著者
松永 幸太郎 竹田 靖史 川崎 貞道
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.239-246, 1998-08-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
26
被引用文献数
2

澱粉と小麦タンパク質を混合したミックス粉を用いて,澱粉の種類とフライ特性,食感との関係を調べた.結果は次のようにまとめることができる. 1)衣の水分飛散率と破断強度(y=0.96)や食感のサクサク感(r=0.92),硬さ(r=0.97)とは明らかな正の相関性があり,水分飛散率が高い澱粉ほど食感がよく,サクサク感があり,揚がりが良いことがわかった. 2)天ぷらの衣の揚がりの良さは生地に用いる澱粉の種類によって異なり,トウモロコシが最もよく,馬鈴薯と小麦は中程度で,タピオカ,モチトウモロコシは劣った.3)揚がりの最:も良かったトウモロコシ澱粉では,衣の中で澱粉粒の形状が保たれていること,一方揚がりの悪いモチトウモロコシ,タピオカの澱粉では粒の形状が完全に消失しているこどが観察された.
著者
志村 洋一郎 殿塚 隆史 坂野 好幸
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.393-395, 1998

好熱性放線菌Therrnoactinomyces vulgaris R-47よりクローン化された二つのa-アミラーゼ,TVAIとTVAII,のグルコシルサイクロデキストリン(G1-α-,-β-,-γ-CD)に対する速度論および作用様式の検討を行った.TVAIは,G1-γ-CDに対して,9.0s<SUP>-1</SUP>mM<SUP>-1</SUP>のk<SUB>cat</SUB>/K<SUB>m</SUB>値を示し,Gl-a-,および-β-CDに対するそれよりも100倍以上の値を示した.一方,TVAIIは,3種類のG1-CDに対してほぼ等しいk<SUB>cat</SUB>/K<SUB>m</SUB>値(約0.5s<SUP>-1</SUP>mM<SUP>-1</SUP>)を示した.TVAIとTVAIIの最終G1-CD分解物を,HPLCおよびTLCにおいて確認した.それらは,グルコース,マルトース,パノース,および62-α-グルコシルマルトトリオースと推定された.TVAIとTVAIIのG1-CDに対する作用は,速度論的には異なっているが,その作用様式は類似していた.
著者
井川 佳子
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.517-524, 1996

市販サツマイモ澱粉(わらび餅粉)の性質と粒子径分布,無機質の組成と量,脱脂処理との関係を知る目的で実験を行い,次のような結果を得た. 1)澱粉の石灰水処理および無機質の量と組成は,澱粉糊液の性質や澱粉ゲルの性質に大きな影響を与えなかった. 2)大粒子の多い試料は小粒子の多い試料に比べ,その糊液においてブレークダウンがやや大きく,冷却時の粘度の戻りが小さいこと,また柔らかいゲルを形成することが示された. 3)脱脂により糊液のブレークダウン開始時期が早くなり,冷却時の粘度の戻りが減少すること,また,よりかたさが小さく凝集性の高いゲルを形成することが示された. 以上の結果から,市販サツマイモ澱粉の糊液やゲルの特性は,澱粉粒の崩壊に対する抵抗性の変化と連動しており,この変化には粒子径分布の影響が大きいこと,また脱脂処理の影響も無視できないことを明らかにした.
著者
杉本 温美 山下 安代 鈴木 睦代 森下 正博 不破 英次
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-39, 1998-03-31 (Released:2011-07-01)
参考文献数
11
被引用文献数
1

カボチャ(小菊)を室温あるいは5℃ に2カ月間貯蔵し,その間のカボチャの炭水化物含量の変化ならびに澱粉の特性の変化について検討し,次のような結果を得た. 1) カボチャ中の澱粉含量は,室温ならびに5℃ の貯蔵によって減少したが,逆に可溶性糖は増加した.そのときの澱粉の減り方ならびに可溶性糖の増え方は,5℃ よりも室温の方が大きかった. 2) 電流滴定ならびに酵素-クロマト法によるアミロース含量は,室温,5℃ ともに,貯蔵によって増加することが明らかになった. 3) 貯蔵中のカボチャの澱粉粒は,すでに酵素によりダメージを受けており,酵素による分解性が,貯蔵前のものより大きいことがわかった.
著者
石井 靖子 川端 晶子 中村 道徳
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.107-115, 1998-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
30

熱帯産澱粉4種すなわち食用カンナ,アロールート,キャッサバ,サゴの澱粉と対照として馬鈴薯とトウモロコシの澱粉を選び,2,3,4%の澱粉糊液につき,ずり速度流動化流動,チキソトロピー,降伏値,流動の見かけの活性化エネルギーを測定した. 各澱粉糊液は非ニュートン流動を示した.流動曲線につき,10s-1から300s-1の範囲で直線が得られたのでベキ則を適応し,流動方程式τ=Kγnを求め,粘性定数(K)および流動性指数(n)を求めた. キャッサバとサゴの各濃度の澱粉糊液および4%アロールート澱粉糊液の流動性指数(n)は,20~60℃に比べて10℃ の値が極端に小さく馬鈴薯澱粉糊液に近い性質を示し,食用カンナと2,3%アロールート澱粉糊液は,温度依存性が小さく,トウモロコシ澱粉糊液に近い性質を示した.流動性指数(n)と分子特性の関係は,10℃ で値が小さく20~60℃ で大きくなる馬鈴薯に代表されるタイプのnはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向であり,10~60℃ まで変化が少ないトウモロコシに代表されるnを示すものは,アミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも小さい傾向がみられた.サゴはこの傾向に一致しなかった. チキソトロピー性はキャッサバ,食用カンナ,サゴ,4%アロールート糊液に10~60℃ まで認められ,キャッサバ,サゴが大きく,食用カンナは中位,アロールートは最小であった.10℃ でチキソトロピー性が大きい馬鈴薯とキャッサバはアミロースとアミロペクチンの分子量が両方とも大きい傾向で,食用カンナ,アロールート,トウモロコシは,チキソトロピー性は中位から最小であるが,これらはアミロースとアミロペクチンの分子量は両方とも中位から最小の傾向が認められた.サゴはこの傾向と一致しなかった. 降伏応力は4%アロールート澱粉糊液の10,20℃と3,4%トウモロコシ澱粉糊液の10~60℃ に認められた. 流動の見かけの活性化エネルギーは,6種の澱粉の2,3,4%糊液について,約8.5~17kJmol-1の範囲であった.
著者
大西 正健 呉 性姫 田村 竜多
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.419-424, 1994

Xylose isomerase〔EC5.3.1.5〕はナガセ生化学工業より恵与を受けて精製した.サブユニット構造の組み替えと触媒活性および基質取り込み能との関係に興味を持って実験を計画した. 酵素の触媒活性(比活性)が共存するNaCl濃度に依存して変化することが見いだされた.この現象を実験の結果に矛盾なく説明できる明確な解釈は未だ得られていない.検討を重ねたが,可能性の高い考え方の一つとして,サブユニット構造の組み替えに依るものと推定し,本稿では暫定的に4量体/2量体と呼ぶことにした.両者ともに異性化触媒活性を有しており,比活性(mg蛋白質量当り)は2量体の方が大きい値(M濃度ではほぼ同程度)であった.Trp残基の蛍光変化を指標として,基質ザイロースの取り込み反応を観測した結果,基質-酵素複合体の解離定数は両者ほぼ同じであった.取り込みに協同性は検知されず,結合部位の構造は両者同等とみなされた.活性に必須なMg2+(既知の事実)は基質の結合過程に関わっていると考えられた.
著者
高柳 勉 ウィモンスリ ポンタウィワット 横塚 弘毅
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.121-127, 1995

1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide (EDC)またはp-chloromercuribenzoic acid(PCMB)を用いた化学修飾によりブドウインベルターゼの活性は低下した.基質であるラフィノースを添加することによりEDCまたはPCMBによる不活性化反応の速度は減少した.酵素のK<SUB>m</SUB>値はEDCまたはPCMBによる不活性化によって影響されなかった.EDCによる不活性化反応の間に多くのカルボキシル基が修飾されていることが観察され,この修飾は酵素の活性部位だけでなく酵素の表面でも同時に起こっていると推測された.PCMBにより,酵素を完全に失活させるためには酵素1分子当り一つのスルフヒドリル基が修飾されることが必要であった.EDCとPCMBによるこれらの化学修飾の結果はカルボキシル基とスルフヒドリル基が酵素活性に必須であることを強く示唆した.
著者
鈴木 幸雄 金 永會 内田 絅 高見 正明
出版者
The Japanese Society of Applied Glycoscience
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.273-282, 1996-06-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
49
被引用文献数
17

The enzymatic glycosylation and phosphatidylation of biologically active compounds are described. Aromatic, monoterpene, and indole alcohols (benzyl alcohol and its related alcohols, geraniol, citronellol, f arnesol, geranyl-geraniol, and tryptophol) were glycosylated when these alcohols and cellobiose (or lactose) were incubated with Aspergillus niger R-glucosidase (or A, oryzae f-galactosidase), and all β-glycosylated compounds of these alcohols were odorless. A purified cyclo maltodextrin glucanotransferase (CGTase) from Bacillus stearothermophilus was found to catalyze the transfer reaction of the glucosyl residue from dextrin not only to CH2OH groups of the acceptors such as benzyl alcohol and its related alcohols, riboflavin (B2), pyridoxine (PN), thiamin (B1), and n-butyl alcohols with high efficiency, but also to the OH group at the inositol moiety of kasugamycin, at the C-4 positions of glucose moieties of ginsenosides Rc and. Rg1, and of n-octyl-a (Q) -glucoside at the C-3 position of fructose, and also to the OH group of sec- and tert-butyl alcohols, quercetin, and aromatic hydroxy compounds (vanillin, ethyl vanillin, phenol, pyrocatechol, pyrogallol, gallic acid, protocatechuicacid, sesamol) at a considerable efficiency, resulting all α-glucosides of these compounds except quercetin were isolated in crystalline and powder forms and characterized. B. stearothermophilus CGTase had relatively broad acceptor specificity. α-Glucosylated compounds of aromatic alcohols, vanillin, ethyl vanillin, and B1 were odorless. All glucosylated antioxidants were much more stable than aglycones against the oxidation by peroxidase in the presence of hydrogen peroxide. Phospholipase D from Streptomyces sp. (PLD) was observed to be highly active in transferring he dipalmitoylphosphatidyl (DPP-) residue from 1, 2-dipalmitoyl-3-sn-phosphatidylcholine (DPPC) to the CH2OH group in the acceptors such as vitamins (B1, B2, PN, pantothenic acid, B1 disulfide-related compounds), arbutin, kojic acid, genipin, and dihydroxyacetone in a biphasic system. DPP-arbutin and DPP-kojic acid showed the same inhibitory activity to tyrosinase as arbutin and kojic acid, respectively. DPP-genipin showed 6-52 times stronger cytotoxity than genipin to HeLa, HEL, and MT-4 cells. DPP-genipin was found to react with L-phenylalanine in organic solvents to give a clear blue solution having a similar color to an aqueous solution of the natural blue pigment "gardenia blue." This is the first example for the preparation of hydrophobic pigment from a phosphatidyl derivative of a water soluble compound. Moreover, the PLD was first found to bring about the transfer of DPP-residue from DPPC to aromatic hydroxy group of acceptors such as various phenols, naphthol, and 5-hydroxyindole in a biphasic system of an organic solvent with low water solubility and buffer. Immobilized PLD with Amberlite IRC-50 retained 74% of its initial activity after 10 times-repeated batch reaction for DPPcompound synthesis.
著者
渡辺 裕文
出版者
日本応用糖質科学会
雑誌
応用糖質科学 (ISSN:13403494)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.343-351, 2001-08 (Released:2011-03-05)