著者
中村 麻子 島崎 信夫 田中 梨恵 飯田 秀夫
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.193-202, 2018-09-25 (Released:2019-03-25)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2013年9月にL. pneumophila serogroup 1によるレジオネラ肺炎の院内発生を認めた.調査の結果,パルスフィールド電気泳動にて病室内給湯水と患者から採取した喀痰のレジオネラDNAのバンドパターンが一致したことから感染源が給湯系であると推察した.給湯系の汚染を調査した結果,混合水栓1か所からL. pneumophila SG 1が検出された.除菌対策として熱水消毒後,配管内の湯温低下防止のため湯の持続放流を実施し,さらに不要配管を除去した結果,除菌は成功した.しかし40℃の混合水から再びL. pneumophila SG 1が検出されたことを契機に92か所の水を調査したところ,23か所から同菌が検出され給水系の汚染を認めた.給水系の除菌対策として,末端混合栓での水の遊離残留塩素濃度が0.87 mg/L以上となるよう受水槽に次亜塩素酸ナトリウムを持続的添加に加え,最遠位の混合水栓から毎日6分間および全病室洗面台から毎日1分間水を放流した.これらの対策により遊離残留塩素濃度は平均0.81 mg/Lに上昇(p<0.01)し,同菌の検出が13.6%から0.4%に減少(p<0.01)し有効性を認めた.本研究の結果から,給湯系のレジオネラ属菌汚染を認めた場合,給水系に汚染源がある可能性を考慮して調査が必要であると考える.
著者
中村 麻子 楠見 ひとみ 遠藤 英子
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.6, pp.355-360, 2013 (Released:2014-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

本研究は,助産所における分娩時の血液・体液曝露の実態と個人防護具(PPE)の着用状況,および着用に関する意識と関連要因を明らかにすることを目的とした.   全国の分娩を取り扱う助産所342施設の助産所開設者を対象に,2009年に郵送法による無記名の自記式質問紙調査を行い,139名から有効回答が得られた(回収率42.1%).血液・体液の曝露経験者は125名(90.0%)であった.曝露部位は,顔面がもっとも多く(77.6%),ついで上肢(75.2%),手指(67.2%),大腿部,胸部,頭部の順であった.また最近1年間に素手による分娩介助を経験した助産師は25名(18.0%)であり,このうちの5名は素手による分娩介助を常態としていた.分娩介助時に手袋とガウンを着用する助産師は80名(57.6%)と最も多く,手袋のみが42名(30.2%)であった.52名(40.3%)の助産師はPPEの必要性が理解できないと回答した.分娩介助時に手袋とガウンを併用する群と手袋のみを着用する群を比較したところ,助産師の年齢,助産師経験年数,施設の開業年数と従業員数,および年間分娩取扱い件数は,PPE着用状況とは関連性が認められなかった.   本調査より,助産所における分娩時の血液・体液曝露予防対策は標準予防策としては十分とは言い難い状況であることが明らかになった.