著者
中村 晋 川崎 達矢
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.451-460,490-49, 1971

Allergy centre開設以来6年間に来院し, 耳鼻咽喉科との協力の下に診療した鼻アレルギー症患者208例の臨床集計成績を報告し, 若干の検討を加えた.1)患者の住居別分布をみると52.9%が静岡市内から, 残りが静岡市周辺より来院した.2)年令別にみると30才代と20才代が多く, 性別では男女同数であつた.3)われわれは患者の病歴, 鼻腔内局所所見.末梢血並びに鼻汁の好酸球増加, 皮内反応および点鼻誘発試験をもとに5型に分類した.RaA群:誘発試験によりアレルギー性鼻炎と確定せるもの.RaB群:誘発試験を行なつていないがアレルギー性鼻炎が確実なもの.RaC群:アレルギー性鼻炎が推定されるもの.RV群:アレルギー性因子に乏しく血管運動性鼻炎と考えられるもの.R群:むしろ鼻炎と考えるのが適当なもの.4)病歴をみると32.7%に鼻アレルギー症および気管支喘息の遺伝素因が認められた.そして鼻症状は春(とくに3月, 4月)と秋(とくに9月, 10月):朝晩:雨の前, 寒冷とくに寒暖の差の著しい時に多い傾向がみられた.5)くしゃみ, 水様性鼻汁, 鼻閉のごとき鼻アレルギー症の主要症状のほかRaA, B, C群ではアレルギー性結膜炎というべき症状や気管支喘息, あるいはその前段階の症状を伴なう場合ないしはこれらとの移行型とみられる症例がしばしばあり, アレルギー性鼻炎の鑑別診断に際しては他のアレルギー症状が随伴するか否かに注意し, 全身症状との関連を考慮する必要があると考えられた.6)皮内反応陽性率の高い吸入性抗原は家塵, ブタクサ花粉, ヒメガマ花粉, マユ, スギ花粉, 絹等であるが, とくに春来院するものの中にアレルギー学的検索によりスギ花粉症と考えられるものが13例見出された.7)減感作療法を施行した20例(RaAおよびB群)についてその治療成績にも論及した.
著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.378-385, 1996
被引用文献数
9

著者は花粉抗原への感作と発症との関連を調べる目的で大学生における杉花粉症の頻度調査を実施してきた. 今回は1988年以来7年間に得られた成績を綜括報告する. 新入生における特異抗体保有率は1988年には27.4%で, 1989〜1993年には32.0〜38.1%のlevelを維持した. また有病率は1988年には12.0%, 1989〜1993年には15.5〜17.4%のlevelにあった. しかし1994年にはそれぞれ29.3%, 14.7%と低値を示しこれは前年の異常気象による花粉飛散の減少と関連するものと考えられた. 著者はさらに在学中の特異抗体保有率と有病率の推移についても調査を行った. 1990年以前の入学者では4年次のこれらの頻度は明確な上昇がみられた(抗体保有率38.6〜43.0%, 有病率23.1〜24.9%)が, 1991年入学者においては花粉飛散の減少との関連で1994年には有意の低下がみられた.(抗体保有率25.2%, 有病率13.6%) これらの調査結果から花粉症の症状発現は花粉抗原への曝露の多寡と直結することが結論された.