の後枝外側枝に由来することが多い.S1,S2,S3後枝外側枝は,同名の後仙骨孔の外側に存在する外側仙骨稜を横切るように走行するため,同部位を穿刺目標とすると効果的なブロックとなる.神経ブロック的手技のなかで比較的浅い位置でのブロックであり周囲に動脈や重要臓器などの組織も存在しないため,腰下肢痛症例の診療に積極的に導入してもよいと思われる.
著者
中本 達夫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.258-264, 2018-03-15 (Released:2018-04-07)

超音波解剖学の発展によって,腰神経叢とそれに由来する大腿神経,閉鎖神経,外側大腿皮神経,およびそれらの終枝のブロックは,より多くのアプローチが可能となった.腰神経叢は,Shamrock viewにより超音波画像上で周囲の解剖を鮮明に観察して実施できる.大腿神経は内転筋管ブロックまたは縫工筋下管アプローチにより,伏在神経とそれ以外の神経の分枝への効果を調節できる.閉鎖神経はその走行に基づいてさまざまなアプローチが報告された.下肢の神経ブロックは,術中鎮痛であれば中枢,術後鎮痛であればより末梢知覚枝を選択的に遮断する方法を選択できるようになってきた.
著者
中本 達夫
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.780-787, 2014 (Released:2014-10-25)
参考文献数
15
被引用文献数
1

人工膝関節手術の施行症例数は,わが国においても年々増加の傾向にある.術後鎮痛法としての末梢神経ブロックの有用性については多くの報告があるが,人工膝関節手術には全置換術と単顆型置換術の違い以外にもアプローチ法によって皮膚や筋膜の切開創の違いがあり,最良なブロックの種類や組み合わせは必ずしも一つではない.さらに,リハビリテーションの実施計画によっても術後鎮痛に求められる条件は異なる.持続大腿神経ブロックは良好な鎮痛の反面,大腿四頭筋の筋力低下が問題となりうる.近年,内転筋管ブロックや局所浸潤鎮痛の有用性も報告されており,施設ごとの手術に適したオーダーメイドの術後鎮痛メニューの構築が重要である.