著者
中澤 知己 杉田 早苗 土肥 真人
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.962-967, 2020-10-25 (Released:2020-10-25)
参考文献数
13

日本国内では2016年のヘイトスピーチ解消法後も、年間300を超えるヘイトスピーチが行われている。本研究では国内で初めてヘイトスピーチに対して罰則刑を定めた川崎市の条例の成立背景を明らかにすることを目的とする。 分析方法としては、川崎市の革新的な取組の背景を明らかにするために、市議会の議論に注目し、議事録からヘイトスピーチに関する発言、全1313件を抽出し、6つの論点に分類し、分析・考察した。また、条例に対する2万6千を超えるパブリックコメントを整理し、市民の意見を概観し、市議会での議論と比較し考察した。結論として、川崎市には外国人市民の抱える問題に対し、市民、市議会が協働して支援を拡充し、全国で初めての試みを行うなど、都市の中に多文化共生の意識が育っていること、止まらないヘイトスピーチに対して市民の訴えに市議会が応えたことで、全国で初めてのガイドラインや、条例などの対策が講じられたこと。都市の中に多文化共生の共通認識があったからこそ、全国初となる対策や支援を何度も実行できたこと、都市のビジョンを共有することは都市の態度を決め、都市問題に立ち向かう力になるということがわかった。