著者
藤田 慎一 岡村 和幸 三浦 和彦 高橋 章
出版者
日本エアロゾル学会
雑誌
エアロゾル研究 (ISSN:09122834)
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.349-354, 2010
被引用文献数
2

The scavenging ratio of sea-salt components for the winter monsoon was presented on the coastal region of the Sea of Japan. Concentrations of sodium in air and precipitation were analyzed from four monitoring networks, CRIEPI, NPG, NIES/ADORC, and CRIEPI during the period from 1987 to 2008. On the basis of the monitoring data collected, we analyzed (i) seasonal variation and horizontal distribution of sea-salt concentration in air and precipitation, (ii) statistical properties of scavenging ratio on a regional scale, (iii) relationship between scavenging ratio and precipitation intensity, (iv) wet scavenging coefficient on a local scale, and (v) temporal variation of sodium concentration associated with the winter monsoon.<br>
著者
速水 洋 内田 敬 桜井 達也 藤田 慎一 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.193-200, 2005-09-10
被引用文献数
5

1999年度に, SPMの全国平均の年平均濃度が急減し, 環境基準達成率が大きく改善された。この低濃度の実態を明らかにし, 気象要因を解析した。1999年度のSPMの全国平均濃度は, 月別には4月, 6〜8月, 2月に低かった。このうち7, 8月の濃度低下は関東で著しく, 週単位で低濃度が連続したことが特徴的であった。そこで1999年7, 8月の関東について気象解析を行ったところ, 月間値では他年に比べて強風, 多雨であり, 全月的な濃度低下との関連が示唆された。しかし, 低濃度が連続した期間では低濃度と降水, 風速との関連性は乏しく, むしろ, ほぼ同一風向の風が維持され, 太平洋からの清浄な空気が流入し続けたことが要因であると考えられた。
著者
植松 光夫 河村 公隆 三浦 和彦 長田 和雄 鵜野 伊津志 向井 人史
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

大気・海洋表層の物質循環過程の定量的解析のため、海洋大気中の気体や粒子の分析法開発・観測・モデル計算を行った。陸起源大気粒子の沈着が含有鉄分により十分に植物プランクトンの大増殖を引き起こす可能性を観測から見出した。西部北太平洋の海洋大気粒子中の窒素や炭素の大部分は有機態であり、いずれも海洋起源であることを解明した。また、モデル、衛星データ等により黄砂が地球を一周半以上も輸送されることを発見した。
著者
藤吉 康志 川島 正行 山崎 孝治 塚本 修 岡本 創 杉本 伸夫 三浦 和彦
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2002

当該研究期間、2002年と2004年の2回、北極海上に発生する雲と降水システムの総合的な観測を実施した。まず、北極海に出現する大きな気象擾乱には、背の低いタイプと背の高いタイプがあり、前者は北極海起源、後者は北太平洋起源の低気圧であるとを示した。次に、北極層雲の水平構造を調べ、対流性と層状性の構造の2つの水平パターンが存在することを見出した。この結果は、詳細な数値モデルによるシミュレーションの結果と整合的であった。また、雲レーダーを用いた観測で、雲の鉛直構造を明らかにし、雲頂高度がほぼ-45℃に存在すること、2km以下と5km付近の2高度で雲の出現頻度が高いこと、更に、北極海では雲は多層構造を示していることなどを明らかにすることができた。さらに、雲レーダーとライダーと組み合わせるアルゴリズムによって、雲粒の粒径分布も求めることができた。海洋と大気との乱流フラックスも実測し、放射収支と合わせて、北極海での熱収支を見積もることができた。また、客観解析データとレーダーデータを基に、北極域での水収支とその季節変動も見積もることができた。更に、エアロゾル-海洋-大気-雲の相互作用を新たに見出した。これは、海水温の変化と、海起源の雲核の数濃度や大気境界層内の雲の発達とが良く対応していることを観測事実として示したもので、北極海上における下層雲の形成過程が、温暖化に伴う海水温変化に影響を受けることを示した画期的な成果である。以上の成果は、国内外での学会で発表し、他国の研究者から高い評価を受けた。更に、熱帯・中緯度との観測結果との比較も行い、2012年にESA(Europe Space Agency)とJAXAとで共同で打ち上げ予定の雲観測衛星(EarthCARE)の科学的基礎データとしての重要性を強調した。
著者
松田 和秀 中江 茂 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.251-259, 1999-05-10
被引用文献数
1

東京都心のビル屋上において1995年3月〜1996年2月の1年間, 大気エアロゾルをサンプリングし化学組成分析を行った。大気エアロゾルはニュクリポアフィルタ上に1週間毎に採取し, 蛍光X線分析装置とイオンクロマトグラフィによる定量分析を施した。蛍光X線分析において, 標準試料の作成とマトリクス効果の補正に注意を払い定量分析を行った。2つの装置の併用により, 季節を問わず, 大気エアロゾル濃度の約40%を分析することができた。季節変化について, NH_4^+, Na^+, Mg^<2+>, SO_4^<2->は暖侯期に増加, NH_4^+, NO_3^-, Cl^-, P, K, Znは寒侯期に増加する傾向を示した。因子分析法を用いて発生源の推定を行ったところ3つの因子(Factor)が抽出された。Factor 1は都市大気中で最も強い因子で, 主に人為起源のKおよびZnから構成されていた。Cl^-は, 高濃度となる寒侯期においてのみFactor 1に系列していた。Factor 2は土壌起源元素, 主にAl, Siから構成されていた。これらの成分の季節変動は, 梅雨期に減少が見られる他は明確ではなかった。Factor 3は最も弱い因子で, 主にNa^+, Mg^<2+>から構成されていた。これらの濃度が増加する夏季には, 海洋からの風が卓越し, 海塩起源のNa^+, Mg^<2+>を増加させていることが示唆された。
著者
室崎 将史 藤田 慎一 高橋 章 速水 洋 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.347-354, 2006-11-10
被引用文献数
5

静岡県と山梨県の県境に位置する富士山(標高3776m)を観測塔に見立て,高度の異なる20地点で2005年7月12日から7月20日までの9日間,パッシブサンプラーを用いてオゾン濃度の鉛直分布を測定した。山麓の都市部3地点(標高30m〜460m)と丹沢山頂(標高1540m)での自動計測器による測定データをもとに,オゾン濃度の時間変化についても解析を加えた。パッシブサンプラーによって観測期間に測定されたオゾンの平均濃度は,混合層内で約20ppbv,混合層より上層で約40ppbvであり,高度1500m付近を境にして大きな変化がみられた。濃度分布のパターンは,過去に報告された観測結果などと矛盾するものではなかった。自動計測器の観測結果から,富士山頂から水平距離が20km以内の山麓の都市部ではオゾン濃度の日変化は大きく,地域規模の大気汚染の影響を受けていることがわかった。一方,富士山頂から東に約30km離れた丹沢山頂では,夜間に富士山麓の都市部と同レベルまでオゾン濃度が低下することがあり,高度1500m付近でも気象条件によっては,地域規模の大気汚染の影響を受ける場合があることがわかった。このためほぼ同じ高度である富士山の中腹で観測されたオゾン濃度の大きな変化は,地域規模の大気汚染の影響によるものと推定された。