著者
中村 由香
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.113-122, 2009

本稿の目的は近代家族と親密圏・親密性についてのこれまでのアプローチを,近代感情現象のシンボルである"愛"の側面から整理することにある。親密圏に関する理論研究において,親密圏は近代家族と同一視されてきた。そして,近代家族間での親密性の靱帯となったのは,異性間の"性"的な関係を含意した"愛情(=恋愛)"であった。近代家族研究,ジェンダー研究などの歴史社会学研究においても,"愛"の存在は自明視され,それに対して政治的視点から評価し,変革しようという研究が蓄積されてきた。"愛"は,まさに家族社会学者やフェミニズムからの糾弾を受ける原因となってきたものの,それ自体が家族ひいては親密圏という存在の否定につながるものではない。"愛"は,"家族関係の維持"という点でもある種の安定性を持っていたと同時に,"性"という衝動的な感情を含みこむことから生じる不安定性・衝動性と共存する役割を果たしてきた。本稿では,このような"性"と"愛"の関係から,親密圏を親密たらしめる持続性の構造的内実の一端を明らかにすることで,その否定・肯定のどちらかに終始するのではない親密性概念を抽出する為のアプローチを見出そうとする。研究ノート/Notes
著者
中村 由香里 平方 良輔 外園 幸司 山崎 徹 宮城 友豪
出版者
金原出版
巻号頁・発行日
pp.337-340, 2018-03-10

hemosuccus pancreaticusは,膵管を経由したVater乳頭からの消化管出血で,胆道出血と区別するためにSandblomにより1970年に提唱された1)。原因として慢性膵炎を基礎に形成された膵仮性嚢胞や仮性動脈瘤からの出血が多い。重篤な病態ではあるが,間歇的な出血のため,しばしば上部内視鏡検査で十二指腸乳頭からの出血が認められない。そのような症例に造影CTを施行したところ,脾仮性動脈瘤からの造影剤の血管外漏出が主膵管を経由して十二指腸に注ぐのが描出された,世界初と思われるhemosuccus pancreaticusの症例を経験したので報告する。
著者
佐藤 智子 荻野 亮吾 中村 由香
出版者
東京大学大学院教育学研究科生涯学習基盤経営コース内『生涯学習基盤経営研究』編集委員会
雑誌
生涯学習基盤経営研究 (ISSN:1342193X)
巻号頁・発行日
no.34, pp.71-86, 2009

論文/Thesis本研究の目的は次の2 点である。1つは,これまでの近代社会教育政策に関する先行研究を整理すること,もう1 つは,明治後期から昭和初期の社会教育政策の成立過程とその要因を,政治的アクターの相互関係の中で通史的に描きなおすことである。先行研究では,社会教育政策の成立や社会教育行政機構の整備・拡充を所与の結果として理解する傾向が強かったため,社会教育政策について,誰が,なぜ大正から昭和初期に成立させたのかという過程や要因を十分に明らかにしてこなかった。よって本研究では,それを時々の内閣やその文部大臣をアクターに位置付け,社会教育政策の成立過程を再構成し,成立の要因を明らかにすることを試みた。The purpose of this paper is as follows. One section is designated to organize the preceding studies on modern social education policies in a comprehensive manner. The other section is to rewrite the dynamics from among some political actors and the factors of how modern social education policies came into existence. In previous studies, the tendency was to regard the formation of modern social education policies and the administrative amplification as given results. Therefore, adequate clarification was not made of the factor that modern social education was realized in the Taisho and the early Showa eras. In this paper, we regard the Ministries and Ministers of Education of the time as some of the key actors, and have tried to describe the factors and reorganize the framework for studies on social education policies.