著者
松田 和秀 中江 茂 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.251-259, 1999-05-10
被引用文献数
1

東京都心のビル屋上において1995年3月〜1996年2月の1年間, 大気エアロゾルをサンプリングし化学組成分析を行った。大気エアロゾルはニュクリポアフィルタ上に1週間毎に採取し, 蛍光X線分析装置とイオンクロマトグラフィによる定量分析を施した。蛍光X線分析において, 標準試料の作成とマトリクス効果の補正に注意を払い定量分析を行った。2つの装置の併用により, 季節を問わず, 大気エアロゾル濃度の約40%を分析することができた。季節変化について, NH_4^+, Na^+, Mg^<2+>, SO_4^<2->は暖侯期に増加, NH_4^+, NO_3^-, Cl^-, P, K, Znは寒侯期に増加する傾向を示した。因子分析法を用いて発生源の推定を行ったところ3つの因子(Factor)が抽出された。Factor 1は都市大気中で最も強い因子で, 主に人為起源のKおよびZnから構成されていた。Cl^-は, 高濃度となる寒侯期においてのみFactor 1に系列していた。Factor 2は土壌起源元素, 主にAl, Siから構成されていた。これらの成分の季節変動は, 梅雨期に減少が見られる他は明確ではなかった。Factor 3は最も弱い因子で, 主にNa^+, Mg^<2+>から構成されていた。これらの濃度が増加する夏季には, 海洋からの風が卓越し, 海塩起源のNa^+, Mg^<2+>を増加させていることが示唆された。