著者
中条 潮
出版者
慶應義塾大学
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.89-109, 2000-08-25

競争が有効に機能するためには,単純に規制撤廃だけを行えばよいわけではなく,競争を阻害する要因を除去するように競争政策を運用していかなければならない。本稿では,そのうちの重要な2つの要因であるエッセンシャル・ファシリティの配分方法と,補助金の配分方法について議論し,前者については混雑空港における発着枠の配分方法のありかたを,後者については不採算路線の補助制度のありかたを例にあげて検討した。まず,スロット配分ルールについては,均等配分ないし抽選制,点数評価制,運賃による競争入札,付け値競争入札に分けて,これら配分方式の優劣を議論した結果,透明性の確保と合理性の点で競争入札方式が望ましいとの結論を得た。また,補助制度についても,補助金に関して競争入札制をとることが,補助の目的を満たしながら,経営効率を維持する方法として望ましいとの結論を得た。
著者
中条 潮 伊藤 規子
出版者
一般財団法人 運輸総合研究所
雑誌
運輸政策研究 (ISSN:13443348)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.25-32, 1998

<p>本稿は英国とオーストラリアの空港民営化およびニュージーランドの管制の公有商業会社化を紹介することによって,航空下部構造の民営化・商業会社化が価格の低下と投資の拡大を含む良好な成果をもたらすと考えられることを示す.また,民営化・商業会社化を日本で実行するためには,内部補助システムを排除し,思い切った規制緩和を実行し,経営の自由度を保証することが必要であることを述べる.</p>
著者
中条 潮
出版者
慶應義塾大学出版会
雑誌
三田商学研究 (ISSN:0544571X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.63-82, 2007-10

商学部創立50周年記念 = Commemorating the fiftieth anniversary of the faculty50周年記念論文オープンスカイ政策が世界の潮流となる中,日本が旧来の保護主義的国際航空政策に固執すれば,消費者利益と日本経済全体にとっての利益を損なうばかりか,本邦航空会社の競争力低下にもつながるおそれがある。政府方針として採択されたアジア・ゲートウェイ構想における国際航空自由化方針は,日本の国際航空政策の一大転換点として評価されるが,不十分な部分もあり,望ましい国際航空政策としては以下の諸改革が求められる。 第1 に,競争条件のイコールフッティングを前提に,二国間の路線への自由参入,以遠権の自由な交換,航空運賃の自由化,国内運航権の外国航空会社への開放,外資規制の撤廃,関西空港,中部空港および地方空港の完全開放を行うべきである。また,権益の交換にあたっては,航空の範囲にとらわれず,広い視点から国益の交換を検討すべきである。 第2 に,首都圏空港の容量制約に対応するため,2010年に完成予定されている羽田と成田の容量拡大工事の前倒しを行うとともに,二次空港の活用策について検討すべきである。また,発着間隔,飛行ルート,管制方式,誘導路と滑走路の改善や見直し等により,現行発着枠および容量拡大工事完成後の予定発着枠の拡大を図るべきである。 第3 に,現行首都圏空港施設の有効活用を図るため,①羽田・成田の国内国際両用化を図る,②発着枠の配分については,硬直的なペリメータ規制ではなく,競争入札方式など価格メカニズムを通じて利用者ニーズを反映させる方式を採用する,③羽田については,公用機枠の一部活用や特定時間帯の国際線への完全開放等を行う,等の施策を実施することにより,2010年以前においても国際線の増加を実現するべきである。 第4 に,航空会社の経営資源を有効活用する観点から,機材,運航乗務員にかかる国際基準等の相互認証,運客一体化条件等の規制を撤廃・緩和すべきである。 第5 に,空港整備特別会計制度を解体し,民営化を促進して空港整備と運営の効率化を図るべきである。