著者
石井 靖子 川端 晶子 中村 道徳
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.107-115, 1998-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
30

熱帯産澱粉4種すなわち食用カンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照として馬鈴薯とトウモロコシの澱粉を選び,2,3,4%の澱粉糊液につき,ずり速度流動化流動,チキソトロピー,降伏値,流動の見かけの活性化エネルギーを測定した. 各澱粉糊液は非ニュートン流動を示した.流動曲線につき,10s-1から300s-1の範囲で直線が得られたのでベキ則を適応し,流動方程式τ=Kγnを求め,粘性定数(K)および流動性指数(n)を求めた. キャッサバとサゴの各濃度の澱粉糊液および4%アロールート澱粉糊液の流動性指数(n)は,20~60℃に比べて10℃ の値が極端に小さく馬鈴薯澱粉糊液に近い性質を示し,食用カンナと2,3%アロールート澱粉糊液は,温度依存性が小さく,トウモロコシ澱粉糊液に近い性質を示した.流動性指数(n)と分子特性の関係は,10℃ で値が小さく20~60℃ で大きくなる馬鈴薯に代表されるタイプのnはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向であり,10~60℃ まで変化が少ないトウモロコシに代表されるnを示すものは,アミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも小さい傾向がみられた.サゴはこの傾向に一致しなかった. チキソトロピー性はキャッサバ,食用カンナ,サゴ,4%アロールート糊液に10~60℃ まで認められ,キャッサバ,サゴが大きく,食用カンナは中位,アロールートは最小であった.10℃ でチキソトロピー性が大きい馬鈴薯とキャッサバはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向で,食用カンナ,アロールート,トウモロコシは,チキソトロピー性は中位から最小であるが,これらはアミロースとアミロペクチンの分子量は両方とも中位から最小の傾向が認められた.サゴはこの傾向と一致しなかった. 降伏応力は4%アロールート澱粉糊液の10,20℃と3,4%トウモロコシ澱粉糊液の10~60℃ に認められた. 流動の見かけの活性化エネルギーは,6種の澱粉の2,3,4%糊液について,約8.5~17kJmol-1の範囲であった.
著者
石井 靖子 中原 久恵 服部 滋 川端 晶子 中村 道徳
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 : Nippon shokuhin kagaku kogaku kaishi = Journal of the Japanese Society for Food Science and Technology (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.32-37, 1995-01-15
参考文献数
13
被引用文献数
1

熱帯産澱粉,すなわち,ショクヨウカンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照としてバレイショとトウモロコシの澱粉を選び,それらより分離したアミロペクチンにつき枝切り酵素であるイソアミラーゼを作用させて,その変化を検討した.すなわち光散乱法により重量平均分子量M<SUB>W</SUB>と分子の広がりを示す慣性半径<I>R</I><SUB>G</SUB>の測定,粘度測定により固有粘度〔η〕を算出し,枝切り過程の変化を測定した.<BR>その結果M<SUB>W</SUB>と<I>R</I><SUB>G</SUB>の関係は,M<SUB>W</SUB>が(4-5)×10<SUP>6</SUP>近辺に減少する過程では,M<SUB>W</SUB>に対して<I>R</I><SUB>G</SUB>がやや大きいもの(キャッサバ,トウモロコシ),小さいもの(サゴ),両者の中間のもの(バレイショ,ショクヨウカンナ,アロールート)が認められた.しかし6種とも近接し同じ様な勾配で減少していることから,6種ともM<SUB>W</SUB>の減少に対する<I>R</I><SUB>G</SUB>の減少の割合は大きな差はみられず,従って同じような分解過程を経ていくものと思われる.<BR>更に分解が進むと,ばらつきが起こり差が見られた.またM<SUB>W</SUB>や「η」の減少速度には,種類により差があり,イソアミラーゼが作用しやすいものと,しにくいものがあるようである.