著者
中村 晋 山口 道也 本間 誠一 中沢 次夫 小林 敏男 小林 節雄 牧野 荘平 寺嶋 周 船橋 茂 久保 政次 水谷 明 鳥居 新平 上田 雅乃 稲垣 義彰 金井 朗 森 啓太郎 野添 新一 佐々田 健四郎 安江 隆 馬場 実 向山 徳子
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.191-196,200, 1975-03-30 (Released:2017-02-10)

1970年著者の1人中村は, そば屋の調理師にみられた職業性そばアレルギー症の1例をわが国最初で貴重な興味深い症例として報告した.そして前報のごとくアンケートによるそばアレルギー症の全国調査に際し本症の追加9例の存在が確認された.今回協同研究者の協力の下にこれらの症例に関する詳細な再調査を実施したので, その結果を纒めて(先に報告した第1例を含めて)報告し若干の検討を加えた.1)職業性そばアレルギー症をみる職種として, そば屋の調理師と店員, そば製麺業者, そば粉販売業者および特に仕事場と同じ棟に住む家族が挙げられる.2)病歴およびアレルギー学的諸検査成績より, 職業性そばアレルギー症はCoombs and GellのI型(即時型)アレルギーのmodelと考えられる.そして過敏症状は抗原物質が体内に経口的に入る時も経気道的に入る時も発症するという一般のそばアレルギー症と同様の特徴を有する.3)著者らはそば粉取扱業者への指導方針の若干の試案をアレルギー学的見地より提唱した.
著者
梯 滋郎 中村 晋一郎 沖 大幹 沖 一雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.I_1489-I_1494, 2014 (Released:2015-05-18)
参考文献数
10
被引用文献数
4

In Japan, safety degree against flood is said to have increased by river improvement. However, frequently flooded areas still exist. This means that frequently flooded areas has some characteristics which prevent river improvement. Therefore it is important to clarify the distribution and characteristics of frequently flooded areas for thinking about future river improvement plans.In this research, we clarified the distribution of frequently flooded areas in Japan, using flooded area maps. As a result, it is clarified that most frequently flooded areas exist in narrow valley plains, and the reason why such areas are still flooded is difficulty of embankment.
著者
阪井 俊文 中村 晋介
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.21-31, 2018-09-30

本研究の目的は、青年期女性の恋愛観を測定するための尺度を作成することである。これまでにも、同様の試みは数多く行われているが、先行研究の問題点を指摘した上で、それを改善することで現代の青年期女性に適合する尺度項目を選定し、大学生と専門学校生を対象にして質問紙調査を実施し、1341名の回答を得た。因子分析の結果、「恋愛向上志向」「恋愛苦悩志向」「恋愛没入志向」「恋愛享楽志向」「恋愛実利志向」「友愛志向」の6因子が抽出され、統計的にその妥当性も確認された。また、いくつかの因子は専門学校生と大学生で結果が異なっており、これらの恋愛観の個人差に、階層などの社会的要因も影響していることが示唆された。今後は、この尺度を活用することで、心理的要因と社会的要因の双方について、個人の恋愛観に及ぼしている影響が解明されることが期待される。
著者
福島 裕助 中村 晋一郎 藤吉 臨
出版者
CROP SCIENCE SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本作物学会紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.432-436, 2001-09-05 (Released:2008-02-14)
参考文献数
10
被引用文献数
1

スクミリンゴガイ生息田への野菜投入によるイネ苗の被害回避の可能性を探ることを目的として, 水槽内で野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動を明らかにした.水槽内で, イネ苗と数種の野菜を同時に与えると, イネ苗よりもメロン, スイカ, レタス, ナスおよびトマトに対する貝の付着頭数または被摂食量が多かった.また, 付着頭数と野菜の被摂食量との間には正の相関関係が認められた.このことから, スクミリンゴガイは, これらの野菜に対する選好性が高いと判断された.選好性の高かったメロンとナス, 選好性の低かったイネ苗とタマネギを同時に与えて, スクミリンゴガイの摂餌行動を観察すると, 本貝は6時間以内に選好性の高い食餌を認識した.また, 選好性の低い食餌に一次付着した貝は, その後, 選好性の高い食餌へ移動した.さらに, 選好性の高かったメロンやナスへの付着時間はイネ苗よりも明らかに長かった.これらの結果から水田へ選好性の高いメロン, スイカ, レタスやナスを投入することによって, スクミリンゴガイによるイネの被害を回避できる可能性のあることが示唆された.
著者
中村 晋 山口 道也 大石 光雄 葉山 隆
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.23, no.8, pp.548-553,580, 1974-08-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
3

われわれのallergy clinicで診療する機会を得たそばアレルギー症9例について総括検討し, そばアレルギー症の臨床的特徴として次の諸点を指摘した.1) 喘息発作, 蕁麻疹, 胃腸症状, 鼻症状あるいは結膜充血などが組合さって発症するが, これら症状間に一線を画することはできない.2) そばによる過敏症状は, 抗原物質が経口的に体内に侵入する時も経気道的に侵入する時も発症する.3) 種々のアレルギー学的検索成績から, 上記の過敏症状は抗原抗体反応に基づく厳密な意味でのアレルギー機序によるものと考えられ, そばアレルギー症は Coombs and Gell のいわゆるI型アレルギー(即時型アレルギー)の model であるとみられる.4) そばの抗原性はきわめて強く, そばエキスの注射により全身のshock等の重篤な反応を惹起する危険性があるので, そばによる減感作療法は安易に行うべきではない.
著者
吉田 望 篠原 秀明 澤田 純男 中村 晋
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
地震工学論文集 (ISSN:1884846X)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.170, 2005 (Released:2010-11-22)
参考文献数
10
被引用文献数
1

設計用の地震動は多くは工学的基盤で設定されるが, この場合, 表層地盤の存在を考慮せず設定されることが多い。本論では, まず表層を考慮しないと工学的に重要な周波数領域で増幅率の評価を誤ることをケーススタディをにより示す。表層を考慮しないで設計用の地震動を定義することは, 表層から工学的基盤への下降波, 深い基盤からの再反射による上昇波などを無視することを意味するが, これが無視できないからである。さらに, 工学的基盤より上の表層の計算用地震動を工学的基盤で設定する場合の設定法として, 表層で線形の挙動を仮定して工学的基盤の波形を求める方法, 地表で設計用の地震動を設定する方法を示す。ケーススタディによればこれらの方法は弾性時にはほぼ完全に地表の波形を再現でき, また, 非線形挙動時でも既往の方法に比べれば格段に精度よい予測ができる。
著者
中村 晋介
出版者
福岡県立大学
雑誌
福岡県立大学人間社会学部紀要 = Journal of the Faculty of Integrated Human Studies and Social Sciences, Fukuoka Prefectural University (ISSN:13490230)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.19-31, 2011-01-08

現在の日本では、「スピリチュアルなものへのあこがれ」、いわゆるスピリチュアル・ブームが、若い世代の間にも広がっている。ここ1~2年の間に、社会学や心理学の領域で、この要因を考察した論考が多数出版された。 本稿で、著者はこれらの論考を6つのパターンに分類し、それらを仮説としてその妥当性を検討する量的調査(福岡県内の4大学を対象、有効票509)を実施した。具体的には、①自己責任が強調される風潮のに耐えられない個人化した自己が求める「癒し」への希求、②スピリチュアルな言説と既成宗教の言説との連続性への忘却、③土井隆義が言う「キャラ化」した自己の動機付に関連した議論、④「大きな物語」への依存と忌避を並列させようとの思い、⑤望ましい心理的影響のみを求めるプラグマティックな心理主義、⑥TVメディアの培養効果、の妥当性を計量した。 量的分析の結果、これらの仮説のほぼ全てが棄却された。分析を進めると、スピリチュアルなものへの関心が、女性のジェンダー・トラッキングに関係している可能性がむしろ示唆された。今後、ジェンダーの視点でスピリチュアル・ブームを研究することは、宗教社会学のみならず、ジェンダーに関する社会学的研究をも前進させる可能性がある。
著者
中村 晋 内田 大学 高橋 良枝 龍野 一郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.10, pp.805-808, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
11

塩酸バラシクロビルは,アシクロビルのプロドラッグでその副作用として過量投与による腎不全がある.今回,糖尿病腎症2期にて微量アルブミン尿を認める糖尿病で,塩酸バラシクロビルが原因と考えられる急性腎不全を発症した症例を経験した.症例は75歳の男性で,高血圧症と糖尿病で治療中であった.2004年8月に背部の帯状ヘルペスを発症し,塩酸バラシクロビルの内服を開始したところ急性腎不全を発症した.急性腎不全は塩酸バラシクロビルの内服中止と補液にて改善した.本症例では,もともと糖尿病腎症は2期と軽度であったが,塩酸バラシクロビルの常用量で急性腎不全を発症しており,使用する際には腎機能に注意して慎重に行う必要があったと考えられた.
著者
中村 晋 室久 敏三郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.19, no.9, pp.702-717,728-72, 1970
被引用文献数
2

1)そば粉を摂取しあるいは吸入することによつて典型的アレルギー症状(鼻炎, 結膜炎, 喘息, 蕁麻疹, 胃腸症)を呈したと考えられる3例を経験し, アレルギー学的検索を試みたのでその成績を報告した.2)そばアレルギーの症候学的特徴につき文献的考察を試み, 筆者の経験を加味してそばアレルギーの典型的症候像を打ち出した.3)そばによる過敏症状は抗原抗体反応による典型的アレルギー反応と考えられ, 仮性アレルギーとしての意義は少く, また精神身体医学的因子が関与しないことを諸種アレルギー学的検査成績などより指摘した.4)本報告の症例3はそば屋に調理師として就業後9年という感作期間を経て発病した職業性そばアレルギーの貴重な症例であつて, わが国には未だ同様の症例の報告がない.5)そばアレルギー患者にX線透視下でそば添加造影剤を与え, 胃腸通過状況を検したところ, 対照に比して胃の著明な蠕動亢進があり、胃排出時間はむしろ短縮, 回盲部進入時間は著明に延長, 大腸通過は速いという結果が得られた.6)そばアレルギーの合理的かつ効果的治療法はまず抗原の除去ないし回避であり, 可及的に抗原よりの離脱をはからねばならないこと, 症例3のごとく職業上抗原に曝露を免れ難いものでは職場転換を考慮すべきで, これが不可能な時に減感作療法の適応となることを強調した.
著者
中村 晋吾
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.61, no.9, pp.45-54, 2012-09-10 (Released:2017-11-22)

宮澤賢治の「ビヂテリアン大祭」における、カーライルの『サーター・リサータス』から引用される「衣装」観は、他者に対して自分をどのように提示するかという規範意識だけではなく、後半の「菜食主義」の是非をめぐる論争においても、連続性にたいする分節や、「正しいこと」をなそうとする意識の問題として底流している。この作品の「衣装」観は、「菜食信者」の思想態度そのものと密接にからみあっている。
著者
石山 大三 小川 泰正 広瀬 和世 武田 知己 中村 晋作 若狭 幸 オセニェング オラオツェ ステバノビッチ ゾラン
出版者
一般社団法人 資源・素材学会
雑誌
Journal of MMIJ (ISSN:18816118)
巻号頁・発行日
vol.139, no.2_3, pp.10-20, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
15

In the study area of eastern Serbia, which includes the Bor and Maidenpek mining areas of the Republic of Serbia, a research of environmental evaluation of the study area was carried out by means of field survey for environment and satellite image analysis in order to establish and improve methods for assessing the environmental impact of mining areas by satellite image analysis. The results of this study showed that it was possible to efficiently determine the distribution of overburdens and tailings in a wide area based on the distribution of points having jarosite spectra, and that it was possible to distinguish waste rocks such as overburdens and tailings with high environmental impact from those waste rocks with relatively low environmental impact based on the mineral assemblage of the waste rocks estimated from satellite image analysis. In addition, if topographical data before and after mining development are obtained from the satellite image analysis, the volume of the waste rocks can be estimated, and the quantitative estimation of the amount of toxic elements dissolved from the waste rocks could be possible by combining the experimental data on the extraction of toxic elements from the waste rocks. In addition, the predicted hazardous area (Type I), where high concentration of Cu may be leached from the waste rocks revealed by the surface survey, corresponds to the area where waste rocks such as overburdens and tailings is distributed around the mine and the area where waste rocks such as tailing is distributed along the river downstream of the mine as estimated by the satellite image analysis. These results indicate that it is possible to predict the environmental impact in advance of the survey in the mining area, and to predict the environmental impact in the mining area where it is not possible to go directly to the survey and to consider guidelines for countermeasures.
著者
中村 晋平 二村 伸一 前野 和也 葭谷 耕三 棚橋 光彦
出版者
一般社団法人 日本木材学会
雑誌
木材学会誌 (ISSN:00214795)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.178-185, 2011-05-25 (Released:2011-05-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

木材の3次元成形技術は国産針葉樹材の利用拡大および,プラスチック代替資源としての木材利用に大きく寄与できる可能性を持つ技術の一つである。しかし,これまでに原料として用いられて来た半固定材はR方向に圧縮を加えた柾目材のみであり,木目の美しさ等を最大限に生かすことが出来なかった。本研究では,2段階の圧縮工程を経ることにより陥入を生じることなくT方向へ木材を圧縮することを実現し,湿潤条件下において100%程度の伸び率を有する板目材を得ることに成功した。また,まさ目材および板目材の半固定材を成形し,これらを原料として木材単板からのスピーカーコーンの成形を試みた。0.4 mm厚および0.5 mm厚の柾目材を用いた場合80%程度の成形成功率を示し,板目材を用いた場合でも50%程度の成功率を示した。音圧周波数特性の測定の結果,これらが市販ウッドコーンに匹敵する音響特性を有することが示された。
著者
滝澤 恭平 中村 晋一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.1, pp.D1-0108, 2023 (Released:2023-01-23)
参考文献数
38

都市の水辺を再生するためには,地域の主体の継続的な協働の取り組みが必要とされる.東京都杉並区善福寺公園内「みんなの夢水路」事業における水辺再生実現までのプロセスと協働の実態を明らかにすることを研究目的とする.水路実現までのプロセスとして,1)川体験,川しらべを通した長期的な地域主体醸成,2)橋渡しの場の形成を契機とした多主体によるビジョン創出,3)事業化を契機とした計画検討,4)水辺を共同管理する権利の承認を通した運営主体確立の4つ段階の過程を明らかにした.協働の分析枠組みとして「橋渡し」概念による分析を行い,市民側と学校側に橋渡しの場が存在したことで,市民活動としての水辺再生の動きと,小学校の継続的な川学習が連携・協働し,地域の集合的な行為としての水辺再生が実現したことを明らかにした.
著者
中村 晋一郎
出版者
日経BP社
雑誌
日経コンストラクション (ISSN:09153470)
巻号頁・発行日
no.535, pp.68-73, 2012-01-09

記録的な降雨によって大規模な洪水被害が長期化したタイ。首都バンコクは、中心部を囲む堤防が整備されていたにもかかわらず浸水した。なぜ被害は拡大したのか。現地で1カ月に及ぶ調査を続けた東京大学生産技術研究所沖大幹研究室の中村晋一郎特任助教が、調査結果をもとに解説する。
著者
福島 裕助 中村 晋一郎 藤吉 臨
出版者
日本作物學會
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.432-436, 2001 (Released:2011-03-05)

スクミリンゴガイ生息田への野菜投入によるイネ苗の被害回避の可能性を探ることを目的として、水槽内で野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動を明らかにした。水槽内で、イネ苗と数種の野菜を同時に与えると、イネ苗よりもメロン、スイカ、レタス、ナスおよびトマトに対する貝の付着頭数または被摂食量が多かった。また、付着頭数と野菜の被摂食量との間には正の相関関係が認められた。このことから、スクミリンゴガイは、これらの野菜に対する選好性が高いと判断された。選好性の高かったメロンとナス、選好性の低かったイネ苗とタマネギを同時に与えて、スクミリンゴガイの摂餌行動を観察すると、本貝は6時間以内に選好性の高い食餌を認識した。また、選好性の低い食餌に一次付着した貝は、その後、選好性の高い食餌へ移動した。さらに、選好性の高かったメロンやナスへの付着時間はイネ苗よりも明らかに長かった。これらの結果から水田へ選好性の高いメロン、スイカ、レタスやナスを投入することによって、スクミリンゴガイによるイネの被害を回避できる可能性のあることが示唆された。
著者
伊藤 悠一郎 中村 晋一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.74-83, 2021

<p> 水害への対策を検討したり,将来の水害被害を予測するうえで重要となるのが水害被害を記録した長期統計である.日本の水害被害を扱う記録としては1961年より行われている水害統計調査があるが,それ以前の水害の規模や発生地域,発生要因等を把握する長期統計は存在しない.そこで,本研究では,地方気象台等が作成した水害記録を用いて,日本における水害統計調査開始以前の水害データベースを構築した.本データベースは水害統計調査が開始される以前の日本全国の水害被害を記録した最も詳細且つ長期の水害統計である.この水害データベースを分析した結果,これまで記録の無かった1941年から1945年にも1930年代と同等の水害が発生していたこと,水害イベントの発生頻度及び強度は 1950年以降明瞭に増加する傾向が示された.</p>
著者
伊藤 悠一郎 中村 晋一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B1(水工学) (ISSN:2185467X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.1, pp.74-83, 2021 (Released:2021-07-20)
参考文献数
13

水害への対策を検討したり,将来の水害被害を予測するうえで重要となるのが水害被害を記録した長期統計である.日本の水害被害を扱う記録としては1961年より行われている水害統計調査があるが,それ以前の水害の規模や発生地域,発生要因等を把握する長期統計は存在しない.そこで,本研究では,地方気象台等が作成した水害記録を用いて,日本における水害統計調査開始以前の水害データベースを構築した.本データベースは水害統計調査が開始される以前の日本全国の水害被害を記録した最も詳細且つ長期の水害統計である.この水害データベースを分析した結果,これまで記録の無かった1941年から1945年にも1930年代と同等の水害が発生していたこと,水害イベントの発生頻度及び強度は 1950年以降明瞭に増加する傾向が示された.