- 著者
-
中村 昭史
- 出版者
- The Association of Japanese Geographers
- 雑誌
- 地理学評論 (ISSN:13479555)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.11, pp.695-715, 2004-10-01 (Released:2008-12-25)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
-
5
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大都市近郊における,多様な住民から構成される地域社会の特性を明らかにするため,住民が形成する近隣での社会関係を2種類の社会的ネットワークの視点から考察した.事例地域は東京大都市圏縁辺に位置する埼玉県鷲宮町旭町地区とした.聞取り調査およびアンケート調査によって得られた事例から近隣ネットワークとパーソナルネットワークの構造を検討した結果,以下の点が明らかになった.地区内の日常的な活動単位である班組織が,地区外出身者の近隣ネットワークの形成に大きく作用しており,地区出身者同士のグループと分離する傾向が確認された.性別および出身別のパーソナルネットワークを見ると,地区出身者は親類・友人知入を近隣に保有する一方で,地区外出身者は地域外の職場関係や友人知人数が多く,近隣での社会関係の分離傾向を促進していることがわかった.しかしこのような中で,地区外出身の女性が世帯内の役割分担のため近隣での交際数を増加させ,複雑なパーソナルネットワークを形成するにつれ,近隣において異なったグループ同士を結ぶ橋渡しの位置を占める可能性が高い.