著者
山田 幸子 谷 喜雄 大辻 一義 中村 一郎
出版者
Japanese Society for Food Science and Technology
雑誌
日本食品工業学会誌 (ISSN:00290394)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.17-24, 1994
被引用文献数
1

(1) 冷凍パイ生地に発生する黒斑を光学および電子顕微鏡で観察したところ,微生物の繁殖によるものではなく,〓の存在部位に黒斑が認められた.このことから,〓中のPolyphenol oxidase が黒斑に関与しているのではないかと考えた.<BR>(2) 〓より得た粗酵素Polyphenol oxidase の活性はpH3.0, 4.0, 6.5で高く,数種の酵素が混在すると思われるが硫安分画による分離は困難であった.<BR>(3) 小麦粉を110℃で加熱してパイ生地をつくると黒斑は認められなかった.また〓を0.01%加えた小麦粉を用いると黒斑の数は著しく増加したが,110℃で加熱した麸を加えると黒斑増加は認められなかった.<BR>(4) 小麦PPOはpH6.5において,用いたすべての還元剤(亜硫酸ナトリウム,グルタチオン,ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム,アスコルビン酸,ジチオスライトール,パルミチルアスコルビン酸)(10mM)によって完全に阻害された.これらの還元剤をパイ生地に0.1%添加することによって,いずれの場合も黒斑形成は完全に抑制された.また食感にもほとんど影響はなかった.<BR>(5) アクリルアミドゲル電気泳動後のゲル上での活性染色により,小麦PPOには少なくとも6種のアイソザイムが存在することを確認した.<BR>(6) 制限量の還元剤存在下での活性染色により,黒斑形成に関与しているPPOアイソザイムは基質がDOPAであると仮定した場合,比移動度O.13のバンドであることが示唆された.<BR>(7) パイ生地の黒斑形成におよぼす他の因子にっいて検討したところ,システイン,にんにく汁(アリルメルカプタン)に阻害効果が認められた.逆にリジンは黒斑形成を促進した.