著者
風間 基樹 岡田 直仁 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.722, pp.207-217, 2002-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
28

強震動を受け強非線形化した地盤の地震時挙動を解析するため, 高速ウェーブレット変換を用いた時間-周波数領域の非定常地震応答解析手法を提案した. 提案手法は地震動が入力されてから非定常に変化する地盤のせん断剛性と減衰定数を, その時点までに地盤が受けた累積損失エネルギーと最大ひずみレベルに基づいて規定する方法を示している. この方法の特長は, 地盤の時々刻々の剛性低下が陽な形で計算結果として出力されることであり, 一種の非線形解析となっている. また, 提案手法を用いて神戸ポートアイランドで観測された強震記録を対象とし, 液状化による剛性低下を伴う地盤の強震時挙動解析に対する適用性を検討した.
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining "independence by working" should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.37-50, 2010-07-31

One of the serious social problems is the increasing of number of public assistance recipients. This article would like to suggest that those recipients capable of gaining “independence by working” should be identified and a system established to assist them in achieving this goal. For the purposes of this study, a database containing 502 public assistance recipients in Tagawa, Fukuoka Prefecture was examined. Through a statistical analysis of this database, the following recommendations towards independence from public assistance may be made:1) In the initial stages of public assistance, administrators and caseworkers should offer incentives to work to recipients.2) For the sake of recipients who are single mothers, the number of day-nursery facilities should be increased in order to assist them in job-hunting and/or the procurement of work-related qualification or skills.3) For recipients suffering from some form of addiction (e.g. drugs, gambling, alcohol), the treatment of their addiction should be prioritized
著者
中村 晋一郎 佐藤 裕和 沖 大幹
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.I_1453-I_1458, 2012 (Released:2013-03-26)
参考文献数
10

In this research, we gathered the Historical Maximum Discharge (HMD) of A class rivers in Japan after World War 2nd (1945) and classify these data into the topography-meteorological area. We used Creager curve for analyzing the regional characteristics of HMD. From this analysis, we explained the difference of the flood specific discharge among geographic regions. And we compared the historical maximum specific discharge between as of 1975 and 2009, so we could explain Creager curves in 3 region was updated and the flood specific discharge in most of river converged to Creager curve.
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
秦 吉弥 中村 晋 野津 厚
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:1881820X)
巻号頁・発行日
vol.58A, pp.250-263, 2012 (Released:2013-04-19)

下記の論文は撤回されました.記秦吉弥,中村晋,野津厚:2011年東北地方太平洋沖地震における藤沼ダムでの地震動の評価-海溝型巨大地震へのサイト特性置換手法の適用-,構造工学論文集,Vol. 58A,pp. 250-263,2012.撤回の理由2019年3月15日に大阪大学より公表された研究活動上の特定不正行為に関する調査結果において,本論文に対して第一著者による特定不正行為(ねつ造)が認定されたため,撤回した.
著者
保本 孝利 中 徹 實延 靖 北川 雅巳 中村 晋一郎 岡田 和義 横山 大輔 速水 明香 谷山 貴宏 中嶋 正明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.A3P3145, 2009

【目的】スパズムが生じた筋に対して圧迫によるストレッチ(PS)を加えると,スパズムが緩和することはよく経験するところである.しかし PSを施行する際の有効な施行時間についてはあまり明らかではない.そこで今回,筋スパズム緩和に有効なPS施行時間について,筋硬度,筋組織酸素飽和度(StO<SUB>2</SUB>)などの諸点から比較検討したので報告する.<BR><BR>【方法】対象は立ち仕事の多い健常成人男性6名(29.0±4.2歳)とし,就業後に同一施術者が被検者の腓腹筋中央部に対してPSを腹臥位にて行った.PS時間は10,20,30,60秒とし,各施行は異なる日に行った.各施行の直前,直後,一時間後に,筋硬度,StO<SUB>2</SUB>,組織内ヘモグロビン量(Total Hb)を測定した.筋硬度はASKER社製・DUROMETERを,StO<SUB>2</SUB>およびTotal Hbは近赤外線分光器(オメガウェーブ社製,BOM-L1TR)を用いた.併せて,足関節の背屈のROMを用手計測,筋疲労度(MF)を主観的評価VASにて調べた.統計処理にはフリードマン検定を使用し有意水準5%とした.なお,全ての被験者には本研究の趣旨を説明し,同意を得た上で実施した.<BR><BR>【結果】筋硬度については10,20秒では変化がなく,30秒では,直後で減少(p<0.05)し,一時間後は直前の状態に戻った.60秒の場合は,直後で減少(p<0.01)し,一時間後は直前よりも減少傾向(直前や直後との間に有意差が無い状態)にあった.StO<SUB>2</SUB>は全ての施行時間で直後に増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後は直前の状態に戻った.Total Hbは全ての施行時間で変化は無かった.ROMは直後で増加傾向にあるが有意差は無く,一時間後では直前の状態に戻る傾向にあった.MFは全ての施行時間で直後のみ減少(10,20,60秒:p<0.01,30秒:p<0.05)した.<BR><BR>【考察】筋スパズム緩和に有効なPS施行時間としては,筋の柔軟性を短期的に向上させるには30秒間が必要であること,60秒間では施行直後に筋の柔軟性を持続させる可能性があることが今回の研究により示唆された.また,結果は以下についても示唆している.1-筋の柔軟性の変化は血流動態のみで規定されない.2-下腿三頭筋へのPSは短期的に足関節背屈の可動域を増加させる可能性はあるが,持続効果は無い.3-PSは刺激時間に関係なく施行直後に心的なリラクセーションを与える.
著者
麦島 剛 上野 行良 中村 晋介 本多 潤子
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.85-91, 2006-11-30

軽微な犯罪の早期解決がそれより重大な犯罪を抑止するという考え方を割れ窓理論 (broken windows theory)という。現在では、環境悪化放置の防止が地域の犯罪の抑止となる、 という観点から議論されることも多い。この理論の実践は1990年代半ばから米国において警察主導の取り組みとして始まった。最近は、日本でも地域住民主体による落書き防止などの取り組みとして盛んになっている。本研究は、地域環境悪化の放置および地域に立地する各種施設と、中学生の非行容認度との間にどのような関係があるのかを検討し、非行防止対策への手がかりとすることを目的とした。 福岡県内の中学2年生と矯正施設入所等中学生に対し、質問紙により以下の点を調査した。1)校区の悪化環境の放置に関する認識について、2)校区に立地する各種施設について、3)非行の容認について。その結果、悪化環境が放置されていると考える中学生は非行の容認度が高いことが示唆された。いっぽう少年院等の中学生は、悪化が放置された環境で暮らしていたと考える率が低かった。自らの住む環境の悪化が放置されていると感じるとき、中学生は非行を絶対悪だと考えなくなるが、放置状態に対して無頓着になると、実際に非行を犯す可能性が高まるとも考えられる。また、校区に、ギャンブル場などがあると答えた中学生において非行を許す程度が高かった。さらに、どんな施設であっても、立地する場合に環境が悪化していると認識する率が高かった。 以上の知見を踏まえると、落書きやゴミ放置などの公衆ルール違反を即急に解決することは、中学生が非行を許さないと考えることにつながる可能性がある。犯罪の低減と同様、割れ窓理論にもとづく具体的な取り組みが非行防止の一助となると考えられる。
著者
中村 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.605, pp.217-230, 1998-10-21
参考文献数
20
被引用文献数
4 4

本論では, 地中構造物の各部材の損傷及び構造物の終局状態等の耐震性能の照査を, 保有変形能と呼ぶ構造物の各部材の損傷と関連づけられた層間変形と構造物の地震応答層間変形の比較に基づいて行う耐震設計手法の提案を行った. この手法の大きな特徴は, 構造物の応答変形である層間変形が各部材の損傷モードを関連づけられていることから, その比較が耐力照査も満足するという点である. ここで提案する手法における各評価項目のモデル化は兵庫県南部地震により被災した神戸高速鉄道・大開駅, 高速長田駅の一般駅部および大開駅と新開地駅間の駅間トンネル部の3つの構造物モデルを用いて行った. さらに, それら構造物へ本手法を適用し, 本手法の有用性を明らかにした.
著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.169-181,234, 1970

近代大学あるいは病院にアレルギー疾患の疹療を系統的に行なう目的でアレルギークリニックが設置されるようになった.われわれの国立静岡病院アレルギーセンター開設以来5年間の来院患者総数は1183名で, うち気管支喘息653名, アレルギー性鼻炎126名, 蕁麻疹306名, その他98名であつた.年次別にみると毎年増加の傾向が認められ, 年令別にみると気管支喘息で小児が全体の半数を占めるのが注目される.住所別集計をみると大半は静岡市及びその周辺であるが気管支喘息では隣接県はもちろん, 遠隔の地からもより適切かつ効果的疹療を求めて患者が来院している.著者は本邦各大学の内科, 小児科, 耳鼻咽喉科, 皮膚科教室を対象にアレルギークリニックに関するアンケート調査を行なつた結果回答が得られた183教室中69教室にアレルギークリニックが設置されていることがわかった.独立の診療室を有するものは少く, 大部分は一般外来疹療終了後同一場所で週1〜3日疹療を行なつており, 専任医師が配置されているのは37教室である.アレルギークリニックを有する教室の殆んどはアレルギー関係の研究テーマを掲げており, 診療と研究とが密接な関係を有すると思われる.国立病院及びその他の一般病院に対しても同様の調査を行なつたところ回答を寄せた国立病院71施設中19施設, 一般病院33施設にアレルギークリニックを有し, 大部分のものは大学との技術提携を有することがわかつた.アレルギークリニックはかくて時代の要求に応じ, 地域社会に著しい貢献をしているが, なおアレルギークリニック過疎地帯も少なく, 患者数の増加にも拘わらず全国のallergistの絶対数不足が目立ち, このため診療日も週3日以内に止めざるを得ないところが多く, 診療日には多数の患者の診療に忙殺されているのが現状で, 今後更に充実と発展がのぞまれる.臨床面からまずallergistの養成が急務であり, 医療法上アレルギー科の独立もぜひ実現させねばならない.
著者
中村 晋 広田 すみれ 高田 毅 山口 彰 中村 孝明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:18816614)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.138-146, 2016

The objective of this paper is to establish the method to explain technology for creating the reliability between people and engineer. Therefore, the view with which the risk communication model about formation of the risk perception in social psychology or reliance and the idea about new engineering accounting were united was established. The homepage about the maintenance management of the road structure in Fukushima Prefecture was made into the example, the issues on technical explanation were summarized, the contents were corrected using the method, and the effect was investigated. It is found that a new technical explanation method is useful because intelligibility increased from correction before and by having used the method.
著者
薩如拉 中村 晋平 葭谷 耕三 棚橋 光彦
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.193-200, 2012
被引用文献数
7 1

竹材の利用用途の拡大を目指し,丸竹を外皮及び内皮をつけたまま完全展開し,平板化することを試みた。3-5年生のマダケ(円周240-275mm)を高圧水蒸気で軟化し,横型圧入装置を用いて外周を徐々に絞り込みながら内周220mmのパイプ内に圧入した。得られた圧縮丸竹に軸方向に沿って一か所割れ目をいれ,温水(70-80℃)中で加熱しながら平板状に展開した。予備展開された竹材をステンレス製の治具にはさみ,プレスによって完全に平板に展開した。圧縮時の最適軟化条件は140℃-30分処理であり,圧縮の成功率および平板展開の成功率により,最適圧縮率は14%-19%であった。これは圧縮により試料の外径が未圧縮の試料の内径よりも小さくなることで,展開時に要求される内周の伸びを満たすことができるために完全平板展開を容易に実現できたものと考えられる。平板化された竹材を180℃-4分の高圧水蒸気で形状固定処理を行い,完全平板展開竹材を得ることに成功した。
著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.361-364,414-41, 1971
被引用文献数
1

Pancreatin は散剤として, また合剤として錠剤中にも含まれ, 広く調剤に使用されるごくありふれた消化剤であるが, 著者は最近これによって惹起されたと考えられる職業性アレルギー症に1例を経験し, アレルギー学的検索を試みたのでその成績を報告した.症例は46才の男子, 某病院の薬局長, 1949年以来薬剤師として勤務しているが, 1955年より薬局調剤室で Pancreatin の調剤をすると鼻汁, くしゃみ, 呼吸困錠をきたし, 過去3回喘息発作をみたと訴えて最近われわれのAllergy Centreを訪れた.患者は休暇や出張で仕事から離れると調子が良いといい, 1960年 Festal 難を内服した時に著明な腹痛("腹が煮え返るような")をきたしたという.著明な末梢血好酸球増加はみられなかったが鼻汁中好酸球増加を認めた.Routine に行なう吸入性抗原液による皮内反応はすべて陰性であった.そこで無菌化した Pancreatin 溶液による scratch-patch test, 点鼻試験, 吸入誘発試験, PK反応を試みたところ陽性を呈した.そして pancreatin 液による皮内反応では著明な陽性反応があらわれ, 喘息発作, 結膜充血および蕁麻疹の如き全身症状を続発した.以上の病歴ならびにアレルギー学的検索成績から本症例は pancreatin により惹起された職業性アレルギー症と考えられた.著者は薬剤師や製薬会社の社員の間にも種々の職業性アレルギーが存在する可能性を指摘し, この問題を検討する必要性を強調した.
著者
澤田 純男 古川 愛子 中村 晋 鍬田 泰子 後藤 浩之
出版者
京都大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

固体である地盤を伝播する地震波は重力の作用を無視するが,流体に近い性質を持つと考えられる液状化地盤では重力の作用を無視することができるとは限らない.重力の作用を考慮した数値解析手法によって,液状化地盤を伝播する波をシミュレートしたところ,せん断剛性の低下に対応して表面波が流体中の重力波に似た性質をもつようになること,またスロッシング現象が顕著になることを明らかにした.
著者
川本 耕三 石井 里佳 中越 正子 江野 朋子 中村 晋也 山岡 奈美恵 藤原 千沙
出版者
(財)元興寺文化財研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

出土遺物はその成分が失われ空隙が生じるため強度が低下している。保存処理ではその空隙に薬剤を含浸し、接着剤等の樹脂により接合あるいは補填をする。本研究では、出土金属製品・土器・石材、さらに出土品ではないが様々な環境で劣化した民具(木質材料)の保存処理を想定し、接着剤・充填剤と含浸樹脂・溶剤等の薬剤との適合性を、主として力学的な強度低下を測定することで調査研究した。まず、処理薬剤が補填剤に及ぼす影響を調べるため、エポキシ系樹脂補填剤をシート状に成型し、溶剤等の保存処理によって遺物内に残留する可能性がある薬剤に浸漬した後、その強度を打抜きによる剪断試験によって測定した。その結果、チオール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂は極性の大きい溶剤による強度低下が大きく、アミン系の硬化剤を用いたエポキシ樹脂は強度低下が小さいことがわかった。これは、色や熱特性の変化からも裏付けられたが、赤外吸収曲線には変化がみられなかった。次に、処理薬剤が接着剤に及ぼす影響を調べるため、擬似的に接着した出土遺物を作製し、同様の薬剤に浸漬した後、その接着強さを圧縮剪断接着強さ試験と曲げ接着強さ試験によって測定した。その結果、擬似鉄器ではその錆の厚みのために接着剤の接着面への付着を阻害することが観察された。また、擬似土器は母材強度が小さいために多くの場合で母材の破壊が観察されたことからアクリル樹脂等で母材を強化して後、接着する必要があると考えられた。以上の研究を通じて、文化財の保存修復材料に求められる特性は、「保存修復する文化財本体の強度を大きくさせる働きのあるもの、負の影響を与えないもの、必要がなくなった場合には完全に除去できるもの。」と考えられるが、そのためにわれわれはそれぞれの文化財に適合した接着剤をきめ細かく選択する必要がある。
著者
秋山 一男 三上 理一郎 可部 順三郎 江頭 洋祐 岩田 猛邦 田口 善夫 赤木 克巳 竹山 博泰 羽間 収治 浜野 三吾 河田 兼光 信太 隆夫 三島 健 長谷川 真紀 前田 裕二 永井 一成 工藤 宏一郎 佐野 靖之 荒井 康男 柳川 洋 須藤 守夫 坂東 武志 平賀 洋明 上田 暢男 宮城 征四郎 中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.727-738, 1992
被引用文献数
15

我が国における成人気管支喘息の実態を, 主として患者へのアンケートを中心に調査し, 小児発症群と成人発症群及び成人再発群の3群に分類しその比較を試みた. 1) 成人喘息に占めるそれぞれの頻度は小児発症群11.1%, 成人発症群77.3%, その他11.6% (成人再発群3.7%及び不明) であった. 2) 成人喘息に占める小児発症群は年齢と共に激減し, 一方成人発症群は年齢と共に増加し50歳以後では90%以上を占めた. 3) 小児発症群では男, アトピー型, アレルギー疾患既往・合併症, 軽症例, 夜間外来受診歴, 発作時O_2吸入・人工呼吸歴の頻度が成人発症群に比べて有意に高く, 他方成人発症群では感染型, 薬剤常用者, ステロイド常用者, 重症, アスピリン過敏症の頻度が小児発症群に比べて高かった. 4) 成人再発群は小児発症群と成人発症群との中間に位置する群と考えられた. 5) 以上より発症年齢を基準とする分類法が現時点で臨床上分類が容易かつ曖昧さが少ない点より, 成人にみられる気管支喘息を小児発症喘息・成人発症喘息・成人再発喘息の3群に分類する新しい分類法を提唱した. この分類は今後成人喘息の病因・病態の解明に有用と考える.