著者
中田 かおり 堀内 成子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.78-88, 2016 (Released:2016-09-01)
参考文献数
19

目 的 生体インピーダンスによる妊婦の体水分と関連のある妊娠・分娩期の異常(切迫早産,妊娠高血圧症候群(PIH),低出生体重等)を探索し,関連を検討する。対象と方法 妊娠26週から29週の健康な単胎妊婦を対象とした。データ収集は,妊娠26~29週と妊娠34~36週の妊娠中2回と,分娩終了後に実施した。生体インピーダンスの測定には,マルチ周波数体組成計を使用した。妊婦の体水分と関連のある生理学的検査値と妊娠・分娩経過に関するデータは,質問紙と診療録レビューにより収集した。変数間の関連は,パス解析により検討した。結 果 研究協力の承諾を得られた340名の内,332名を分析対象とした。生体インピーダンスとの関連性が示唆された妊娠・分娩期の異常は,「切迫早産およびその疑い(妊娠26~29週の測定後から妊娠34~36週の測定まで)」(p結 論 体水分をあらわす指標と生体インピーダンスおよび,特定の妊娠・分娩期の異常との関連性が示唆された。しかし,異常の予測につながる指標の組み合わせは特定できなかった。今後,妊婦の生活やリスク発見後の対応を考えながら,妊娠期の健康につながる体水分評価指標の組み合わせや基準値を探索する,基礎研究が必要である。
著者
中田 かおり
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.196-204, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
31
被引用文献数
1

目 的 妊婦の循環動態・体水分バランスの変化と妊娠経過・予後との関連について文献検索と吟味を行い,助産実践における妊娠期の水分管理・水分補給の基礎となる知見を得る。対象と方法 医学中央雑誌web版,PubMed,CINAHL,Cochrane libraryと,国内外の産科学テキストおよび検索された論文の文献リストを用いて文献検索を行った。各データベース登録開始年から2009年8月5日現在に出版された,日本語および英語論文で,妊娠期の循環動態の変動あるいは妊婦の体水分バランスと妊娠経過・予後との関連について論じられた83文献を対象とした。対象文献をレビューし,言語,論文の種類,専門ごとに整理した後,研究内容ごとに分類し,得られた知見を,本文献検討の焦点ごとに統合し,検討した。結 果 妊婦の水分補給・補液の効果として,羊水量の増加を報告した研究論文が複数特定された。しかし,妊娠合併症の予防や治療を目的とした妊婦の水分補給・補液に臨床的な意義を認める研究成果は限られていた。妊婦の水分補給の実態を調査した研究は検索できなかったが,妊婦のカフェイン摂取と妊娠経過への影響と自記式調査票によるカフェイン摂取量把握の妥当性に関する調査は特定された。また,妊婦の循環動態と体液量の測定にはさまざまな方法が検討されているが,妊婦管理の一環として臨床実践に適切と思われる,非侵襲的な方法のみを用いた測定方法は,特定できなかった。今回の文献検討では,妊娠期の水分補給に関する保健指導の臨床的な根拠を示すことはできなかった。結 論 妊婦の水分摂取・補液と羊水量増加との関連,妊婦に推奨する摂取水分の種類を吟味する必要性,生体インピーダンス法を用いた非侵襲的な妊婦の体水分バランス管理の可能性が示唆された。今後,妊娠期の水分摂取の実態とその効果に関する調査,妊娠期に推奨される水分の種類・量の特定,妊婦にとって過度の負担とならない簡便な体水分バランスの測定方法・評価指標の開発が必要である。
著者
中田 かおり
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.208-221, 2008
被引用文献数
11

<B>目 的</B><br> 妊娠前から出産後2~3年の期間において,母乳育児継続を可能にする要因とアウトカムとしての母乳育児のセルフ・エフィカシーについて探索することを目的とした。<br><B>対象と方法</B><br> 2~3歳の子どもがいる母親を対象に質問紙調査を行った。測定用具は,母乳育児継続に関する自作の質問紙,日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryおよび一般性セルフ・エフィカシー尺度である。質問紙は1103部郵送し,回収した424名のうち404名を分析対象とした。分析にはSPSS 15.0J for Windows版を用いた(p<.05)。<br><B>結 果</B><br> 母乳育児期間は平均1年4か月(±10か月)で,最頻値1年,最大値4年3か月であった。母乳育児の継続には,出産直後と入院中のケアである次の6つとの関連が認められた。(1)母子同室を24時間までに行う(p=.000),(2)糖水・ミルクの補足をしない(p=.000),(3)母乳分泌を保証された経験がある(p=.000),(4)夜間授乳を出産当日に開始する(p=.002),(5)早期接触を20分以上行う(p=.006),(6)初回授乳を出産後30分までに行う(p=.009)。退院後の状況で関連していた要因は(1)母乳不足感がないこと(p=.000),(2)助産師の援助を受けたこと(p=.000)の2つであった。また,「母乳不足感に対する助産師の援助」,「母乳分泌を保証する母親への関わり」は母乳育児期間を有意に延長していた。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには正の相関があった(r=.392, p<.01)。母乳育児のセルフ・エフィカシーの影響要因として「成功体験」,「言語的説得」,「生理的・情動的状態」との関連が認められた。<br><B>結 論</B><br> 出産直後と入院中のケアは,母乳育児期間を決定づける大きな要因であった。母乳不足感に対する助産師援助,母乳分泌の保証を与えるケアの重要性が示唆された。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには関連が認められた。
著者
中田 かおり
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.208-221, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
30
被引用文献数
5 11

目 的 妊娠前から出産後2~3年の期間において,母乳育児継続を可能にする要因とアウトカムとしての母乳育児のセルフ・エフィカシーについて探索することを目的とした。対象と方法 2~3歳の子どもがいる母親を対象に質問紙調査を行った。測定用具は,母乳育児継続に関する自作の質問紙,日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryおよび一般性セルフ・エフィカシー尺度である。質問紙は1103部郵送し,回収した424名のうち404名を分析対象とした。分析にはSPSS 15.0J for Windows版を用いた(p<.05)。結 果 母乳育児期間は平均1年4か月(±10か月)で,最頻値1年,最大値4年3か月であった。母乳育児の継続には,出産直後と入院中のケアである次の6つとの関連が認められた。(1)母子同室を24時間までに行う(p=.000),(2)糖水・ミルクの補足をしない(p=.000),(3)母乳分泌を保証された経験がある(p=.000),(4)夜間授乳を出産当日に開始する(p=.002),(5)早期接触を20分以上行う(p=.006),(6)初回授乳を出産後30分までに行う(p=.009)。退院後の状況で関連していた要因は(1)母乳不足感がないこと(p=.000),(2)助産師の援助を受けたこと(p=.000)の2つであった。また,「母乳不足感に対する助産師の援助」,「母乳分泌を保証する母親への関わり」は母乳育児期間を有意に延長していた。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには正の相関があった(r=.392, p<.01)。母乳育児のセルフ・エフィカシーの影響要因として「成功体験」,「言語的説得」,「生理的・情動的状態」との関連が認められた。結 論 出産直後と入院中のケアは,母乳育児期間を決定づける大きな要因であった。母乳不足感に対する助産師援助,母乳分泌の保証を与えるケアの重要性が示唆された。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには関連が認められた。
著者
中田 かおり
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.262-271, 2015 (Released:2016-02-24)
参考文献数
23
被引用文献数
2

目 的 「日本語版母乳育児継続の自己効力感尺度(Japanese-Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventory; J-BPEBI)」を開発し,信頼性・妥当性を検討した。対象と方法 原版は母乳育児を推進し女性の母乳育児の価値や信念を測定するために開発された22項目のVASである。本研究ではまず,2008年に開発された(旧)日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryの日本語の修正と5段階リッカートスケールへの変更を行いJ-BPEBIを作成した。その後,2~3歳の子どもの母親を対象に質問紙調査を行った。質問紙は578部配布し286部を回収,241名を分析対象とした。分析にはSPSSVer. 20を使用した。結 果 母乳育児継続期間は平均1年5か月(SD=9か月)であった。因子分析の結果,J-BPEBIは3因子構造となった。第1因子「母乳育児をより長く継続することをマネジメントする自信」,第2因子「社会的サポートや情報をマネジメントしながら母乳育児を継続する自信」,第3因子「様々な環境や状況をマネジメントしながら母乳育児を継続する自信」と命名した。J-BPEBIと一般性自己効力感との相関はなかったが,母乳育児継続期間との相関が認められた(r=.314, p=.000)。自己効力感に影響する「4つの情報源」のうち「成功体験」と「情動的喚起」との関連が認められた。全項目でのクロンバックα係数は.902であり,下位尺度の信頼性係数は.640~.916であった。結 論 J-BPEBIは22項目3因子構造の尺度であり,構成概念妥当性,併存妥当性が確保された。全項目での信頼性は高く,内部一貫性は確保された。J-BPEBIは母乳育児継続と母乳育児の自己効力感に関する概念を測定する尺度であることが示唆された。