著者
庭野 ますみ 渡辺 はる香 古山 明子 板垣 史則 中村 純人 佐島 毅
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】障がいのある子どもをもつ親の研究はこれまで母親のショック反応,母親のもつ現実のストレスなどネガティブな側面に焦点をあてたものが多い。しかし日々の臨床現場で接する母親の中には家族や周囲からの理解と支援を得ながら子どもをたくましく育てている母親も存在する。ストレスフルな状況を体験してもそこから立ち直りを導く心理的特性をレジリエンスというが,本邦ではダウン症,発達障害の子どもをもつ母親の報告が存在するのみで,我が国の肢体不自由児の約半数を占める脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの報告はほとんどない。そこで,脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスの実態を調査することを目的とした。【方法】対象は当院で理学療法を施行している脳性麻痺の子どもをもつ母親61名で,方法は無記名自記式質問紙法を施行した。調査項目は1.子どもの属性:年齢,性別,出生順位,粗大運動機能分類システム:Gross Motor Function Classification System(以下GMFCS),コミュニケーション能力,Barthel Index(以下BI),障害者手帳の等級 2.母親の属性:年齢,世帯構成,世帯収入,就労状況,告知のこと,育児中「力」になった・あるいは心の支えと感じた出会いやサポートの存在,家族のサポートに対する満足感 3:子育てレジリエンス尺度 4:育児負担感指標 5:精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版とした。レジリエンスに関連する要因を明らかにするために,統計解析として,記述統計の他,従属変数を子育レジリエンス尺度,説明変数を単変量解析にて関連性の見られた変数とした重回帰分析(強制投入法)を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】子どもは3歳から46歳までの男性35名,女性24名でGMFCSがIVとVレベルの子どもが72%,BIが0点であるものが40%,身体障害者手帳1級を所持しているものが68%と重症の子どもが多い実態が明らかになった。母親の平均年齢は48.3±10.7歳(26~75歳)であった。母親の85%が夫婦と子どもの世帯であるが,そのほとんどが育児中に「力」になった出会いやサポートがあったと答えた。レジリエンスは母親の年齢,世帯収入,子どもの年齢,GMFCSとは関連がなかったが,重回帰分析の結果,家族のサポートに対する満足感(β値0.435)育児負担感指標(β値-0.507)精神的健康度日本版GHQ-12項目短縮版(β値0.627)が抽出された(調整済R二乗0.660)。【結論】脳性麻痺の子どもをもつ母親のレジリエンスは,家族のサポートに満足か否かという事と,育児負担感,精神的健康度と関連があった。レジリエンスは育児負担感の低減と精神的健康度の増進を促すことで高められる(尾野,2011)と示唆した先行研究と同様な結果が脳性麻痺の子どもをもつ母親においても認められた。
著者
横関 仁 中島 雅之輔 中村 純人 藤本 輝世子
出版者
社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.337-341, 1997-05-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
8

我々は15年以上フォローアップし,現在18歳以上の脳性麻痺患者264例(男179例,女85例)の周生期危険因子,療育期間の健康状態,原始反射の推移,各種運動機能の出現時期,IQ,てんかんの有無,股関節脱臼・側弯症等の変形の有無,整形外科手術の有無など50項目を調査した.これらに数量化II類による多変量解析を行うことによって,成人期の移動,独歩,経済的自立の可否の予測がどの程度まで可能となるかを分析した.移動能力の獲得に関しては肘立て,寝返り,首すわりの完成時期と側弯発生時期,幼児期の健康の評価により,90%以上の確率で予測可能であった.独歩の獲得に関しては,四つ這い,首すわり完成時期と麻痺領域,幼児期のIQの評価を行うことにより,80%以上の確率で予測可能であった.経済的自立能力の獲得に関しては,歩行開始時期,幼児期のIQ,麻痺領域,肘立て完成時期,首すわり完成時期を評価することにより,80%以上の確率で予測可能であった.