著者
松田 和秀 青木 正敏 張 尚勲 小南 朋美 福山 力 福崎 紀夫 戸塚 績
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.387-392, 2002-11-10
被引用文献数
6

長野県大芝高原にある平坦なアカマツ林において,2000年の9月18日から11月17日の間,SO_2乾性沈着の観測を実施した。SO_2フラックス測定には,熱収支ボーエン比法を用いた。フラックス測定により求められた沈着速度の信頼性を考察し,更に,インファレンシャル法による沈着速度計算値との比較も試みた。熱収支ボーエン比法によるSO_2の沈着速度を決定する気象要素の測定結果から,日中,特に12:00から14:00の間に最も信頼性のある沈着速度が算出され得ることが分かった。この時間帯に測定された沈着速度の分布に関し,それらのバラツキは大きかったが,0.0から1.0cm/sの区間に最も多く出現していた。観測期間中の12:00から14:00の間に得られた沈着速度のメジアン値は0.9cm/sであり, Erisman and Baldocchi(1994)らがまとめた日中の植物に対する沈着速度のレベルに近い値を示していた。インファレンシャル法により計算した沈着速度との比較を試みた結果,濡れた森林表面に対する沈着速度計算値が,乾いた森林表面あるいは相対湿度85%でしきい値を設けて両森林表面を取り扱った沈着速度計算値に比べ,測定値に近かった。キャノピー上層におけるクチクラ抵抗のパラメタリゼーションを調整する必要性が示唆された。
著者
林 健太郎 長谷川 利拡 小野 圭介 岩崎 亘典 豊田 栄 八島 未和 堅田 元喜 須藤 重人 和穎 朗太 常田 岳志 麓 多門 須藤 重人 南川 和則 和穎 朗太 松田 和秀 片柳 薫子 矢野 翠 中村 浩史
出版者
独立行政法人農業環境技術研究所
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

つくばみらいFACE(開放系大気二酸化炭素増加)実験水田を舞台として、大気沈着および灌漑水に由来する窒素フローの実態を把握し、大気二酸化炭素(CO_2)増加、加温、および水稲品種が一酸化二窒素(N_2O)の生成、窒素無機化、窒素固定、水稲の窒素吸収、および土壌有機物の動態などの窒素関連過程に及ぼす影響の解明を進め、大気-土壌-水稲系の詳細な物質循環モデルを開発し、広域評価モデル・データセットを構築した。
著者
松田 和秀 中江 茂 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.251-259, 1999-05-10
被引用文献数
1

東京都心のビル屋上において1995年3月〜1996年2月の1年間, 大気エアロゾルをサンプリングし化学組成分析を行った。大気エアロゾルはニュクリポアフィルタ上に1週間毎に採取し, 蛍光X線分析装置とイオンクロマトグラフィによる定量分析を施した。蛍光X線分析において, 標準試料の作成とマトリクス効果の補正に注意を払い定量分析を行った。2つの装置の併用により, 季節を問わず, 大気エアロゾル濃度の約40%を分析することができた。季節変化について, NH_4^+, Na^+, Mg^<2+>, SO_4^<2->は暖侯期に増加, NH_4^+, NO_3^-, Cl^-, P, K, Znは寒侯期に増加する傾向を示した。因子分析法を用いて発生源の推定を行ったところ3つの因子(Factor)が抽出された。Factor 1は都市大気中で最も強い因子で, 主に人為起源のKおよびZnから構成されていた。Cl^-は, 高濃度となる寒侯期においてのみFactor 1に系列していた。Factor 2は土壌起源元素, 主にAl, Siから構成されていた。これらの成分の季節変動は, 梅雨期に減少が見られる他は明確ではなかった。Factor 3は最も弱い因子で, 主にNa^+, Mg^<2+>から構成されていた。これらの濃度が増加する夏季には, 海洋からの風が卓越し, 海塩起源のNa^+, Mg^<2+>を増加させていることが示唆された。